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本省に勤務する国家公務員一般職の年間給与(年収)を徹底的に計算しました

以前、国家総合職の年間給与(年収)について計算しましたので、引き続いて、本省(霞が関)に勤務する国家一般職についても計算を行いましたので、その結果をお伝えします。

目次

シミュレーションが可能である理由

国家公務員一般職に限らず、他の国家公務員や多くの地方公務員も、条件が所与であれば、その給与を1円単位で計算することは可能です。例えば国家公務員の給与ならば「一般職の職員の給与に関する法律」と「人事院規則」によって規定されているため、これを時間をかけて読み解きさえすれば、だれにでも1円単位で給与を算出することが可能となるのです。

人事院のモデル給与のうち一般職のものはすべて出先機関のもの

国家一般職の給与は、全職種・全地域・全年齢の平均値が600万円台と人事院により公表されているほか、一応、以下のとおり各年齢時点でのモデル給与が示されています。(以下は、人事院の公表資料から数字を抜粋し、当サイトにて見易いように整理したものです。)

このうち、国家一般職大卒区分に該当すると思われるのは②~⑦ですが、この記事で取り扱う、本省勤務の国家一般職に該当するものはありません。⑦は地方機関と明示されているため分かりやすいですが、実際には、②~⑥についても、本府省手当や地域手当が一切含まれていないことから、地方出先機関を対象にしていることは明らかです。したがって、人事院において、「本省勤務の国家一般職のモデル給与」としては示されていないということになります。ちなみに、以上は超過勤務手当等を計算に含んでいないため、仮に出先機関職員の給与モデルを示したものだとしても、現実とは乖離がある印象を否めません。

今回対象とする本省勤務職員においても、一般的なイメージ(本省=忙しい)からも分かるように、超過勤務手当がゼロ円ということはあり得ません。今回は、超過勤務手当を含め、次の諸条件のもとに計算を行いました。

計算条件

かつを

今回もかなり細かく書いてしまったため、興味がない方は、ここは読み飛ばしていただいても大丈夫です。

計算条件
  • 22歳で国家一般職大卒区分により新卒入庁したものとする。
  • 採用当時から定年まで本府省に勤務したと仮定する。
  • 超過勤務は、毎月、30時間行ったものとする。(人事院に公表されている本府省の平均超過勤務時間数のデータの近似値を採用しました。あくまで給与計算上の話であり、実際には彼らはもっと働いています。)
  • 土日においては超過勤務は行わなかったこととする。(すなわち、すべて*1.25の支給率。)
  • 34歳に第1子が、36歳に第2子がそれぞれ誕生したものとする。
  • 賃貸住宅に居住していることとする。
  • 期末勤勉手当の支給率は年あたり4.4か月とする。
  • 俸給表、人事制度は令和5年4月1日時点のものとする。(同年度中の一般職給与法改正も反映済み。)
  • 採用後、4年目で2級に、9年目で3級に、14年目で4級に、20年目で5級に、25年目で6級にそれぞれ昇任したものとする。(その先の室長級以上になられる方もある程度いらっしゃいますが、今回は割愛します。)
  • 昇給は基本的に標準的な号俸数(4号俸)とする。1年目から2年目にかけても便宜上4号俸昇給としています。
  • 期末勤勉手当の支給率は常に通常のものとする。同様に、成績次第では通常より高い金額が支給される場合もあります。
  • 以下で紹介する年間給与は、1,000円未満の端数を切り捨てたものとする。そのほか、導出過程で100円未満、10円未満の端数を切り捨てている箇所がある。

以上の基準のもとに計算を行いました。

留意点の1つとして、このモデルでは便宜上業績評価及び能力評価で上位を獲得した際の昇給の加算分を一切含んでいないので、22歳で入庁して、好成績を取り続けてきたような場合だと以下のシミュレーションの額よりも更に高くなります。実際には公務員人生において標準的な昇給の号俸数に加算がされることは何度も経験するはずですので、それを加味すると実際の金額はもう少し高くなるはずです。

もう1つの留意点として、今回のモデルでは、便宜上住居手当をずっと計上し続けていますが、結婚等してある程度の年齢になれば持ち家等を購入するのも一般的かと思います。その場合は住居手当は固定額なので、それに相当する額として年間336,000円(28,000円*12)を減じることになります。

最後に、22歳で入庁していると仮定しているのも1つの大きなポイントです。国家公務員の給与形態は、同一年齢で比較したとき、早く入庁した人ほど高い水準となります。逆に、少数例だと思いますが、大学等を飛び級して22歳未満で入庁した場合は、以下の試算よりも実際の給与は高くなり得ます。

さて、実際にはこの記事の冒頭の画像のように1年単位で計算を行っているのですが、以下では、その中から幾つかの年齢をピックアップして、それぞれの時点における年間給与を内訳とともに紹介します。

25歳 5,350,000円

25歳(年齢は年度開始時点でのものです。)、入庁4年目の年間給与は535万円です。この時点で2級(主任級)に昇格しているものとします。内訳は次のとおりです。

内訳等(25歳時点)
  • 給料……月あたり214,400円(一般職給与法における別表第一行政職俸給表における(一)2級5号)
  • 地域手当……月あたり42,880円(給料に0.2を乗じたもの)
  • 住居手当……月あたり28,000円(定額)
  • 本府省業務手当……月あたり8,800円(2級職の場合の金額)
  • 超過勤務手当……月あたり57,450円(30時間分を計上)
  • 給与月額……月あたり351,530円(給料および以上の各手当を足したもの)
  • 期末勤勉手当……1,132,000円(支給月数は4.4か月とする)
かつを

以上の給与月額に12を乗じ、期末勤勉手当の金額を足すと概ね5,350,000円と一致します。若干の差異は、端数を切り捨てている箇所があることによるものです。

30歳 6,439,000円

30歳、入庁9年目時点での年間給与は643万円です。2級(主任級)から3級(係長級)に上がることで、給料月額に加えて本府省手当の金額も1万円近く大きくなる上、期末勤勉手当の役職加算(5%)も付くようになります。その結果として、このタイミングから600万円を超えてきます。

内訳等(30歳時点)
  • 給料……月あたり252,000円(一般職給与法における別表第一行政職俸給表における(一)3級9号)
  • 地域手当……月あたり50,400円(給料に0.2を乗じたもの)
  • 住居手当……月あたり28,000円(定額)
  • 本府省業務手当……月あたり17,500円(3級職の場合の金額)
  • 超過勤務手当……月あたり67,530円(30時間分を計上)
  • 給与月額……月あたり415,430円(給料および以上の各手当を足したもの)
  • 期末勤勉手当……1454,000円(支給月数は4.4か月とする)

35歳 7,650,000円

35歳、入庁14年目時点での年間給与は765万円です。この年度から4級に上がると仮定しています。内訳は次のとおりです。また、このモデルでは34歳で第1子が誕生することとなっていますので、ここからは扶養手当も計算に含まれます。

内訳等(35歳時点)
  • 給料……月あたり292,100円(一般職給与法における別表第一行政職俸給表における(一)4級13号)
  • 地域手当……月あたり60,420円(給料及び扶養手当に0.2を乗じたもの)
  • 住居手当……月あたり28,000円(定額)
  • 本府省業務手当……月あたり22,100円(4級職の場合の金額)
  • 超過勤務手当……月あたり78,280円(30時間分を計上)
  • 扶養手当……月あたり10,000円(子ども1人)
  • 給与月額……月あたり491,300円(給料および以上の各手当を足したもの)
  • 期末勤勉手当……1,754,000円(支給月数は4.4か月とする)

40歳 8,631,000円

40歳、入庁19年目時点での年間給与は861万円です。今回、この時点では4級のままとして計算していますが、かなり悩みどころでした。実際には5級補佐になられている方もいらっしゃるためです。

4級として計算した場合の内訳は以下のとおりです。なお、級は35歳時点と変わっていないのですが、俸給表においてこの辺りは1号俸あたりの伸び幅が大きく設定されているため、このように年間給与額も大きくなっています。

内訳等(40歳時点)
  • 給料……月あたり327,600円(一般職給与法における別表第一行政職俸給表における(一)4級33号)
  • 地域手当……月あたり69,520円(給料に0.2を乗じたもの)
  • 住居手当……月あたり28,000円(定額)
  • 本府省業務手当……月あたり22,100円(4級職の場合の金額)
  • 超過勤務手当……月あたり88,680円(30時間分を計上)
  • 扶養手当……月あたり20,000円(子ども2人)
  • 給与月額……月あたり555,900円(給料および以上の各手当を足したもの)
  • 期末勤勉手当……1,960,000円(支給月数は4.4か月とする)

45歳 9,938,000円

45歳、入庁24年目時点での年間給与は993万円です。41歳(20年目)で5級に昇格していると仮定しています。4級から5級に上がるタイミングでは、給料月額はもちろん、本府省手当の金額も1万5千円以上大きくなっているため、このように年間給与額は跳ね上がっています。この時の内訳は以下のとおりです。

内訳等(45歳時点)
  • 給料……月あたり370,800円(一般職給与法における別表第一行政職俸給表における(一)5級45号)
  • 地域手当……月あたり78,160円(給料に0.2を乗じたもの)
  • 住居手当……月あたり28,000円(定額)
  • 本府省業務手当……月あたり37,400円(5級職の場合の金額)
  • 超過勤務手当……月あたり100,200円(30時間分を計上)
  • 扶養手当……月あたり20,000円(子ども2人)
  • 給与月額……月あたり634,600円(給料および以上の各手当を足したもの)
  • 期末勤勉手当……2,323,000円(支給月数は4.4か月とする)

このように国家公務員は課長補佐に上がるくらいのタイミングで給与が加速度的に大きくなります。(これは国家総合職も同様です。)

50歳 10,788,000円

50歳、入庁29年目時点での年間給与は1,078万円です。この時点で6級に昇格していると仮定しています。6級になるくらいで、1,000万円を超えてきます。仮に住居手当が0円だったとしても1,000万は超えています。また、超過勤務時間が月あたり10時間とかなり少なかったとしても、991万と約1,000万円ほどになります。本省勤務の国家一般職職員の給与は世間にあまり知られていないのではないかと思いますが、50歳時点で1,000万円というのが1つの目安になると思います。

内訳等(50歳時点)
  • 給料……月あたり403,800円(一般職給与法における別表第一行政職俸給表における(一)6級57号)
  • 地域手当……月あたり85,760円(給料に0.2を乗じたもの)
  • 住居手当……月あたり28,000円(定額)
  • 本府省業務手当……月あたり39,200円(6級職の場合の金額)
  • 超過勤務手当……月あたり109,300円(30時間分を計上)
  • 扶養手当……月あたり25,000円(子ども2人、年齢加算分込み)
  • 給与月額……月あたり691,000円(給料および以上の各手当を足したもの)
  • 期末勤勉手当……2,495,000円(支給月数は4.4か月とする)

55歳

55歳、入庁34年目時点でこのまま6級だった場合、年間給与額は1,094万円です。俸給表でいうと6級77号で計算しています。50歳時点と大して変わらないのは、俸給表の6級の上の方は極端に給料月額の伸び幅が小さくなるためです。したがって、6級に留まり続ける限りは、給与に大きな変動はありません。

なお、この辺りの年齢で、一部の方は室長級(7,8級)、課長級(9,10級)になっているケースもあります。その場合、年間給与額は1,100~1,400万円くらいです。

まとめ

  • 国家公務員一般職のうち本省勤務の職員の給与モデルは人事院により公表されていない。
  • 計算すると、平均年齢の40歳時点で800万円代。
  • 50歳頃には課長補佐(6級)になっており、条件にもよるが1,000万円を超えてくる。
かつを

いかがでしょうか。受験生に問われた時に以上のように回答すると、「思ったより高い。」と言われることがあります。

年度にもよりますが、人事院により国家公務員の平均給与が650万くらいと公表されていますが、これは全国のすべての国家公務員の平均を取ったものです。本省勤務の場合、地方の国家公務員一般職と比して昇任も早く、地域手当も最大限計上され、本府省手当の存在もあり、更に超過勤務手当もとなるため(これは忙しさの裏返しではありますが)、このように国家公務員全体の平均給与よりは大分高くなるのです。

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