国家公務員には、国家総合職と国家一般職等の試験種別がありますが、霞が関全体で見ると、数的には国家一般職試験による採用者が多数を占めます。
国家一般職として入庁した場合は、異動や出向の頻度が抑えられる分、所管業務のスペシャリストとして専門性を高めることができる一方で、国家総合職採用者と比すると、昇格・昇任のタイミングの機械を逸し易い傾向があることを否めません。この記事では、中央省庁に入庁した場合の官庁による昇格・昇任のし易さについて調査した結果を紹介します。
調査方法
以前書いた以下の記事と同様に、各官庁が公表している「管理職への任用状況等について」を、対象としたすべての官庁のホームページから抜粋し、1つの表に整理することにより調査を行います。
省庁別国家一般職の出世のし易さに関する調査結果とその考察
結果は次のとおりです。
室長級に占める一般職採用者の割合で降順にソートしています。いかがでしょうか。突出しているのは会計検査院で、室長級の8割、課長級の4割をそれぞれ占めているという驚異的な結果でした。これは、同院では例年国家一般職30名を採用しているのに対して、国家総合職の採用者は5名と数を絞っていることに起因しているのだと考えます。
経済産業省は出世が早い
また、別の記事で最も総合職採用者の昇格が早いと紹介した経済産業省においては、室長級職員に占める割合が国家一般職、国家総合職とも36%と均衡しています。総合職採用者の出世が早いということは管理職ポストの数が充足しているということであり、国家一般職の出世のし易さにも相関がありそうです。
外務省、総務省、警察庁等も出世が早い
そのほか、室長級、課長級ともに国家一般職採用者の割合が多い官庁としては、外務省、総務省及び警察庁等が挙げられそうです。一方、ともに国家一般職採用者の割合が低い官庁としては、環境省、国土交通省及び農林水産省等が該当します。
その他
なお、デジタル庁については一応データが公表されているため掲載しましたが、近年創設された官庁であることから、現在の管理職は全員が非プロパー職員であり、今後その割合が変動する可能性が大きいことを申し添えます。
また、総合職、一般職、高卒者の3区分を合計しても100%に満たない官庁があるのは、外部からの公募等で管理職に任用されている職員がいることに因るのだと推察します。
なお、本記事は国家一般職に焦点を当てたものではありますが、高卒者区分での入庁者について見ると省庁別に大きな違いがあることに気づきます。突出しているのは財務省で、室長級のうち41%は高卒者区分による入庁者であることなどは興味深いデータです。
まとめ
- 本府省のうち、国家一般職で出世し易いのは会計検査院、外務省、経済産業省等である。
これは余談ですが、地方公務員から国家公務員に転職したことがあります。その経験から、国家公務員も、地方公務員のように採用後の各人の意向や能力に応じて昇格や異動のタイミングを左右できる仕組みを採ればいいのにと個人的に感じたことがあります。