このサイトでは、前回、以下のような記事を作成しました。
引き続き、この記事では、国家総合職の官庁訪問の面接官を何度も経験した筆者が、国家総合職の面接においてよく聞かれる質問と、それに対する回答例を紹介していきます。
なお、国家総合職の面接では、最終合格するための人事院面接と、最終合格後に内定を得るための官庁訪問がありますが、それぞれ紹介していきます。
また、公務員試験の面接では、試験種を問わずよく聞かれる質問があります。たとえば、「なぜ民間企業ではなく公務員を目指しているのか?」といったようなものです。この記事では、このような一般的によく聞かれる質問ではなく、あくまで特別区Ⅰ類の面接試験においてよく聞かれる質問を紹介していきます。
国家総合職の人事院面接の面接においてよく聞かれる質問
まずは人事院面接においてよく聞かれる質問です。人事院面接は多数の受験者に対して標準的な評価を行う必要があるため、オーソドックスな質問が多いです。国家総合職の人事院面接に特化した質問といえば、思いつくのは以下の二点くらいです。
なぜ地方公務員ではなく国家公務員を(も)志望しているのか
かなり高い確率で聞かれる質問です。受験生の立場からすれば、必死に公務員試験の勉強してきた以上、内定に漕ぎつけないという事態は避けたいので、国家公務員と地方公務員を併願するというのは半ば当たり前のことかと思います。それでも、面接の場では、合理的に物事を説明しなければなりません。
たとえば厚生労働省志望の場合、「福祉行政に携わりたいから」ということだけでは差別化になり得ません。地方自治体でも介護や生活保護等、福祉行政に携わることができるためです。国家公務員総合職と地方公務員を差別化し得る一つの答えは明確です。国家総合職の採用試験は、人事院の公表する受験案内等によって次のように説明されています。
- (国家総合職採用試験は、)政策の企画及び立案又は調査及び研究に関する事務をその職務とする係員の採用試験
以上のとおり、政策の企画立案を行うのが国家総合職であるということを念頭に置くことが重要です。その上で、なぜ政策の企画立案を行うことに魅力を感じるのかを自分の言葉で説明できるようにしておくことがマストです。
志望する官庁はどのような軸で決めたものか
人事院面接においては、面接カードに志望官庁を書いて提出するなどしているため、当然、面接官は受験者の志望官庁を把握しています。そこで、一つだけ毛色の違う官庁が混じっていたりすると、面接官からこのように問われることがあります。たとえば、「厚生労働省・文部科学省・公正取引委員会」の並びでは、明らかに「公正取引委員会」のみ毛色が違うため、このような場合に気になる面接官もいるようです。実際に私が受験した際もこの手の質問を受けました。
とはいえ、人事院面接は落とすための面接ではありません。面接官も単に気になって質問しているに過ぎないため、ありきたりでも構わないので志望理由を述べられれば十分です。
国家総合職の官庁訪問においてよく聞かれる質問
続いて、国家総合職の官庁訪問においてよく聞かれる質問を紹介します。この官庁訪問は基本的に1対1で行われますが、その内容は変幻自在で、面接官によって全く異なります。したがって対策を立てるのは困難ですが、しばしば以下のような質問が見られます。
全国転勤についてどう考えているか
一部の例外を除いて、国家総合職の場合、基本的には全国転勤がつきまといます。その官庁の出先機関や、地方自治体、独立行政法人等への出向を前提としたキャリアになっているためです。官庁にもよりますが、管理職になるまでに2、3回くらいの出向を経験するというところが多いようです。
したがって、基本的には、各官庁は国家総合職として全国転勤を肯定できる人材を求めています。「色んな経験を積みたいし、現場を見なければ制度を作ることはできないので、地方への出向にもぜひチャレンジしたいと考えています。」というのが模範回答になります。
ただし、人には様々な事情があります。家族の介護、自身の疾病等の事情があって転居することが難しい場合には、ミスマッチを防ぐためにも正直に伝えておくことが望ましいです。出向先は都内や関東圏にもあるはずですので、採用後に官庁側が配慮してくれるということもあり得ます。
海外勤務についてどう考えているか
同様の質問として、海外勤務の意向について問われることもあります。国家総合職として採用された場合、地方への出向は当然のように行われますが、人によっては海外に勤務するということもあり得ます。
いわゆる在外公館への出向について、自身がどう考えているかを説明できるようにしておくべきです。入省時の語学力が低くても、その後に勉強して海外に駐在したという人も多いため、モチベーションがあれば誰にでも機会があります。ただし、必ず経験しなくてはならないというものでもありません。官庁側も、適性や希望を鑑みて海外への出向者を検討しているため、「海外ではなく国内の業務に注力したい」と答えても、明確な理由があれば評価には響かないと考えます。
国家一般職ではなく国家総合職として官庁訪問している理由は何か
これもよく聞かれる質問です。面接官の立場からすれば、官庁訪問は国家総合職ではなく国家一般職でもすることができるため、あえて国家総合職で官庁訪問している理由は何かといったことが質問の主旨です。これに対しては、次のような国家総合職と国家一般職の違いに基づいて答えを準備しておけばOKです。
- 政策の企画立案を行うことが前提とされていること
- 昇格のスピードが早く、管理職になることが前提とされていること
- 国内外への出向の機会が多いこと
併願状況
官庁訪問は、人事院面接と異なり、内定者を決定する最後の機会です。官庁側としては、特に内定枠の少ない国家総合職において、内定を出したのちに辞退されるということだけは避けたいと考えています。
そこで、併願状況についてはセンシティブになっています。特に、国家総合職の官庁訪問は、1クール目に最大で3つの官庁を訪問できるというシステムを採っています。2クール、3クールと進むにつれて、官庁は他の官庁と人材を取り合う構図になるのです。
また、国家総合職の受験者は実力のある人が多いですので、民間の超有名企業(コンサル等が多い)から既に内定を得ているような場合もあります。このような場合も、官庁側が気に病むパターンの一つです。官庁訪問の面接官を何度も経験した筆者の余談ですが、アビームコンサルティング、アクセンチュア、野村総合研究所の内定を持っていたり、選考を受けていたりする人をよく見かける印象です。
官庁側は、受験者の「貴省が第一志望です。」という言葉があれば安心するはずです。
志望官庁はどのような軸で決めたものか
人事院面接と同様ですが、官庁訪問においてもよく聞かれる質問です。官庁訪問の内容は面接官によって大きく異なりますが、理屈志向の面接官に当たった場合、ガン詰めされることもあります。
ただ、物は言いようなので、どんなに説明を果たしても、批判はできるものです。ガン詰めされてもそれ自体は悪いことではありませんし、むしろ官僚は議論を好む人が多いので、苦し紛れでもよいのでボールを打ち返せていれば好印象を得られているということもあります。
組織をマネジメントすることについてどのように考えているか
国家総合職で入った場合は、とにかく早く昇格していきます。早い官庁であれば入庁後17年くらいで室長に上がり、22年くらいで課長級に上がります。人によっては、30年目以降に審議官級等の指定職に任用されます。
また、入庁後4~10年目くらいの間に出先機関や地方自治体に出向して管理職を経験するということもよくあります。
このように、いずれは組織をマネジメントする立場になりますので、そのことについてどのように考えているかを問われます。「どのような上司になりたいか」「課内の意見が衝突している時にはどのように調整するか」について、何でもよいので自身なりの答えを準備しておくことが重要です。
一方で、裏を返すと、プレイヤーとして活躍できる期間は限られているということでもありますので、気に留めておきましょう。
「当省の〇〇事業についてどう思う?」
また、官庁訪問では、よく「無茶ブリ」をされることがあります。たとえば、面接カードに記載したわけでもなく、会話の中に出てきたわけでもない特定の事業について所見を求められるなどのことがあ
り得ます。これは、無茶なことを言われた時の対応を試す質問ですので、当意即妙に100点の回答をできなくて大丈夫です。とにかく、慌てふためいたりしないことが重要です。分からなければ、落ち着いて「勉強不足で申し訳ありません。」と言ってしまうのも手です。実際、職務においても分からないことを分からないということは大切なことです。
「逆に何か聞きたいことはありますか?」
官庁訪問は熱量の戦いです。甲子園のような雰囲気が漂っているとも言われることがあります。面接官が受験生の熱意を測るための一つの手段として、「どれくらい官庁のことを知っているか」「どれくらい準備してきているか」を試すというものがあります。そこで用いられるのが、いわゆる逆質問ということになります。
官庁訪問は待ち時間も多いですので、とにかく大量の逆質問を準備しておくことは必要です。
逆質問については以下の記事にもまとめていますので、よろしければご覧ください。
官庁訪問中のほかの面接官の話で特に印象に残ったものは何か
官庁訪問の面接官は、簡単にどのような話をしたかなどは共有していますが、詳細なことまでは共有できていません。あるいは、引継ぎの媒体があったとしても、官僚は激務なので目を通しきれないということもあります。面接官からすれば、単純に他の面接官がどのような話をしていたかが気になるので、このような質問がされることがあります。
これは応用力を試されるところで、単に「〇〇さんの□□の話が印象に残っている」だけではなくて、それを受けて自分がどのように感じたかまで述べられればベストです。官僚は議論好きなので、肯定的な内容ではなく、むしろ否定的な内容でも大丈夫です。議論の種を提示する姿勢を示すことは重要です。
大学生活等の世間話
以外と多いのは、世間話です。官庁訪問は内容はシビアですが雰囲気はカジュアルなので、世間話で時間が結構経っているということもあります。
また、「東大生の官僚離れ」などと言われている昨今ではありますが、それでも上の世代は東大や京大の出身者は多いです。学生の母数が多いので早慶も多いです。あとは東北大とかも多い印象です。もし受験者がこれらの大学の学生であれば、同じ大学の出身者の面接官に当たる可能性は結構高いですので、そういった時には学生生活等の世間話に及ぶことも多いです。
まとめ
以上です。少しでも参考になれば幸いです。また、公務員の面接試験に関しては、以下の記事でも触れていますので、よろしければお目通しください。