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国家公務員試験においてTOEIC等のスコアはどれくらい有利に働くか【国家総合職】

国家公務員試験のうち、国家総合職試験については、TOEICのスコア等を人事院に提出することで、加点を受けることができるのは有名です。しかし、その加点が、合否にどれくらい有利に働くかは、正しく理解されていないことも多いです。この記事では、国家総合職試験における英語試験の加点措置について、正しい情報をお伝えしていきます。

なお、公務員試験のうちでも、国家一般職や国家専門職においては、今のところこのような英語試験による加点措置は行われていないため、公務員試験対策のためにTOEIC等を受験することの意味は小さいです。英語試験は、あくまで国家総合職において有利に働く場面があるものです。(ちなみに、国に準じて、地方公務員においては英語試験の加点を導入しているところはありますね。)

目次

英語試験の範囲

まずは、対象となる英語試験の範囲です。人事院の公式サイトを見た方が手っ取り早いですが、この記事でも簡単に触れておきます。

国家公務員採用総合職試験において加点を受けられる英語試験
  • TOEIC
  • 英検
  • TOEFL(iBT)
  • IELTS

以上の四つです。また、見落とされがちですが、「試験年度の4月1日から遡って5年前の日以後に受験した英語試験のスコア等が対象」とされています。約5年より前のスコアは提出できませんので、ご注意ください。

かつを

私は大学在学中にTOEICを受験して、スコアは700点程度でしたが、一度社会人を挟んでから国家総合職を受験して期間が空いてしまったことから、スコアの提出はできませんでした。

英語試験の加点点数と誤解

さて、ここも人事院の公式サイトから引用するだけになりますが、英語試験の加点点数は、それぞれ以下のように指定されています。

国家公務員総合職試験における英語試験の加点点数一覧
15点加算25点加算
TOEIC600点以上730点以上
英検準1級以上
TOEFL(iBT)65点以上80点以上
IELTS5.5以上6.5以上

以上のとおり、それぞれの英語試験の点数に応じて、国家公務員試験において「15点」又は「25点」の加点を受けることができることとなっています。

さて、この「15点」及び「25点」の意義こそが、誤解されがちなのです。たとえば、この「15点」は、単純に国家公務員試験の教養試験や専門試験(多肢選択式)の素点と比較してはなりません。すなわち、

英語試験加点措置でいう「15点」というのは、国家公務員試験の教養試験や専門試験(多肢選択式)の素点における「15点(=15問分の正解)」とはイコールではありません。

国家公務員試験は、教養試験や専門試験、面接試験等の各科目を、「標準点」に換算した上で、各受験者の標準点を比較する形で合否を決定します。「標準点」は、受験者の平均点、標準偏差等を基に人事院により算出されます。

英語試験加点措置の「15点」とは、この「標準点」15点分の加算のことを指しているのです。

英語試験加点措置により教養試験又は専門試験の素点15点分の加点があるとなると、一見、極めて大きなアドバンテージを得られるように思えますが、そういったことはあり得ません。実際にはそこまで大きく有利には働かないということです。

もっと大胆な誤りでいうと、配点比率と混同されている場合もあります。すなわち、国家公務員総合職試験の配点比率は「教養試験が2/15、専門試験(多肢選択式)が3/15、専門試験が5/15、政策論文試験が2/15、人物試験が3/15」となっていますが、「英語試験加点措置では、さらにこれに15/15を加算することになる」といった誤りも蔓延っています。暴論のように見えますが、規模の大きいサイトやX等でもこのように誤解されていることがあるため、ご注意ください。

また、さらにもう一つ気を付けなければならないのは、英語試験加点措置を受けられるタイミングです。これも見落とされている方が多いですが、英語試験加点の恩恵を受けられるタイミングは、最終合格者決定時です。すなわち、

そもそも第一次試験(教養試験及び多肢選択専門試験)においてはまったく影響しない

ということに留意しましょう。英語試験の加点措置を受けられる方であっても、筆記試験は基本的に地力で突破しなければならないということです。加点措置が有利に働くのは、筆記試験を突破した後の、面接試験や論文試験の結果を踏まえた最終合格者決定時ということになります。ただ、国家総合職試験は、第一次試験で大きくふるいにかけるというスタイルですので、その後の専門記述試験、論文試験、人物試験は標準偏差が小さく、実質倍率自体も小さいです。やはり、英語試験加点措置は合否を左右するほどの大きなメリットとはなり得ないと考えています。

実際の点数

それでは、実際には、英語試験加点措置はどれくらい有利に働くのかを検証します。

まず、国家公務員試験の合格者は「標準点」により決定されるとお話ししましたが、合格するために必要な「標準点」のボーダーは、区分にもよりますが、400~600点程度に収まっており、多くの区分では500点前後となっています。500点のうちの15点又は25点ということですから、そこまで大きなインパクトは無いということが、この時点でも分かります。

では、具体的な試験の素点に置き換えて、英語試験加点措置にどれくらいの影響があるのかを見ていきます。一例として、直近の国家総合職(法律区分)を引合いに出すと、引用した時点での「標準点」のボーダーは、543点となっています。その年の教養試験素点1点分の標準点が概ね4点ですので、15点の英語試験加点措置を受けられる場合、およそ教養試験素点3.75点分のメリットを受けられることになります。同様に、専門試験素点1点分の標準点が概ね6点ですので、15点の英語試験加点措置は、およそ専門試験素点2.5点分に相当します。ただ、前述のとおり、英語試験加点措置は最終合格時において行われるため、単純に筆記試験において「専門試験素点2.5点分有利になる」ということではありませんので、注意が必要です。

さて、実際に英語試験加点措置が生きてくるのは、一次試験突破後ということになりますので、その後に控える面接試験等に置換した場合を考えることの方が重要です。たとえば、面接試験の場合、過半数の受験者は「C評価」に収束します。標準偏差から逆算すれば分かりますが、大多数の受験者が「C評価」となり、おそらく1~2割程度の受験者がその前後の「B評価」又は「D評価」となります。(「A評価」及び足切り対象の「E評価」は極めて稀です。)同様に国家総合職(法律区分)において面接試験が「C評価」となった場合、この年では標準点換算で95点となります。一方、「D評価」となった場合、標準点換算で60点となります。実に35点の開きがありますので、面接試験一つを取っても、平均的な評価より一つ下の評価を受けただけで英語試験加点措置ではひっくり返せないくらい大きな差が生じることが分かります。これは専門記述試験や論文試験においても同じです。

そもそも、前述のとおり国家公務員試験は第一次試験における倍率が大きいのに対して、最終合格決定時の倍率は低いので、第一次試験突破後は、たとえば面接試験であれば「C評価」というふうに、平均的な結果を残していけば合格に漕ぎつけることが多いです。以上を総括すると、国家公務員試験は、あくまで、「筆記試験(第一次試験)で足切りを回避できる程度まで十分に勉強した上で、専門記述試験・論文試験・面接試験において、平均的な成績を収める」ということが基本的な戦略になります。少なくともブログやXでたまに見かける「英語試験の加点がないと大きく不利になる」といった言説はまったくの誤りです。あえて端的にまとめるのであれば、

「英語試験の加点は、最終合格時において有利に働く場合もあるが、実質的には合否を左右するほどの大きな恩恵は得られない。」

と言えると考えています。

かつを

私も英語試験の加点措置は受けていませんが、問題なく合格できました。同期入庁者の中にも、英語試験の加点は受けていないという人は多かったです。

国家総合職として英語スキルは役に立つのか(余談)

最後に、これは余談になりますが、国家総合職として採用された場合に、実際に英語スキルが役に立つかどうかといったことをお話しします。もちろん外務省に採用された場合には必須スキルになりますが、それ以外の省庁ではどうでしょうか。「英語スキルがあれば役に立つことも多いが、英語が出来る人を所要のポストに就けるような人事配置が行われるため、英語が喋られなくとも困りはしない。」というのが私の考えです。

かつを

私も受験英語は得意だった一方で実際のリスニング・スピーキングはまったくできませんが、国家公務員としてのキャリアで困ることは一切ありませんでした。

英語スキルが十分にある場合には、海外留学、在外公館への出向、そうでなくとも国際的な会議に出席するなど活躍の場が広がるのは事実です。ちなみに、これも私見ですが、外務省以外では、環境省、経済産業省は英語スキルが光る場面が多い印象です。一方、厚生労働省、農林水産省、総務省は比較的ドメスティックな印象があります。

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