MENU

公務員試験における「行政法」の勉強方法について【出題数・テキスト・捨て分野・コツ】

公務員試験における行政法は、専門試験科目の中で重要な科目のうちの1つです。この記事では、行政法の勉強方法等について解説します。

目次

行政法の出題される試験種と、出題数

行政法は、行政系の公務員試験の場合、経済系に特化した試験種を除いてほぼすべての試験種で出題されることとなります。行政法が出題される試験種と、その出題数を列挙すると以下のとおりとなります。

主な試験種における憲法の出題数
  • 国家総合職院卒行政区分法律系 …… 必須12問
  • 国家総合職政治国際区分 …… 問題選択式、5問
  • 国家総合職法律区分 …… 必須12問
  • 国家一般職行政区分(全地域) …… 選択式5問
  • 国税専門官A …… 「憲法・行政法」として選択式6問
  • 財務専門官 …… 「憲法・行政法」として必須14問
  • 特別区Ⅰ類 …… 選択式最大5問
  • 都庁Ⅰ類 …… 選択式かつ記述式
  • 地方上級 …… 5~8問、場合により選択式
  • 裁判所事務官 …… 出題なし

記述式試験等を含めると他にも多数ありますが、ここでは割愛させていただきます。

行政法の難易度、コストパフォーマンス

  • 行政法の学習難易度 …… ★★★☆☆
  • 行政法のコストパフォーマンス …… ★★★★☆

公務員試験における行政法は、専門科目の中で標準的な難易度です。論点の数は憲法よりも少し多い程度でありながら、出題数は憲法と同じ程度か、試験種によってはそれ以上ありますので、学習のコストパフォーマンスは著しく高いです。

したがって、基本的に行政法を捨てるという選択はおすすめしません。行政法を捨てるとしたら裁判所事務官(一般職及び総合職)等の志望度が著しく高い場合ですが、その場合であっても、他の試験種を併願するのであれば対策は行うべきです。くわえて、合格・入庁後、実務に携わる中でも、行政手続法、情報公開法、行政不服審査法、法律による行政の原理等は学んでおくと役に立つ場面が来る可能性が高いです。

行政法を勉強する順番

専門試験の中で憲法に次ぐコスパの高さですので、一般的な、国家公務員や地方公務員をバランスよく併願するタイプの受験の仕方であれば、早い段階で手を付けておくべきです。憲法の次に行政法に着手することをおすすめします。憲法と行政法とは関連する部分もあるので、先に難易度の低い憲法を攻略したのちに行政法に挑戦することで、シナジー効果も期待できます。

行政法の勉強方法(使用するテキスト)

行政法の勉強方法は至ってシンプルです。1冊の過去問集を、試験当日までに5週程度こなしてください。他の試験科目と比べると難易度はそこまで高くないので、憲法と同様に、導入用のテキストを挟まずにいきなり過去問集で学習することがおすすめです。

使用する過去問集は、「過去問解きまくり」または「スーパー過去問ゼミ」のいずれかがおすすめです。いずれも受験生にとっての王道です。私は、受験生時代には「過去問解きまくり」によって学習しました。その理由は、分量がスー過去よりもおそらく少し多いことと、論点ごとのレジュメページが良く整理されているためです。ただ、いずれを使用しても間違いなく合格水準以上に達することが出来ますので、「この1冊」と決めたら、信じて何度も周回することが大事です。

過去問集の使い方

過去問集は、1~5週目以降の各週において、以下のように使っていくのがおすすめです。

  • 1週目は、レジュメページを読み、マーカーで装飾して理解を深めていく。その後、過去問の解説が書かれたページにおいて、コアとなる部分をマーカーで装飾し、次週以降にすぐ確認できるようにしておく。掲載されている過去問は同じ内容の選択肢・解説が繰り返し登場することがあるため、既に一度マーカーを付したことと同じことが書いてある解説には、当該解説文全体に黒鉛筆で斜線等を付しておく。こうすることで、次週以降にマーカーで装飾した部分だけを復習することで、必要十分の知識が確認できるようになる。
  • 2週目は、レジュメページを読んで復習し、理解を深める。また、過去問ページにおいて、1週目でチェックしそびれていたところにマーカーで装飾したり、同じことが書かれているにもかかわらずマーカーで装飾していたところのマーカーを削除して黒鉛筆で斜線を引くなどの作業を行う。最終的に、すべての解説文にマーカー(確認するべき箇所)か斜線(確認不要の箇所)のいずれかを付すことになる。
  • 3~5週目以降は、以上でマーカーを付した部分を確認していき、とにかく暗記していく。

特に重要なのは1~2週目で行う作業です。「解きまくり」では、例えば重要な選択肢の解説だと、同じ内容が1冊において5度くらい登場することもあります。毎週同じ内容を5度も確認するのは能率が悪いため、5度のうち4度分はスキップできるようにするために、黒鉛筆等で大きな斜線等を付しておくのです。この作業を行う際、1冊のテキストを、何度も前後にページをめくりながら進めていくことになります。一度付けたマーカーを削除できるようにするために、「フリクション」がおすすめです。

1~2週目でこの作業をこなしておくことで、公務員試験の憲法を攻略するために必要な知識が最低限で復習できるオリジナルの過去問集、もといテキストが完成します。使用するのは過去問集ではありますが、3~5週目においては、いちいち問題を見て、演習形式で自分で回答を考える必要はありません。あくまで暗記作業と割り切って、自身がマーカーを付したレジュメページの該当部分や、過去問の解説ページの該当部分をチェックしていくだけで十分です。

過去問集には重複が結構多く、この作業の結果マーカーが一切つかないページも結構多くなるはずです。そうすると、5週目頃には、朝から夜まで集中すれば、1日で1冊の過去問集を回すことが出来るようになるはずです。1~2週目の作業には膨大な時間を要しますが、3~5週目には効率の高い記憶の定着が期待できるようになるので、確実に跳ね返ってきます。

コツとして、「一方だけを洗い出して記憶しておく」

行政法の問題の選択肢の作られ方は、「〇〇は違法である(又は、違法でない)」といったものや、「△△は□□に該当する(又は、該当しない)」といったものがほとんどです。二律背反の結論が、どちらに転んだかということを問われることが多いのです。例えば、行政行為の分野においては、違法と判決されたか否かを問われる出題が多いです。その中で、一つの勉強法として、「過去問集に掲載されている違法と判決された判例をピックアップして記憶しておく」ことをおすすめします。その上で、自身が記憶していない事象について「〇〇は違法である。」とする選択肢が出題されれば、背理的に、当該選択肢は誤りであると判断できるという寸法です。

殴り書きで恐縮ですが、行政行為系の論点に関して、違法、無効、認められないものと判決された判例は以下のとおりです。(これ以外にもあるため、際には、過去問集を進める中で、違法判決が下された判例を見つけたら、ご自身で過去問集の余白ページ等にピックアップしていくことをおすすめします

行政法関連において、違法、無効等と判決された判例
  • 旧監獄法の、幼年者との接見を原則不許可とする規定
  • 風俗店の阻止を目的として保育所を設置すること
  • 私人が従えないことを明確に表明したのになお契約や建築確認を留保すること
  • 拒否処分に付す理由が、単に法律の条文のみであること
  • 法律の委任を超えた旧農地法施行令の規定
  • 法律が直接規制の対象としていない事由で輸入業を規制すること
  • 児童扶養手当の対象から婚姻外懐胎児童を除外すること
  • 社会福祉法人による児童養育監護行為
  • 水俣病患者に対する措置の長期に渡る不作為
  • 空港の供用目的の関連において危害が生じるおそれがある場合
  • 高地落石事件
  • 故障車放置事件

それ以外にも、「処分性」、「原告適格」、「訴えの利益」についても、出題される選択肢のほとんどは、「処分性(等)があるか否か」といった二律背反的なものです。したがって、「処分性(等)がある」と判断された判例のみを確実に押さえておけば、背理的に、そうでない判例についても回答ができるということになります。例えば処分性の論点について、「処分性がある」と判断された判例には以下のものがあります。

処分性があると判決された判例
  • 土地区画整理事業計画
  • 土地区画整理組合設立の認可
  • 阿倍野第二種市街地再開発事業計画
  • 病院開設中止勧告
  • 保育所廃止条例の制定
  • 輸入禁制品に該当する旨の税関長の通知
  • 輸入届出に対する検疫所長の食品衛生法違反に係る通知
  • 建築基準法42条2項のいわゆるみなし道路の一括指定
  • 労災就学援護費の支給に係る決定
  • 供託金の取戻請求の却下
  • 過誤納金の返還に係る通知請求

こちらも、実際には過去問集を推し進める中で、ご自身で余白のページ等に整理していくことをおすすめします。

かつを

より厳密に言えば、実際の出題では「違法・無効」といった帰結だけでなく、それに至るまでの論理を問われることもあるため、単に以上を基にその結果を丸暗記するのではなく、その内容についても理解することも必要です。

行政法の捨て分野

私は、とにかくコストパフォーマンスの高い学習を推奨しています。基本的に教養試験科目より専門試験科目の方が学習1単位あたりの限界的な得点向上率は高いですが、1つの科目についてある程度学習を進めてくると、飽和して限界得点向上率は逓減してきます。したがって、専門試験においては、出題頻度が少ないなどでコストパフォーマンスの低い分野は捨てることとして、他の科目の勉強へ移行するとことをおすすめしています。行政法については、ほぼ全ての論点が頻出ですが、次のように出題される試験種が限られているものもありますので、試験種や確保できる勉強時間に応じて、捨てることも視野に入れるべきです。

  • 地方自治制度……国家一般職、特別区、国家専門職等では例年出題されていない。したがって地方上級の試験の直前に詰め込めばよい。
  • 公物関係……地方上級、国家一般職、特別区等では例年出題されていない。ただし、財務専門官を受験する場合には勉強が必須。
  • 警察関係……テキストに掲載されている場合があるが行政系公務員では例年出題されていない。

「行政法」という法規があるわけでない

ちなみに、最後になりますが、1つ誤解されがちなこととして、「行政法」という個別の法規があるわけではありません。行政法とは、行政に関する個別の法律等に係る論点等の総称です。公務員試験の専門試験科目の1つとしての行政法においては、例えば、行政事件訴訟法、情報公開法、行政手続法、国家賠償法、あるいは憲法と各法規の関係といったものから出題がされています。

まとめ

  • 行政法は多数の試験種において出題されており、必ず勉強するべき。
  • 「解きまくり」または「スー過去」を5週程度回す。
  • 「一方だけを洗い出して記憶しておく」と学習がスムーズ。
  • 一部捨てるべき分野もある。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次