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公務員試験における「ミクロ経済学」の勉強方法について【出題数・テキスト・捨て分野・コツ】

公務員試験におけるミクロ経済学は、専門試験科目の中で重要な科目のうちの1つです。この記事では、ミクロ経済学の勉強方法等について解説します。

目次

ミクロ経済学の出題される試験種と、出題数

ミクロ経済学は、行政系の公務員試験の場合、法律系に特化した試験種を除いてほぼすべての試験種で出題されることとなります。ミクロ経済学(下表では「ミクロ」という。)が出題される試験種と、その出題数を列挙すると以下のとおりとなります。

主な試験種における憲法の出題数
  • 国家総合職院卒行政区分経済系 …… ミクロ・マクロから必須16題
  • 国家総合職経済区分 …… ミクロ・マクロから必須16題
  • 国家総合職法律区分 …… ミクロ・マクロから問題選択式、3問
  • 国家一般職行政区分(全地域) …… 科目選択式でミクロから5問
  • 国税専門官A …… ミクロ・マクロから選択式6問
  • 財務専門官 …… 「経済学・財政学・経済事情」として必須14問
  • 裁判所事務官 …… 科目選択式でミクロ・マクロから10問
  • 特別区Ⅰ類 …… 選択式でミクロから最大5問
  • 都庁Ⅰ類 …… 選択式かつ記述式
  • 地方上級 …… ミクロ・マクロから8~12題、場合により選択式

受験要項では「経済学」「経済理論」等の名称で、ミクロ・マクロからまとめて出題される試験種が多いです。「経済学16題」等と書かれているケースがありますが、実際にはミクロ・マクロから半分ずつ出題されています。また、記述式試験等を含めると他にも多数ありますが、ここでは割愛させていただきます。

ミクロ経済学の難易度、コストパフォーマンス

  • ミクロ経済学の学習難易度 …… ★★★★★
  • ミクロ経済学のコストパフォーマンス …… ★★★☆☆

公務員試験におけるミクロ経済学は、専門科目の中でやや難しい部類に属します。苦手とする方は多いです。少数派だと思いますが、理系出身の方などで数学が得意な人にとっては「覚えることが少ない分勉強し易い」ということもあるようです。法学系科目やその他の学系科目では「暗記するもの」という性格が強いのに対して、経済学系科目は「理解するもの」という性格が強いものです。ある程度の水準に達するまで時間を要しますが、一度定着すれば記憶から欠落しづらいとも思います。成長曲線が階段型となっているイメージです。

なお、ここでいう難易度とは、あくまで公務員試験の試験科目としての難易度のことであり、アカデミックな学術科目としてものではありません。もちろん、経済学部に所属している方などであれば試験勉強は有利に進められますが、公務員試験の試験科目としての科目と学術的な科目とはまったく別物であると認識しておくべきです。

国家公務員や地方公務員をバランスよく併願するというタイプの受験者の場合、基本的には重点的に対策すべき科目です。ただし、過去問集を1,2週しても歯牙にもかからないといったような状況の場合、やむなく捨てることも視野に入れても差し支えないように思います。

ミクロ経済学を勉強する順番

専門試験の中で重要な科目の1つですので、一般的な、国家公務員や地方公務員をバランスよく併願するタイプの受験の仕方であれば、早い段階で手を付けておくべきです。最も優先すべき科目は憲法、行政法ですが、それに次ぐ順番で対策するのがベターです。

なお、ミクロ経済学とマクロ経済学のどちらを先に対策するかといったことは好みにもよります。科目間の内容に連続性があるわけではありませんので、どちらを先に始めても問題はありません。また、マクロ経済学は単純な四則演算で解く問題や暗記系の科目の問題も多いのに対して、ミクロ経済学はより「理解するもの」という性格が強いです。たとえば、ミクロ経済学は(偏)微分さえできればなんとかなるといっても過言ではないほど、計算問題は微分が関係するものが多いです。どうしても数学、特に関数が苦手という方であれば、マクロ経済学の方が取っつきやすいはずですので、マクロ経済学を先にするという選択もアリです。

ミクロ経済学の勉強方法(使用するテキスト)

ミクロ経済学の勉強に使用するテキストですが、過去問集が必須になることにくわえて、その前段階として、独学の場合は導入書を用いるべきです。いきなり過去問集の問題に着手すると、あまりの意味不明ぶりに気が滅入ってしまうと思います……。

かつを

基本的に、「1.導入書」と、「2.過去問集」の2段階で勉強してください。

1.導入書

導入書としてのおすすめは、「速習! ミクロ経済学」です。私自身もこのテキストを使用していました。経済学の初学者向けに、多数の図表を用いた解説が分かりやすいです。最たる特長は、動画と連携していることです。このテキストを見ながら、著者が解説する動画を閲覧するという勉強法が可能となっています。

ちなみに、改訂年度が古めですが、公務員試験における経済学系科目は法律系科目と異なり、出題範囲や内容が改正されることが稀であるため、問題ありません。過去問集に着手するに先立ち、本書を1週して全容を浅く理解しておくことで、経済学の過去問集の高いハードルを下げてしまおうという作戦です。

導入書の勉強の段階において、完全に理解しようとはせず、全く理解が及ばないと感じたところは飛ばしてしまっても差し支えありません。最終的に、過去問が解けるようになれば問題ないためです。そもそも目的は試験に合格すること、そのために試験で点数を取ることにあるので、それ以上に深い理解は必要ありません。

2.過去問集

過去問集については、公務員試験には王道のシリーズがいくつかありますが、経済学系科目に限っては、圧倒的に「スーパー過去問ゼミ(いわゆる「スー過去」)」がおすすめです。各分野の過去問の前に設置されているレジュメページや、問題の解説中のグラフや公式等が視覚的に見易く、テキストとしての完成度が高いです。

また、他のシリーズの過去問集よりもボリュームはやや薄目かもしれませんが、経済学はそもそも出題範囲は広くないかわりに理解するまでに時間を要するという科目なので、必要十分の情報を掲載した過去問集を作成しようとするとこれぐらいの分厚さになるはずです。情報が必要十分であり、効率よく対策が進められる過去問集としてもおすすめできます。

具体的な勉強方法としては、次のとおり、1冊の過去問集を、試験当日までに5週程度こなしてください。

  • 過去問集1~2週目
    1~2週目においては、計算問題については実際にご自身でノートを使って解いてみてください。導入書を経たとしても、ほとんどの問題はまず自力で解くのは困難だと思いますが、それで大丈夫です。自力で解けなければ、解説を少し見ながら、ノートに自分なりの回答を完成させます。また、併せて、過去問集の公式等の重要な情報が書いてある箇所にマーカーを引いていきます。
  • 過去問集3~5週目以降
    3~5週目以降においては、余裕があれば演習形式で一問ずつ解いていくのもアリでしょうが、公務員試験においてそこまでの時間的余裕は無いはずなので、1~2週目において自身でノートに記した解法や、過去問集にマーカーを引いたりした箇所を確認・記憶していく作業を行います。

ミクロ経済学は、体系的な科目です。つまり、「まず消費者の行動について学習した後、生産者の行動について学習し、それぞれの行動によって市場が最適化される(=パレート最適である)ことを確認していく。」というような、「流れ」が存在する科目です。ある程度過去問集を解いてくるとこの流れが何となく理解できるようになるはずなのですが、それに至る前の段階である過去問集の1~2週目はとにかく辛い作業になると思います。しかし、諦めなければ、どこかで点と点が紐になっていく感覚が得られるはずです。

「こういうものなんだ」と割り切って習得していく

公務員試験の経済学系の科目を進めるコツとして、あくまで試験科目として割り切ってすすめていくことです。正直、いくら講師の解説を聞いたり、テキストと睨めっこしても理解の及ばない、あるいは納得できないところが出てくると思います。

かつを

例えば、ミクロ経済学の中でおそらく最も重要な公式の1つに、「完全競争市場では、利潤最大化を図る企業は、「P(価格)=MC(限界費用)」となるように生産量を決定する。」というものがあります。しかし、実際のビジネスはそんなに単純化できるものではありませんし、わざわざモデル化して計算によって生産量を決定している会社なんて無いと思います。が、それでも、割り切って納得して、勉強を進めていきましょう。

そもそも、人間の合理性は限界があるのだから、誰しもが合理的な決定をしているわけがありません。計量経済学という学問領域が存在しているのは、経済学の理論がどれだけ現実に適合しているかを実証することに起因する部分もあります。もともと絶対的な正しさを前提とする学問ではないですし、学説の対立もあります。公務員試験受験生としては、学術的なことは捨ておいて、公務員試験という名のゲームとして割り切って、あくまで試験対策に注力すべきです。過去問集の問題がある程度解けるようになることが最初で最後の目的地です。

「計算問題がメインとは限らない」

計算問題の対策としてノートを使うことをおすすめしましたが、試験種によっては計算問題の出題が極端に少ない試験種もあります。具体的には、地方上級等では特に少ないです。一方、国家公務員系では例年多めに出題されています。公務員試験の経済学は計算問題だけでないということを念頭に置いておくべきです。特にグラフ系の問題は肝ですので、なるべく理解しておきたいです。

ミクロ経済学の捨て分野

私は、とにかくコストパフォーマンスの高い学習を推奨しています。基本的に教養試験科目より専門試験科目の方が学習1単位あたりの限界的な得点向上率は高いですが、1つの科目についてある程度学習を進めてくると、飽和して限界得点向上率は逓減してきます。したがって、専門試験においては、出題頻度が少ないなどでコストパフォーマンスの低い分野は捨てることとして、他の科目の勉強へ移行するとことをおすすめしています。

ミクロ経済学については、以下のように、対策に時間がかかるにもかかわらず出題頻度が小さいものがあります。これらは捨ててしまっても差し支えありません。(私が公務員試験を受験した際に実際に捨てた範囲です。)

  • ゲーム理論のうちの「混合戦略」……過去問集によっては掲載されていますが、対策にも時間がかかる上、実際に解くさいにも時間が大きくかかるので、得意な人でも捨てるべきです。
  • 「コブ・ダグラス型生産関数」の計算問題……こちらは国家系の試験種等でそこそこ出題されていますが、内容が消費者理論の計算問題と類似しているのに異なる部分もあり、混交を招くおそれがあります。得意な人ならぜひ取り組むべきですが、苦手な人は後回しにして良いと思います。
  • 「生産関数から総費用関数を求める」問題……H26年度の国家総合職試験等でそこそこ出題されていますが、以上と同様の理由で、捨てる選択肢もアリです。生産関数の分野は学術的には重要ですが、公務員試験対策に限って言えば、総じて手薄にしても良いと考えています。

まとめ

  • ミクロ経済学は多数の試験種において出題されており、基本的には対策するべき。
  • 導入書を挟んだのちに、「スー過去」を5週程度回す。
  • 試験対策であることを念頭に置く。割り切って勉強を進める。
  • 一部捨ててもよい分野もある。
かつを

最後に、参考になるか分かりませんが、イメージとして、私の場合は以下のように計算問題用のノートを作成していました。完全競争市場の総費用関数TCから、損益分岐点や操業停止点における生産量や価格を求める頻出問題です。

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