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公務員の生涯賃金はいくら?【国家総合、国家一般、県庁、政令市、特別区の比較】

このサイトでは、過去に、人事院規則に基づき、国家公務員の年間給与額、期末勤勉手当額、退職手当等について徹底的に計算を行いました。

このサイトでこのように給与について記事を執筆することにしたきっかけは、ネット上で誤った情報が流布されていることを目にする機会が多かったことにあります。公務員の生涯賃金については、一般職給与法や人事院規則、各自治体の給与条例等に基づけば一円単位で精密な算出(シミュレーション)を行うことが可能であるにもかかわらず、SNS等で誤った情報を目にすることが多いです。そこで、国家公務員と地方公務員の生涯賃金について、属性別に算出を行いました。

かつを

過去に計算した数字を足し上げるだけで生涯賃金は求められるので、すぐできました!

その結果は以下のとおりです。

目次

国家公務員の生涯賃金

まずは、国家公務員の生涯賃金について算出して結果をお伝えします。

国家公務員総合職の生涯賃金:約4億5500万円

すべての公務員のうち、最も生涯賃金が高くなるのが国家公務員総合職です。課長級で役職定年を迎えたと仮定した場合の算出ですが、それでも、生涯賃金は約4.5億円に上ります。世間(やネットの誤情報)で言われているよりも多いと思います。当然ですが、審議官級以上の指定職に任用されたのちに定年退職した場合には更に高くなる余地も残しています。

内訳は次のとおりです。

  • 給与、期末勤勉手当(40年分):約4億1400万円
  • 退職手当:4100万円

ちなみに、以下を含め、すべて、25歳で就職して約40年間勤務したのち、65歳で定年を迎えて退職したと仮定して計算しています。国家公務員総合職の場合、審議官や局長級等の高級官僚と呼ばれるポストに就いたのち、大企業の役員等に再就職することも多いです。そうすると、公務員を退職した後の賃金の存在感も大きいですが、この記事ではあくまで公務員としての所得のみに限って算出しています。

国家公務員一般職(本府省採用)の生涯賃金:約3億6600万円

次いで、本府省に採用された国家公務員一般職の場合、その生涯賃金は約3.7億円と算出されました。一般的なサラリーマンよりは高水準かと思います。国家公務員一般職も、特に本府省採用の場合には世間のイメージよりもその給与は高めとなっています。

内訳は次のとおりです。

  • 給与、期末勤勉手当(40年分):約3億3900万円
  • 退職手当:2700万円

なお、国家公務員一般職として本府省に採用された場合、管理職として登用されるのは一部で、多くは課長補佐級として定年を迎えます。今回も、課長補佐級で定年を迎えたと仮定して算出しています。

国家公務員一般職(地方出先機関採用)の生涯賃金:約2億6400万円

続いて、地方出先機関で採用された国家公務員一般職のケースです。この場合、生涯賃金は約2.6億円です。同じ国家公務員一般職でも、本府省採用の場合と比して昇格(職務の級が上がること)のスピードが遅くなること、本府省業務調整手当や地域手当の支給有無の関係から、生涯賃金は大きく異なります。

金額の内訳は以下のとおりです。

  • 給与、期末勤勉手当(40年分):約2億4300万円
  • 退職手当:2100万円

なお、この試算は、地域手当が一切支給されない(支給割合が0%の)場合を仮定しています。したがって、関東圏や近畿圏の地域手当支給割合が高めの場合には、どちらかというと上述の本府省採用の場合の金額に近似します。

このように、地方の出先機関に勤務する場合は、本府省に採用された場合と比して生涯賃金は低くなります。ただし、言うまでもありませんが、東京一極集中の今、地方の地価の安さなどを考慮すれば、可処分所得はそこまで大きく乖離するわけではないと言えるでしょう。

地方公務員の生涯賃金

続いて、地方公務員の生涯賃金についてです。県庁職員と政令指定都市についてそれぞれ試算したところ、いずれも大差ない結果でしたので、この記事においては、これらを「県庁・政令市職員」として一つにまとめることとしました。

なお、県庁、政令市とも、以下の試算では地域手当の支給割合が10%の自治体をモデルにして算出を行っています。

特別区職員については地域手当こそ支給額は大きいですが、俸給月額を加味すると県庁・政令市職員とほぼ同水準といって差し支えないと考えます。

県庁・政令市職員として課長級で退職した場合:約3億4800万円

まずは、県庁・政令市職員の場合です。地方公務員の場合は、「県(広域自治体)か市(基礎自治体)か」よりも、「管理職として退職するかどうか」によって生涯賃金が大きく異なります。そこで、まずは、県庁・政令市職員のうちでも、管理職、ここでは48歳で課長級になり、役職定年を迎えたのち、定年で退職した場合で計算してみます。なお、採用された年齢は、引き続き25歳と仮定します。

県庁・政令市職員として課長級を経験したのちに定年退職した場合の生涯賃金は、約3.5億円です。国家公務員と比較した場合には、本府省採用の国家一般職には少しだけ及びませんが、地方出先機関採用の国家一般職よりも高くなります。

内訳は以下のとおりです。

  • 給与、期末勤勉手当(40年分):約3億2100万円
  • 退職手当:2700万円

多くの本府省採用の国家公務員一般職のキャリアの最終到達点である6級課長補佐級と、県庁・政令市における課長級職の年収額はいずれも1000万円前後で同程度となります(地域手当の支給割合にもよりますが)。退職手当は在職中の最高の俸給月額に左右されるため、退職手当額だけ見れば、両者の間の差は小さいです。しかし、国家公務員一般職ではある程度年齢に応じて一次関数的に給与が増えていくのに対して、地方公務員の場合は管理職になるまでの期間では給与が低めとなるので、その乖離が、両者の生涯賃金に差をもたらしています。

県庁・政令市職員として係長級で退職した場合:約2億9700万円

上述のとおり、地方公務員は、管理職か否かによって年収額が大きく変わってくるという特徴がありますので、係長止まりで定年を迎えるキャリアの場合、生涯賃金は約3億円となり、自治体で大きく出世した場合と比して約0.5億円分小さくなります。

内訳は以下のとおりです。

  • 給与、期末勤勉手当(40年分):約2億7400万円
  • 退職手当:2300万円

県庁・政令市職員として係長級で定年を迎えるモデルの場合、上述の国家一般職(地方出先機関)より一割ほど高くなっていますが、ほぼ地域手当支給割合の違いによるものなので、それを加味した場合には、ほぼ等しい生涯賃金となります。

県庁・政令市職員として主任級で退職した場合:約2億8300万円

最後に、県庁・政令市職員として主任級(あるいは主査等の、係長の前の階級)で定年を迎えるモデルの場合です。国家一般職の場合には基本的に普通に過ごしていれば係長級には昇任することになりますが、たとえば政令市等では、主任級で定年を迎えるということは往々にしてあり得ます。

県庁・政令市職員として主任級等で定年を迎える場合、生涯賃金は約2.8億円です。係長級に昇任するモデルと比較して、大きな差がないことが分かります。

内訳は以下のとおりです。

  • 給与、期末勤勉手当(40年分):約2億6100万円
  • 退職手当:2200万円

まとめ

以上です。今回試算を行ったグループについて生涯賃金が高い順に並べると、次のようになります。

  • 国家総合職(課長級)
    生涯賃金:約4.5億円
    最高年収:約1400万円
  • 国家一般職(本府省課長補佐級)
    生涯賃金:約3.7億円
    最高年収:約1000万円
  • 県庁・政令市等(課長級)
    生涯賃金:約3.5億円
    最高年収:約1000万円
  • 県庁・政令市等(係長級)
    生涯賃金:約3億円
    最高年収:約800万円
  • 県庁・政令市等(主任級)
    生涯賃金:約2.8億円
    最高年収:約700万円
  • 国家一般職(地方出先機関)
    生涯賃金:約2.6億円
    最高年収:約700万円

最後に、これらの試算は、あくまで現在の法令に基づいたものであることに注意が必要です。たとえば国家公務員であれば現行の「一般職給与法」や人事院規則、地方公務員であればモデルとした自治体における現行の給与条例やその施行規則に基づいています。しかし、近年の日本のインフレ率を考慮すると、将来的には名目上の俸給月額はどんどん引き上げられていくことが予想されますので、生涯賃金もそれに従って上昇していくと考えられます。

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