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令和6年(2024年)度の特別区Ⅰ類の論文試験のテーマ予想【厳選九テーマ】

令和6年4月21日に、令和6年度の特別区Ⅰ類採用試験(春試験)が実施されます。この試験では論文試験が課されることとなりますが、例年、論文試験として2つのテーマが出題され、いずれか一方について論述するという形式が採られています。

本サイトでは、以下の記事で、特別区Ⅰ類採用試験では出題されるテーマを予想することが重要であるとお伝えしました。

本記事では、今年度に論文試験として出題されそうなテーマについて予想させていただきます。

目次

これまでの出題テーマ

まず初めに、念のため、これまでの出題テーマを掲載します。

特別区Ⅰ類論文試験における過去の出題テーマ
試験実施年度出題テーマ1出題テーマ2
2023デジタル社会における行政の情報発信少子高齢化社会における地域活動
2022限られた行政資源による区政運営地域コミュニティの活性化
2021区民ニーズに即した公共施設のあり方SDGsを踏まえたごみ縮減等
2020先端技術を活用した区民サービス地域の防災力強化(地震等)
2019外国人との共生認知症高齢者増加への対応
2018住民との信頼関係の構築子どもの貧困
2017空き家問題と地域コミュニティ少子高齢化社会における女性の社会進出
2016ユニバーサルデザインとまちづくり区におけるICTの利活用
2015自治体事務のアウトソーシングワークライフバランスの実現
2014自転車行政グローバル社会における区のあり方
2013国内外への東京の魅力向上学校でのいじめ問題と地域のあり方
2012自治体のアカウンタビリティ高齢社会における地域のあり方
2011災害に強い地域社会地域コミュニティの活性化
2010保育の待機児童問題都市インフラ整備のための合意形成
2009防犯と地域社会学校選択と地域社会
2008都区制度と区のあり方区における情報通信ネットワークの利活用
2007区と住民(地域)の協働環境問題
2006少子高齢社会における区のあり方防犯と地域社会
2005地域福祉の向上大地震に対する減災
特別区Ⅰ類本試験の出題を基に本サイトで要約・作成

以下、本題です。今回は、出題率が高い順に九つのテーマに絞って予想しました。

①児童福祉

最も出題可能性が高いと考えるのは、児童福祉分野です。ここ数年、児童福祉制度は国レベルでめまぐるしく制度改正が進んでいます。2023年4月には内閣府の外局としてこども家庭庁が発足したほか、児童手当の制度改正は幾度にわたって報道されていますね。また、「こども未来戦略」「こども・子育て支援加速化プラン」が策定されるなど、児童福祉は日本の行政のトレンドとしてかなり「熱い」分野です。「産後パパ育休」等のような職場における育児支援に絡めた出題形式も予想されます。

そして、特別区を含め、基礎自治体における基幹的事務の一つは民生(あるいは社会保障、社会福祉)部門の事務だと捉えられることもあります。それだけ重要にもかかわらず、本試験において児童福祉関係の出題がされたのは直近では2018年度となっており、その後6年度分においてはまったく出題されていません。サイクル的にもそろそろであるということも理由の一つです。

出題されるとすれば、上述したような国レベルの施策を踏まえて、特別区(職員)として児童福祉に係る行政にどのように取り組んでいくべきかといったことについて論述を求められることが想定されます。したがって、以上のようなトレンドは事前に把握しておくことをおすすめします。

②ICT

次点では、ICT関係のテーマが出題されるのではないかと予想しています。2021年にデジタル庁が発足するなど、ホットな分野であることに間違いなく、世界に目を向ければ生成AI等も盛んに議論されているところです。DXデジタル田園都市国家構想KPIなんかも最近の論点ですね。

また、単純にICT全般について問われる可能性もありますが、もう一つの切り口として、「ICTに関する教育」について問われる可能性もあります。GIGAスクール構想により、公立学校の全生徒に電子端末が支給されるなどしており、自治体、特に教育委員会におけるICT教育の機運が高まっています。

教育というと、行政職員ではなく教員の仕事というイメージが先行する方もいらっしゃるかもしれませんが、特別区を含む基礎自治体では教育委員会が置かれており、教育委員会で働く職員の多くは事務・行政職の公務員です。特別区Ⅰ類として採用された場合には、学校のICT推進に係る業務に従事する可能性もあることから、本試験において出題される可能性もあると踏むわけです。

過去の出題テーマを見ると、ICTについては2016年度試験で問われているほか、2020年度試験の一つ目のテーマも該当するでしょうか。それから大きな間隔が空いているわけではありませんが、出題される可能性はなお高いと考えます。

③防災

三つ目に、防災関係のテーマの出題を予想します。基礎自治体には、おそらくそのすべてに防災課及びそれに準ずる課が置かれていますが、東京23区は、特に災害リスクの高い都市です。

特に23区の東部は、ただでさえ標高が低いにもかかわらずその地盤は軟弱であり、また、荒川区、墨田区、葛飾区等の下町エリアには木造家屋が密集していたり、道路の拡幅が必要だったりする地域が多く残っています。何より、首都直下地震の発生確率が高いとされる今日においては重要な論点の一つです。防災の対策は、国、都、特別区のそれぞれにおいて別々の役割を担っています。特別区においても固有の業務が存在していることから、論文試験として出題されやすいのです。

直近では2020年に出題がありますね。ただ、一口に防災といっても様々な観点があります。単に防災について広く問われる可能性もありますが、地震、火災、水害、液状化、地域防災、避難計画、防災訓練等と幅広い観点について、ある程度絞り込んだ出題となることも予想されます

出題された場合のキーワードとなるのは、「首都直下地震」「地域防災計画」「国土強靭化」あたりは使えるので抑えておくとよいと思います。

④孤独・孤立対策

四番目に出題可能性が高いと考えるのは、孤独・孤立対策に係るテーマです。高齢者の孤独死については従前から議論が交わされてきたところですが、2023年に孤独・孤立対策推進法が公布されるなどしており、議論が過熱化しています。また、孤独・孤立というのは特別区との親和性が高い論点です。その支援の主役は基礎自治体といっても過言ではありません。過去に孤独・孤立に絞って論文試験で出題された例は観測の範囲はありませんので、思い切った予想となりますが、以上のことから出題の可能性はあると考えます。

また、後述しますが、特別区の論文試験として頻出である地域コミュニティ・地域社会関係の論点に絡める形で出題される可能性も高いと見ています。

⑤観光

五番目の予想テーマは観光関係としました。観光については、一応23区に所掌する課が置かれているものの、それを主導する主体は民間事業者ということなのか、過去の本試験ではあまり出題されていないテーマです。「東京の魅力発信」という形では10年以上前になりますが一応の出題はありますので、ある程度幅を持たせる形でこのように予想しました。そういった意味ではこれも思い切った予想となりますが、ポストコロナ時代を迎えて、国内外からの観光客は増加の一途を辿っていることから、この辺りで出題があるのではと考えています。

一言に観光といっても幅広ですが、実際の出題のされ方としては、「東京の魅力をどのように国内外へ発信するか」「オーバーツーリズム」「インバウンド消費」「観光と地域の関係」といった形が想定されます。

⑥地域コミュニティ・地域社会形成

六番目に重要なのは、地域コミュニティ形成等に係るテーマです。これについては、過去で頻出のテーマあることにくわえて、広義には、直近の二年度において連続して出題されていると捉えることもできます。それでも出題される可能性は高いと考えます。ここは重要すぎるので、一例として2022年の出題をそのまま紹介します。

(2022年度本試験論文課題より抜粋)

特別区では、人口の流動化、価値観やライフスタイルの多様化によって地域コミュニティのあり方に変化が生じています。また、外国人の増加も見込まれる中、様々な人が地域社会で生活する上で、地域コミュニティの役割はますます重要となっています。こうした中、行政には、年齢や国籍を問わず、多様な人々が地域コミュニティの活動に参加できるような仕組みづくりや、既存の活動を更に推進するための取組が求められています。このような状況を踏まえ、地域コミュニティの活性化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

特別区人事委員会採用試験情報(tokyo23city.lg.jp)より抜粋

このような形でダイレクトに問われるのが、本試験における典型的なこれまでのパターンですね。

あるいは、地域コミュニティについて直接的に問われなかったとしても、他の出題テーマに対する回答の一部として地域コミュニティ形成を引き合いに出して回答を作成することができるため、全受験生が必ず準備しておくべきテーマです。

たとえば、頻出の福祉領域に関して言えば、「地域共生社会」や、少し古いですが「地域包括ケアシステム」といった「地域」に係る観点から回答を論述することが望ましいですし、防災領域に関する出題があった場合も、「自助・公助・共助」「地域防災計画」に絡めた形で回答することが可能です。最近の概念である「地域ビジョン」なんかも必ず押さえておくべきですね。たまに出題される防犯についても、時事というよりはアカデミックですが、社会学のボンド理論なんかを引き合いに出すなどして地域コミュニティに繋げて回答することができます。

地域コミュニティについては、2022年度の出題を参考に、必ずご自身で答案を作る演習をしてみてください。正直、特別区の論文試験は、地域コミュニティについて押さえておくだけでかなりの論点をカバーできます。五割くらいカバーできるといっても過言でないです。

⑦環境

環境についても頻出のテーマですね。直近では2021年度に出題されてはいますが、それ以降に新たな概念も台頭していますので、あらためて出題される可能性があります。2021年度の出題では、COP21等のタイミングでしたが、今年度に出題された場合には、「COP28」「地球の限界」「GX」といった観点を導入して答案を作成するのが望ましいと思います。

また、一口に環境と言っても実際にはもう少し個別的に問われる可能性もあります。直近のようにごみの縮減について問われる形のほか、気候変動やプラスチック問題、地球温暖化、フードロスなんかについては個別的に問われる可能性がありそうですね。いずれの場合も、上述の最近のキーワードを交えて答案を書ければ十分に合格点に至ることができるはずです。(さらに特別区内外の先進事例等も含めることができるとベストですね!)

⑧(その他の)福祉

以上の七つの論点が今回の予想の大本命ですが、もう少しだけ続けさせていただきます。

八番目は、「(その他の)福祉」関係の出題を予想します。「(その他の)」と付したのは、一番目の予想として児童福祉のものを掲げているためです。

具体的には、自治体職員の仕事としてボリュームの大きい障がい者福祉、高齢者福祉あたりの出題を想定しています。とりわけ、地域企業における障がい者の雇用について出題される可能性もあります。「障害者雇用促進法」の改正があったことなど、最近になって注目を集めていることが予想に至った理由です。2022年の障害者の雇用率は、全国的には法定雇用率(2.3%)をわずかに下回っていることなども答案作成のネタになりますね。

福祉領域の施策だと他に生活困窮者支援(生活保護)等もありますが、生活保護については特別区にも多数のケースワーカーが配置されているものの、国からの法定受託事務ということもあり自治体の裁量が小さいことから、出題の可能性は低いのではないかと見ています。

⑨地域産業(地域企業)支援

九番目の予想はこれまでに例が乏しいものですが、地域産業(地域企業)支援について出題されると予想します。地域産業については、23区の中にそれぞれ所掌課が存在しており、特別区の論文試験として出題があってもおかしくはなさそうですが、これまれにその例はあまり見られません。その理由は、中小企業支援は主に国(中小企業庁・各経済産業局)や独立行政法人(中小企業基盤整備機構)がその多くを担ってきたからだと考えられます。

それでも出題があり得ると予想するのは、全国的に産業に関するトピックが盛んであるためです。「スタートアップ」「地域ビジョン」といったキーワードのほか、「産後パパ育休」「育休取得率」等に絡めた労務的な意味合いからの出題も考えられます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。実際に出題された場合に、答案作成のキーワードとして用いることができるものについては緑色のハイライトを付していますので、テーマ予想にくわえて、答案作成においても参考にしていただけますと幸いです。

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