国家公務員の採用試験においては官庁訪問が課されますが、その実質的な倍率は公表されていません。しかしながら、機関別にその採用難易度には乖離があるという話を聞くことはよくありますし、実際にそういった傾向は確かに存在すると感じます。この記事では、国家一般職のの官庁訪問における機関別の採用難易度について、私のイメージをまとめさせていただきます。
なお、国家総合職については既に以下のとおり別に記事にしています。
国家一般職の官庁訪問の倍率は一切公開されておらず、ブラックボックス化されています。以下はあくまで一私見に過ぎないものとなりますので、ご留意の上、参考にしていただけますと幸いです。
対象とした官庁は、国家一般職のうち、本府省と、どの地域区分においてもある程度の採用ボリュームのある地方出先機関を対象としました。これらについて。SSランク~Bランクの4段階に分類しました。
SSランク
- 特許庁
最も採用難易度が高いSSランクには、特許庁が該当します。特許庁は、この10年ほどの間に、受験生から圧倒的な支持を得てきた官庁です。国家一般職として入庁した場合は、事務方の仕事に就くか、あるいは商標審査官として入庁することとなります。特に人気なのは商標審査官で、その仕事内容は裁量が大きく魅力的なものです。また、霞が関の中で随一のワークライフバランスの整った役所であることでも知られます。こういったことから、就職先として絶大な人気を誇る官庁です。
勤務地は主に東京の霞が関になるため、地方志向の受験生であれば意識されることは少ないかもしれませんが、関東甲信越区分等の受験生からはとても人気があります。
オープンワーク株式会社の運営するサイト「openwork」においても、特許庁の評価は他省庁の追随を許しておらず、地方自治体等も含めたすべての官公庁の中で一位に君臨しています。
Sランク
- 各本府省
- 地方検察庁
- 内閣情報調査室
- 会計検査院
- 地方労働局
続くSランクとして、各本府省、地方検察庁、内閣情報調査室、地方労働局をピックアップしました。
各本府省については、霞が関で勤務する国家一般職です。国家総合職入庁者と一緒に仕事をすることになります。特に人気なのは財務省、警察庁、総務省、経済産業省あたりですね。基本的にはどこの省庁もハードですが、仕事の規模感も大きいので、やる気のある受験生からはやはり人気があります。警察庁においては、県警察採用の警察官よりも早く昇進するため、国家一般職入庁者のことを「準キャリ」と呼ぶこともあるそうです。また、以下のように具体的に計算したこともありますが、本府省勤務の職員は、国家一般職の中で最も給与水準が高くなり、45歳程度で年収1,000万円に到達します。
地方検察庁に採用された国家一般職は、いわゆる「検察事務官」と呼ばれます。かなりざっくりいうと、検察官(法曹)のパートナーとして事務方の仕事をこなす役割を担います。法曹に近い立ち位置であるという点で、他の国家一般職とは仕事内容において一線を画している感じがあります。また、キャリアを積んで試験を受ければ副検事になることができることなどからも、人気が高いようです。また、公安職俸給表の適用を受けるため、場合によっては本府省勤務に匹敵するくらいに給与も高くなります。
内閣情報調査室は採用数が少ないため職場としてはニッチかもしれませんが、勤務地の変更を伴う異動がまず無いことから、一つの場所に落ち着きたいと考える方には人気があります。ただし、内閣情報調査室は国家総合職としての採用は行っていないため、上司は基本的に他省庁からの出向者等ということが多くなるという特徴もあります。同様に、会計検査院についても同様に勤務地は基本的に霞が関で固定されることで知られています。
また、労働局についても都道府県単位で採用していることから異動が少ないという見方をすることができます。それが人気の理由の一つにもなっているようです。
このように、勤務地の変動が少ない官庁は総じて受験生からの人気も集中する傾向があります。また、勤務地の変動が少ない官庁についてはこちらの記事にもまとめていますので、よろしければご覧ください。
Aランク
- 地方経済産業局
- 地方厚生局
- 地方農政局
- 管区行政評価局
- その他(SS、S、Bのいずれにも該当しないもの)
続くAランクとして、地方経済産業局、地方厚生局、地方農政局及び管区行政評価局等をピックアップしました。採用難易度として中位に位置するものをここに整理したイメージです。
ここで注意しなければならないのは、国家一般職と一口に言っても、その採用管区(地域区分)をどこにして出願するかによって、難易度が大きく異なるということです。地方経済産業局、地方厚生局等はほぼすべての地域に置かれていますが、関東や近畿区分においては、そもそも試験に最終合格すること自体の難易度が高めですので、北海道や東北区分の地域局に採用されるよりも当然に難易度が高くなります。
Bランク
- 税関
- 地方整備局
- 出入国在留管理庁
続いて、国家一般職の中で採用されることがやや易しめと考える官庁として、税関、地方整備局、出入国在留管理庁を取り上げました。
税関と地方整備局については、国家一般職の官庁として、絶対的にはむしろ人気があります。特に税関の志望者の絶対数は例年多いと感じます。一方で、これらの役所の特徴として、どの地域区分においても採用枠が多めに設定されているということがあります。したがって、採用されるための難易度という点に限っては、やや易しめであると判断しています。
また、これも税関と地方整備局に通じることですが、これらの役所のもう一つの特徴として、複数の地域区分から官庁訪問を受け付けている場合があるということです。たとえば、名古屋税関は東海北陸区分のほか関東甲信越区分の合格者も官庁訪問することが可能です。このように、間口が広くなっており、公務員試験における絶対的なインパクトは大きいものの、採用倍率はむしろ高くないと考えています。(ちなみに、複数区分からの官庁訪問が可能な官庁については、以下の記事に整理しています。)
まとめ
いかがでしたでしょうか。以上はあくまで私見に過ぎませんので、一参考に留めておいていただければ幸いです。冒頭で述べたとおり、官庁訪問における倍率は明らかにされておりませんので、実際のところはブラックボックス化されています。
また、「入りやすい省庁に対して官庁訪問する」といったことは、受験戦略においてはクールといえますが、採用後のことまで視野に入れると、必ずしもベストな選択とはいえません。もしかすると40年以上働き続けることになりますし、そうでなくとも、ファーストキャリアはその後のキャリアに大きな影響をもたらしますので、あくまで「何をしたいか」を主眼に置いて選択するべきだと感じています。