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公務員試験における「民法」の勉強方法について【出題数・テキスト・捨て分野】

公務員試験における民法の勉強方法についてお話します。

目次

公務員試験の専門科目における「民法」の特殊性

公務員試験の専門科目には、憲法、行政法、ミクロ経済学、マクロ経済学等がありますが、そのうち、民法に関しては、一つ特異な点があります。国家一般職や特別区Ⅰ類等では、出題科目が「民法1(総則・物権)」と「民法2(債権等)」との2つに分かれていることがあるのです。一方で、それ以外の試験種では単に「民法」として総則・物権・債権等すべての範囲について出題がされることが多いです。その点にご留意の上、以下をご覧ください。

民法の出題される試験種と、出題数

民法1は、行政系の公務員試験の場合、経済系に特化した試験種を除いてほぼすべての試験種で出題されることとなります。憲法が出題される試験種と、その出題数を列挙すると以下のとおりとなります。

主な試験種における憲法の出題数
  • 国家総合職院卒行政区分(法律系) …… 全範囲から必須12問
  • 国家総合職政治国際区分 …… ほぼ全範囲から問題選択式3問
  • 国家総合職法律区分 …… 全範囲から必須12問
  • 国家総合職経済区分 …… ほぼ全範囲から問題選択式3問
  • 国家一般職行政区分(全地域) …… 科目選択式、民法1及び民法2から5問ずつ
  • 国税専門官A …… 「民法・商法」として必須6問
  • 財務専門官 …… 「民法・商法」として科目選択式6問
  • 裁判所事務官 …… 必須13問
  • 特別区Ⅰ類 …… 問題選択式、民法1及び民法2から5問ずつ
  • 都庁Ⅰ類 …… 選択式かつ記述式
  • 地方上級 …… 全範囲から4~7問

国家総合職法律区分、裁判所事務官では出題数が特に多いです。そのほか、記述式試験等を含めると他にも多数ありますが、ここでは割愛させていただきます。

民法の難易度、コストパフォーマンス

(国家公務員系と地方公務員系を、重複しない限り幅広く受験するようなモデルを仮定した場合)

  • 民法の学習難易度 …… ★★★★☆
  • 民法のコストパフォーマンス …… ★★☆☆☆

公務員試験における民法は、他の法律科目や経済科目と比べてやや難易度は高めです。経済理論とどちらが難しいと感じるかは人によると思います。また、民法は分量が他の専門科目の2倍(過去問集が2冊に分かれている)あるにも関わらず、出題数はそこまで多くないため、基本的には学習のコストパフォーマンスはやや低めです。大手予備校等では憲法に次いで重要な科目として紹介されることもありますが、個人的には優先度はそこまで高くないと考えています。

国家総合職法律区分や裁判所事務官の志望度が高い場合には民法の全範囲を学習することが必須ですが、地方公務員等が第一志望の場合は、民法1(総則・物権)のみ学習するという選択や、民法自体を完全に捨てるという選択も考慮に値します。

かつを

私は、初めて公務員試験を受験した際には民法2を捨てて民法1のみ学習しました。国家総合職法律区分を含むすべての試験種に合格していますが、ラッキーなケースだと思います。国家総合職法律区分等の志望度が高い場合には、基本的に民法1,民法2の両方を勉強するべきです。

民法を勉強する順番

民法を勉強する順番は、憲法の後がおすすめです。もっというと、民法より行政法の方がコストパフォーマンスが高いため、法律系科目の中で、「憲法→行政法→民法」の順に進めていくことを推奨しています。民法の法的性格は、ご存知のとおり法律の1種です。その上位の法規である憲法を先に学習しておくことで、少しは理解がスムーズになります。また、民法は行政法ともほんの少しですが関係がある論点があります。

民法の勉強方法(使用するテキスト)

1.導入用テキスト

民法の勉強方法についてですが、憲法、行政法よりも内容が煩雑なものとなっていますので、いきなり過去問集に取り組むのではなく、その前段階として、まずは導入用のテキストを一読することをおすすめします。導入用のテキストは、「郷原豊茂の民法まるごと講義生中継」がおすすめです。私はこのテキストでほぼ独学で民法の学習をしましたが、講義調の文面と、時折用いられる図表が相俟って、「理解するための書」として必要十分な内容を備えています。また、TAC出版により出版されているテキストですが、TACの講義やカリキュラムと連動しているわけではないので、TACの生徒でなくとも全く問題なく使えます。

2.過去問集

導入用のテキストを1読したら、過去問集に取り組みます。使用する過去問集は、「過去問解きまくり」がおすすめです。いずれも受験生にとっての王道です。私も、受験生時代には「過去問解きまくり」によって学習しました。憲法、行政法においては、もう一つの王道シリーズである「スーパー過去問ゼミ」も選択肢に入るのですが、民法に限っては「解きまくり」に軍配が上がると思います。実際に手に取って比べてみると明らかですが、その理由は、レジュメページの分かりやすさに尽きます。スー過去ではほぼ逐語的な説明が羅列されているに過ぎない一方で、「解きまくり」では体系的に理解することが出来るよう、イラストや図表が多数使われています。

また、民法については、頻繁に抜本的な改正がありますので、テキストはなるべく新しいものを使うことをおすすめします。「法律は生き物」という言葉もあります。

過去問集の使い方

過去問集は、学習を完成するまでに、5週以上はこなすべきです。1~5週目以降の各週において、以下のように使っていくのがおすすめです。

  • 1週目は、レジュメページを読み、マーカーで装飾して理解を深めていく。その後、過去問の解説が書かれたページにおいて、コアとなる部分をマーカーで装飾し、次週以降にすぐ確認できるようにしておく。掲載されている過去問は同じ内容の選択肢・解説が繰り返し登場することがあるため、既に一度マーカーを付したことと同じことが書いてある解説には、当該解説文全体に黒鉛筆で斜線等を付しておく。こうすることで、次週以降にマーカーで装飾した部分だけを復習することで、必要十分の知識が確認できるようになる。
  • 2週目は、レジュメページを読んで復習し、理解を深める。また、過去問ページにおいて、1週目でチェックしそびれていたところにマーカーで装飾したり、同じことが書かれているにもかかわらずマーカーで装飾していたところのマーカーを削除して黒鉛筆で斜線を引くなどの作業を行う。最終的に、すべての解説文にマーカー(確認するべき箇所)か斜線(確認不要の箇所)のいずれかを付すことになる。
  • 3~5週目以降は、以上でマーカーを付した部分を確認していき、とにかく暗記していく。

特に重要なのは1~2週目で行う作業です。「解きまくり」では、例えば重要な選択肢の解説だと、同じ内容が1冊において5度くらい登場することもあります。毎週同じ内容を5度も確認するのは能率が悪いため、5度のうち4度分はスキップできるようにするために、黒鉛筆等で大きな斜線等を付しておくのです。この作業を行う際、1冊のテキストを、何度も前後にページをめくりながら進めていくことになります。一度付けたマーカーを削除できるようにするために、「フリクション」がおすすめです。

1~2週目でこの作業をこなしておくことで、公務員試験の憲法を攻略するために必要な知識が最低限で復習できるオリジナルの過去問集、もといテキストが完成します。使用するのは過去問集ではありますが、3~5週目においては、いちいち問題を見て、演習形式で自分で回答を考える必要はありません。あくまで暗記作業と割り切って、自身がマーカーを付したレジュメページの該当部分や、過去問の解説ページの該当部分をチェックしていくだけで十分です。

過去問集には重複が結構多く、この作業の結果マーカーが一切つかないページも結構多くなるはずです。そうすると、5週目頃には、朝から夜まで集中すれば、1日で1冊の過去問集を回すことが出来るようになるはずです。1~2週目の作業には膨大な時間を要しますが、3~5週目には効率の高い記憶の定着が期待できるようになるので、確実に跳ね返ってきます。

民法の捨て分野

私は、とにかくコストパフォーマンスの高い学習を推奨しています。基本的に教養試験科目より専門試験科目の方が学習1単位あたりの限界的な得点向上率は高いですが、1つの科目についてある程度学習を進めてくると、飽和して限界得点向上率は逓減してきます。したがって、専門試験においては、出題頻度が少ないなどでコストパフォーマンスの低い分野は捨てることとして、他の科目の勉強へ移行するとことをおすすめしています。

民法の中で、ある程度後回しにしたり、あるいは確保できる勉強時間に応じて捨ててしまっても構わない分野は、次のような民法1のうちの個別的な物権の論点です。

  • 用益物権
  • 法定地上権
  • 根抵当権
  • 質権
  • 留置権
  • 先取特権

これらは2年連続で出題されることは滅多にないため、志望する試験種の昨年度の問題において出題されていれば、今年度においてはまず出題されないと考えて大丈夫です。一方、個別的な物権の論点のうちでも、「占有権」、「抵当権」、「所有権」等は頻出ですので、捨てないようにしてください。

また、民法2のうちでは、家族法については一切出題しないという試験種もあります。その場合には採用案内にその旨が明記されていますので、志望する試験種の採用案内を確認してみてください。

まとめ

  • 民法は重要科目の1つに違いないが、憲法や行政法よりもコスパは低い。
  • 導入用テキスト(「まるごと講義生中継」)の後、「解きまくり」を5週以上回す。
  • 物権のうちの個別的な論点は捨てることも視野に入れる。

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