MENU

国家公務員総合職として事務次官級になりやすい官庁はどこか【ランキング】

この記事では、少し変わった切り口から国家公務員総合職の試験を考察します。

以前このサイトで作成した以上の記事とも類似しますが、この記事では、【国家総合職として採用された場合に、事務次官級になれる確率が高い官庁はどこか】といった点に着眼します。

目次

事務次官級とは

事務次官の定義

本題に入る前に、「事務次官」とは何かについて説明します。

事務次官は、各官庁に置かれる事務方のトップです。各省であれば、その長たるのは国務大臣ですが、その事務を補佐し、省務を整理し、各部局及び機関の事務を監督することが主な職務です。

事務次官については国家行政組織法第18条に規定されています。

国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)

(事務次官及び庁の次長等)
第十八条 各省には、事務次官一人を置く。
2 事務次官は、その省の長である大臣を助け、省務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する。
3・4(略)

e-Gov 国家行政組織法

20代前半に国家公務員総合職(いわゆるキャリア官僚)として採用された後、35年ほど勤続し、その中で出世レースで最も勝ち進んだ一人が事務次官級にまで登りつめることになります。

なお、国家公務員総合職のキャリアパスについては以下の記事で触れていますので、よろしければご覧ください。

事務次官の人事

承認が必要

事務次官は、「一般職」の公務員の最高位です。ここでいう「一般職」とは、国務大臣のような「特別職」の公務員に対置される「一般職」のことです。

(「一般職」の公務員と「特別職」の公務員の違いについては、以下の記事をご覧ください。)

事務次官は「一般職」の公務員でありながら、極めて大きな職責を担うため、任用されるにあたっては、各大臣による任命と、内閣による事前承認が必要となります。

一般職」でありながら特別な手続が必要とされている唯一の職とも言うことができます。

退官後

事務次官は、退官後、民間企業の役員や独立行政法人の理事等になることが多いという特徴があります。民間企業であれば誰もが知るような大企業の役員に就くことが多いです。

「天下り」として世間でバッシングされることも多く、このような公務員の再就職は全体的には下火になっていますが、事務次官級ともなると、各界に大きな権限を持つポストに転身することが一般的のように思えます。

給与

事務次官は、全ての国家公務員の最高級のポストといえますので、公務員としてはその給与は極めて高水準です。年額にしておおむね2,300万円です。

国家公務員の給与は「一般職の職員の給与に関する法律」(昭和25年法律第95号。この記事において「一般職給与法」という。)において定められていますが、大多数の職員の給与が「行政職俸給表」という名前のテーブルによって決まるのに対して、事務次官を含む「指定職」は、「指定職俸給表」という特別なテーブルによって定められています。

事務次官以外の事務次官級の職

ちなみに、「事務次官級」という言葉を用いているように、「事務次官」以外にも、給与や行政の現場において「事務次官」と同格に扱われる職もあります。

たとえば、事務官の給与は一般職給与法の指定職俸給表の8号俸の金額となりますが、これに該当する職には、以下のものがあります。これらについて「事務次官級」という言葉が用いられることが多いように思いますので、この記事においても、この考え方に準ずることとします。

  • 事務次官
  • 会計検査院事務総長
  • 人事院事務総長
  • 内閣法制次長
  • 宮内庁次長
  • 警察庁長官
  • 金融庁長官
  • 消費者庁長官
  • 最高裁判所事務総長
  • 統合幕僚長

このように、事務次官級に該当する職は案外と多いことが分かります。

「〇〇省」という名の付く役所の事務方のトップが基本的に「事務次官」であるのに対して、それ以外の役所、例えば会計検査院や人事院、最高裁判所のトップは「事務総長」の名を冠しています。

事務次官級になれる確率が高い官庁

それでは、ここからがこの記事の本題です。

事務次官級の特徴の一つとして、就任後、1年程度で退官するというものがあります。そうすると、同期として入庁した者のうち、おおむね1人ほどが事務次官級になるということになります。

ひるがえって言うと、事務次官級ポストを擁する官庁のうち、1回(1年度)で採用する国家公務員総合職の数が少ないほど、事務次官になることのできる単純な確率は高いということになります。

ここで、直近の国家公務員採用試験から、事務次官級ポストを擁する官庁をピックアップした上、それぞれの1回の採用試験における絶対的な採用者予定者数を一覧化します。

事務次官級ポストのある官庁における総合職の採用予定数
  • 会計検査院:5人
  • 人事院:5人
  • 消費者庁:5人
  • 金融庁:15人
  • 環境省:30人
  • 警察庁:32人
  • 外務本省:35人
  • 文部科学本省:37人
  • 防衛本省:38人
  • 法務本省:42人
  • 財務本省:43人
  • 総務本省:57人
  • 厚生労働本省:72人
  • 国土交通省:142人

以上です。

以上に掲げた順番が、そのまま事務次官級へ任用される確率の高さを表しています。

採用予定人数は年度によって多少ことなりますが、大きな変動はありません。

以上のことから、最も事務次官級になることのできる確率が高い官庁は会計検査院人事院であり、逆に最も確率が低い官庁は国土交通省だと結論づけられそうです。

単純計算でも、会計検査院人事院の場合は国家総合職として採用された時点で事務次官になれる確率が20%あるのに対して、国土交通省の場合は約0.7%です。

「〇〇省」に採用された場合は、組織が巨大である分、事務次官級として任用される確率は総じて低めですが、その中での比較では、環境省がトップで、次いで外務省文部科学省が続きます。

ただし、以上のうち消費者庁については、当該官庁に採用されたプロパー職員が事務次官級に上り詰めるとは限らないなどの事情があることには注意が必要です。

なお、内閣法制局については採用形態やキャリアシステムが特殊であるため、事務次官級である内閣法制次長のポストを擁する官庁ではありますが、以上に含めておりません。

事務次官になれる確率が高くなる属人的な要件

以上は、事務次官になりやすい「組織」について論じたものですが、続いて、個人に着眼します。

事務次官になりやすい属人的な要件として、どのようなものが考えられるでしょうか。

年齢が低いほど有利

確実にいえるのは、採用された年齢が低いほど有利ということです。

国家総合職職員は、採用後しばらくの期間は横並びで昇格していきます。

そうすると、ある程度は、玉突き的に順番に昇格していくことになるため、たとえば国家公務員総合職として採用された際に、年齢要件ギリギリの30歳で採用された場合、60歳までに事務次官に到達するのは極めて困難です。

国家公務員基本的には若くして採用された方が有利な昇進システムとなっています。

技官よりも事務官が有利

また、一つの特徴として、技官よりも事務官(文系)として採用された方が事務次官級に任用される可能性が高いというものがあります。

以上の試算は技官と事務官を全て合算して単純計算したものですが、事務官・技官の別を考慮して考えると、より正確なシミュレーションも可能になります。

東大卒であることの影響は不明

ところで、歴代の事務次官級任用者を見ると、東大や京大の出身者が極めて多いことが分かります。

ただ、これが「東大・京大等の出身であることが事務次官へのなりやすさに影響しているか」と問われると、明確な答えを出すのは難しそうです。

そもそも、今から30年前は、国家公務員総合職として官庁に採用された職員の多数が東大や京大の出身者だからです。

霞が関のキャリア官僚と出身大学の関係については、以下の記事にまとめていますので、よろしければご覧ください。

現在は霞が関における学歴の多様化が進んでいますので、数十年後には、東大・京大以外の出身者が事務次官級に多く名を連ねているといったことも想定されます。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次