国家一般職試験のうち行政区分では、第1次試験において基礎能力試験(教養試験)及び専門試験に加えて、一般論文試験が課されます。この一般論文試験について、試験対策においてどれほど重要視するべきなのか、すなわち、どれほど対策に時間を割くべきなのかといったことについてお話しします。
一般論文試験とは
国家一般職試験における一般論文試験は、「一般論文」と銘打たれているとおり、論理構成力や文章力を問われる内容となっています。例えば、実際の試験問題例として以下が挙げられます。
(前略)
人事院HP:試験問題例 一般職(大卒)|国家公務員試験採用情報NAVI (jinji.go.jp)
2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される予定であり、政府の「明日の日本の支える観光ビジョン」(平成28年3月30日策定)によると、2020年には訪日外国人旅行者数を2015年の約2倍の4,000万人に増やすなどの目標が掲げられているところである。
(1)我が国が観光立国の実現を推進する必要性や意義について、あなたの考えを述べなさい。(2)(1)に照らして、観光立国の実現を推進するために我が国が行うべき施策について、あなたの考えを具体的に述べなさい。
特別区I類試験においても論文試験が課されますが、国家一般職試験では、出題の前提となる時代背景や施策の動向についてある程度設問に記載があるというところに違いがあります。特別区I類試験では、ある程度出題されるテーマを予測することが可能であるという点に鑑みても、国家一般職試験における論文試験は、その場で考えて文章を書くことができるかどうかを問われる印象があります。
「足切り」の存在
国家一般職試験における一般論文試験にはいわゆる「足切り」が存在します。「基準点」というもので、人事院のHP上でも次のように説明されています。
基準点に達しない試験種目が一つでもある受験者は、他の試験種目の成績にかかわらず不合格となります。
人事院HP:「2023年度国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験) 合格者の決定方法」 kettei15.pdf (jinji.go.jp)
なお、一般論文試験は1~6点の6段階で採点され、基準点は3点とされています。すなわち、0~2点と採点された場合は、他の試験種目の成績にかかわらず不合格となるということです。
点数の分布を知れば、怖がることはない
このような仕組みがあるにもかかわらず、必要以上に一般論文試験を不安に思う必要はないということを説明します。国家公務員試験では、毎年試験終了後に、試験科目別に平均点や標準偏差等が公開されています。例えば、2023年度の一般論文試験の場合、次のとおりとなっています。
平均点:4.076点
人事院HP:「2023年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験) 合格点及び平均点等一覧」 shikeng1_heikin.pdf (jinji.go.jp)
標準偏差:0.797
満点:6点
基準点:3点
ここで、平均点と標準偏差を用いれば、統計的手法により、概ねその年の受験生の得点の分布を推定することができます。今回、独自に、2023年度試験の場合の結果を基に受験生の得点の分布を算出しました。その導出過程を書くと冗長となるため割愛しますが、算出結果をパーセンテージで表すと概ね次のとおりとなります。
・6点 : 5%
・5点 : 9%
・4点 : 80%
・3点 : 2%
・2点 : 2%
・1点 : 1%
・0点 : 1%
いかがでしょうか。(実際には小数点以下程度の誤差はあると思いますが、)100名の受験者のうち、基準点を満たさず足切りの対象となってしまう受験生は4名と極めて僅少です。さらにいうと、100名の受験者のうち4点を獲得する者が8割を占めており、4点以上を獲得するものが94%と大多数であることが分かります。一般論文試験は標準偏差が極めて小さく、ほとんど差が付かない試験と言えます。
まとめ
- 国家公務員試験の一般論文試験は8割が4点(ほぼ平均点と同一)となる。
- 「足切り」に該当する人は約4%しか存在しない。
- 出題される内容的にも、大きな時間をかけて対策するメリットは小さい。
統計の知識を活かしてデータに基づいた情報発信をすることがこのサイトのコンセプトでしたので、こういう記事が書けて嬉しいです。ExcelのSTDEV.P関数等を用いて検算してみると、以上の推定が概ね正しいことがお分かりいただけると思います!
ちなみに、今回紹介したのは、あくまで国家公務員に限った話です。地方公務員、特に特別区Ⅰ類等の場合では、論文試験の配点比重が高いことで知られているため、熱心に対策に取り組む必要があります。