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国家公務員・地方公務員の「住居手当」の金額や支給要件等について解説します。

このサイトでは、以下のように公務員に支給される手当について記事を作成していて、好評を頂いております。

この記事では、引き続き、「住居手当」について解説します。

住居手当は、国家公務員と地方公務員によって制度が異なることが多いですが、この記事ではいずれも対象にして解説いたします。

目次

国家公務員の住居手当

まず、国家公務員の住居手当について解説します。

根拠規定

地方公務員の住居手当は、各自治体の条例・規則によって個別に定められる一方、国家公務員の場合は、画一的に定められます。

国家公務員の場合、住居手当の根拠規定は、「一般職の給与に関する法律」(昭和25年法律第95号)第11条の10に置かれていて、これが全ての一般職(特別職ではないという意味の「一般職」)の国家公務員に適用されます。

この条文のうち、主な部分を引用すると以下のとおりです。

一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)

(住居手当)
第十一条の十 住居手当は、次の各号のいずれかに該当する職員に支給する。
一 自ら居住するため住宅(貸間を含む。次号において同じ。)を借り受け、月額一万六千円を超える家賃(使用料を含む。以下同じ。)を支払つている職員(国家公務員宿舎法第十三条の規定による有料宿舎を貸与され、使用料を支払つている職員その他人事院規則で定める職員を除く。)
二 (略)


2 住居手当の月額は、次の各号に掲げる職員の区分に応じて、当該各号に定める額(当該各号のいずれにも該当する職員にあつては、当該各号に定める額の合計額)とする。
一 前項第一号に掲げる職員 次に掲げる職員の区分に応じて、それぞれ次に定める額(その額に百円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てた額)に相当する額
イ 月額二万七千円以下の家賃を支払つている職員 家賃の月額から一万六千円を控除した額
ロ 月額二万七千円を超える家賃を支払つている職員 家賃の月額から二万七千円を控除した額の二分の一(その控除した額の二分の一が一万七千円を超えるときは、一万七千円)を一万千円に加算した額
二 (略)


3 (略)

e-Gov 法令検索:一般職の職員の給与に関する法律

このように難解な作りになっていますが、簡単な言葉でまとめると以下のようになります。

  • 国家公務員の場合、自ら月額16,000円を超える賃貸住宅を契約している職員に、住居手当を支給する。
  • その金額は、借り受けている賃貸住宅の金額によって異なるが、家賃の月額が61,000円以上の場合、限度額である28,000円を住居手当として支給する。

国家公務員の住居手当の支給要件

以上のとおり、住居手当は、法第11条の10第1項第1号に基づき、「自ら居住するため住宅を借り受け、月額一万六千円を超える家賃を支払っている職員」に支給されます。

自ら居住するため住宅を借り受け」の意義

気を付けたいのは、「自ら居住するため住宅を借り受け」の部分です。居住するための物件を自ら契約している場合でなければ、国家公務員には住居手当が支給されないということです。

たとえば、以下のような場合には住居手当の支給はありません。

  • 配偶者の名義で借り受けている賃貸物件に住んでいる場合
  • 賃貸ではなく、自身が住宅ローンを組むなどして購入した住宅に住んでいる場合

月額一万六千円を超える家賃」の意義

月額一万六千円を超える家賃」の意義についても解説します。

地方であったとしても大抵の物件の家賃は16,000円を超えてくるでしょうから、賃貸に住む限り、多くの場合、この要件は満たすことになります。

気を付けたいのは、ここでいう「家賃」とは、狭義の家賃(賃料)の月額のことを指しているということです。

たとえば、以下のようなものは、住居手当の支給要件や金額を判定する際の「家賃」には含まれませんので、ご注意ください。

  • アパートやマンションの共益費
  • アパートやマンションの管理費
  • 駐車場代
  • 契約時の仲介手数料、敷金、礼金

単身赴任中の場合

なお、以上の引用条文では省きましたが、法第11条の10第1項第2号に基づき、単身赴任をしている者で、配偶者が居住するための物件を借り受けている者にも支給される場合があります。

国家公務員の住居手当の支給金額

条文が読みにくいですが、国家公務員の場合、家賃に応じて住居手当の月額が変わってくるという特徴があります。「住居手当が満額もらえる金額の物件に住んだ方が得である」という考え方も可能です。

基本的には、支払う家賃の金額が大きいほど、住居手当の金額も大きくなりますが、簡単に、主な家賃月額に対応する住居手当の金額を一覧化すると、次のようになります。

支払う家賃の金額住居手当の支給金額
16,000円0円
20,000円4,000円
25,000円9,000円
30,000円12,500円
35,000円15,000円
40,000円17,500円
45,000円20,000円
50,000円22,500円
55,000円25,000円
60,000円27,500円
61,000円以上28,000円(上限)

一か月で上限の28,000円をもらえる場合、一年あたりで32万余円もの金額になります。

東京23区に住まうのであれば、大抵の1Kやワンルームの物件の家賃は61,000円を超えてくるでしょうから、住居手当も満額の28,000円が支給されることがほとんどのはずです。

地方に居住・勤務している場合は、以上の表等を目安にして、毎月家賃として支払う金額、支給を受けられる住居手当の金額、物件の条件等を総合的に加味して家探しをするのが良いです。

知らずに決めてしまうのと、知っていて選択するのは大きな違いです。このように、知らない場合は損をしてしまうおそれがあるのが住居手当の制度なのです。

地方公務員の住居手当

地方公務員の場合、住居手当の制度は、各自治体が個別に条例や規則で定めているため、自治体によって異なります。ただ、基本的には国家公務員の制度を参考に作られていることが多いです。

大阪市職員の事例

ここで、一例として、大阪市の事例を参照します。

大阪市の場合、住居手当の金額や支給要件は、「職員の給与に関する条例」第11条の3に定められています。

職員の給与に関する条例(大阪市:昭和31年9月30日条例第29号)

(住居手当)

第11条の3 住居手当は、次の各号のいずれかに該当する職員に対して支給する。ただし、市規則で定める職員については、この限りでない。

(1) 自ら居住するため住宅(貸間を含む。次号において同じ。)を借り受け、月額10,000円を超える家賃を支払つている職員

(2) (略)

2 住居手当の月額は、28,000円(前項第1号に掲げる職員のうち同項第2号に掲げる職員でもあるものにあつては、その額に2分の3を乗じて得た額)を超えない範囲内において、同項各号に掲げる職員の区分に応じて市規則で定める。

3 大阪市内の住宅に居住する職員に対する前項の規定の適用については、同項中「28,000円」とあるのは「30,500円」とする。

大阪市:条例・規則など

これを読み解くと、以下のことが言えます。

  • 大阪市職員の場合、自ら賃貸住宅を契約して、月額10,000円以上を超える家賃を払っている職員等に対して、住居手当として月額28,000円を支給する。
  • ただし、大阪市内の住宅に居住する職員の場合、住居手当として30,500円を支給する。

金額は28,000円と国と同じでスタンダードですが、家賃の金額にかかわらず条件さえ満たせば一律で満額が支給されることや、市内に住めば支給される金額が2,500円分高くなることといった点で、国の制度とは異なっています。

このように、自治体の住居手当の制度は、微妙に異なっていることが多いため、各自治体の条例を見てみることをおすすめします。住居手当の定めは、各自治体の「職員の給与に関する条例」に置かれていることが多いです。

ただし、自治体の区域内に住む場合に気を付けたいのは、自治体が主催する地域の行事に参加しなければならない可能性があるということです。

たとえば、土日に実際される総合防災訓練等がこれに当たります。休日はプライベートに徹したいという人にとっては、職住近接はデメリットにもなり得ます。

東京都職員の場合

もう一つ紹介したいのは、東京都職員の場合です。

東京都においても、住居手当に係る規定は「職員の給与に関する条例」の第11条の3に置かれています。

職員の給与に関する条例(東京都:昭和26年6月14日条例第75号)

(住居手当)

第十一条の三 住居手当は、次の各号のいずれかに該当する職員に支給する。

一 世帯主(これに準ずる者を含む。以下同じ。)である職員(公舎等で東京都規則で定めるものに居住する職員を除く。)のうち、満三十四歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある者で、自ら居住するため住宅(貸間を含む。次号において同じ。)を借り受け、月額一万五千円以上の家賃(使用料を含む。次号において同じ。)を支払つているもの

二 (略)

2 住居手当の月額は、次の各号に掲げる職員の区分に応じて、当該各号に掲げる額(第一号に掲げる職員のうち第二号に掲げる職員でもあるものについては、第一号に掲げる額及び第二号に掲げる額の合計額)とする。

一 前項第一号に掲げる職員 一万五千円

二 (略)

3 (略)

東京都HP:Reiki-Base

これまでのものと同様に読みづらいですが、簡単に要点のみをまとめると以下のようになります。

  • 東京都職員の場合、世帯主であり、かつ概ね34歳以下であり、自ら賃貸住宅を契約して月額15,000円以上を超える家賃を払っている職員等に対して、住居手当を支給する。
  • 住居手当の金額は、月額15,000円である。

まず、住居手当の金額が15,000円と国や他の自治体よりも低い水準にあります。東京の家賃相場の高さは言うまでもありませんが、それにもかかわらず、現在に至るまでこのような制度が維持されています。

個人的には、この金額は近いうちに引き上げられるのではないかと考えています。

そして、最大の特徴は、「満三十四歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある者」という部分です。34歳に達した後の最初の3月分までしか住居手当が支給されないということです。

このように、住居手当に年齢制限を設けている自治体も中にはありますので、ご注意ください。

たとえば特別区(東京23区)職員では、年齢に応じて住居手当額が段階的に減額されるような制度となっています。

地方公務員の場合、個別に確認したい

以上のとおり、地方公務員の住居手当の制度は自治体により千差万別ですので、ぜひ、各自治体の「職員の給与に関する条例」をご確認されることをおすすめします。

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