令和7年4月20日に、令和7年度の特別区Ⅰ類採用試験(春試験)が実施されます。この試験のうち、事務の区分論文試験が課されることとなりますが、例年、論文試験として2つのテーマが出題され、いずれか一方について論述するという形式が採られています。
特別区Ⅰ類試験では、公表されていないものの、この論文試験の比重が極めて大きいことで知られています。
また、本サイトでは、以下の記事で、特別区Ⅰ類採用試験では出題されるテーマを予想することが重要であると繰り返しお伝えしてきました。(詳細は以下の記事をご覧ください。)

そして、実際に昨年も以下の記事で予想を行いましたが、二番目に出題可能性が高いとしていたICTについて本試験で出題があり、的中に成功しています。

本記事では、今年度に論文試験として出題されそうなテーマについて予想させていただきます。

なお、筆者自身も特別区Ⅰ類に合格し、実際に勤務していた経験があります。
これまでの出題テーマ
まず、念のため、これまでの出題テーマを掲載します。
特別区Ⅰ類論文試験における過去の出題テーマ | ||
試験実施年度 | 出題テーマ1 | 出題テーマ2 |
2024 | 地方行政のデジタル化 | いじめといじめによる不登校対策 |
2023 | デジタル社会における行政の情報発信 | 少子高齢化社会における地域活動 |
2022 | 限られた行政資源による区政運営 | 地域コミュニティの活性化 |
2021 | 区民ニーズに即した公共施設のあり方 | SDGsを踏まえたごみ縮減等 |
2020 | 先端技術を活用した区民サービス | 地域の防災力強化(地震等) |
2019 | 外国人との共生 | 認知症高齢者増加への対応 |
2018 | 住民との信頼関係の構築 | 子どもの貧困 |
2017 | 空き家問題と地域コミュニティ | 少子高齢化社会における女性の社会進出 |
2016 | ユニバーサルデザインとまちづくり | 区におけるICTの利活用 |
2015 | 自治体事務のアウトソーシング | ワークライフバランスの実現 |
2014 | 自転車行政 | グローバル社会における区のあり方 |
2013 | 国内外への東京の魅力向上 | 学校でのいじめ問題と地域のあり方 |
2012 | 自治体のアカウンタビリティ | 高齢社会における地域のあり方 |
2011 | 災害に強い地域社会 | 地域コミュニティの活性化 |
2010 | 保育の待機児童問題 | 都市インフラ整備のための合意形成 |
2009 | 防犯と地域社会 | 学校選択と地域社会 |
2008 | 都区制度と区のあり方 | 区における情報通信ネットワークの利活用 |
2007 | 区と住民(地域)の協働 | 環境問題 |
2006 | 少子高齢社会における区のあり方 | 防犯と地域社会 |
2005 | 地域福祉の向上 | 大地震に対する減災 |
このように、特別区で出題されてきた論点にはある程度傾向があることが分かります。
具体的にいうと、時事的なトピックのうち、地方自治体にも裁量のあるものが出題されやすいです。
たとえば、外交政策やマクロ経済政策のように、国が主導して実施する政策について出題されることは想定されづらいです。あるいは、特に法定受託事務に多いですが、生活保護行政や選挙行政のように、自治体に関わりが大きくとも政策の枠組みは国が設計しており、自治体の裁量が小さいものについても出題可能性は低めです。
また、農業行政については、本来であれば地方自治体も大きく関係することが想定されていますが、とりわけ特別区においては農地が僅少であることから、特別区Ⅰ類論文試験における出題可能性が低いです。
今年度本試験のテーマ予想
それでは、以下から本題に移ります。今回は、出題率が高い順に九つのテーマに絞って予想しました。
以下で赤字で記している部分はいわばキーワードです。可能であれば、実際に出題があった場合に論文に組み込むことができるとベターです。
①児童福祉
最も出題可能性が高いと考えるのは、児童福祉分野です。昨年に引き続き、一番手として予想します。
理由としては、ここ数年、児童福祉制度は国レベルでめまぐるしく制度改正が進んでいるからです。2023年4月には内閣府の外局としてこども家庭庁が発足したほか、「子どもの貧困」の流れを汲んで児童手当の制度改正があったことは幾度にわたって報道されていましたね。また、「こども未来戦略」「こども・子育て支援加速化プラン」が策定されるなど、児童福祉は日本の行政のトレンドとしてかなり熱い分野です。「産後パパ育休」等のような職場における育児支援に絡めた出題形式も予想されます。
最近は取り沙汰されることは少なくなりましたが、待機児童の問題と、その対策になり得る家庭的保育事業(保育ママ)については押さえておきたいです。
さらに、2025年度には、子ども・子育て支援法が一部改正され、国の特別会計に子ども・子育て支援特別会計が新設されることとなりました。
特別区を含め、基礎自治体における基幹的事務の一つは民生(あるいは社会保障、社会福祉)部門の事務だと捉えられることもあります。特別区においてそれだけ重要にもかかわらず、本試験で児童福祉関係の出題がされたのは直近では2018年度となっており、その後現在に至るまでまったく出題されていません。サイクル的にも出題される可能性が非常に大きいと考えられます。
出題されるとすれば、上述したような国レベルの施策を踏まえて、特別区(職員)として児童福祉に係る行政にどのように取り組んでいくべきかといったことについて論述を求められることが想定されます。したがって、以上のようなトレンドを踏まえ、キーワードや統計を事前に把握しておくことをおすすめします。
②防災
次点では、防災関係のテーマの出題を予想します。昨年は3番手として予想していましたが、順位を繰り上げて2番手にします。
基礎自治体には、おそらくそのすべてに防災課及びそれに準ずる課が置かれていますが、東京23区は、特に災害リスクの高い都市です。特に23区の東部は、ただでさえ標高が低いにもかかわらずその地盤は軟弱であり、また、荒川区、墨田区、葛飾区等の下町エリアには木造家屋が密集していたり、道路の拡幅が必要だったりする地域が多く残っています。
何より、首都直下地震(南関東直下地震)の発生確率が高いとされる今日においては極めて重要な論点の一つです。
また、防災の対策は、国、都、特別区のそれぞれにおいて別々の役割を担っています。特別区においても固有の業務が存在していることから、論文試験として出題されやすいのです。
直近では2020年に出題がありましたが、そこから現在まで出題されていないことも、出題可能性が高いと見る理由の一つです。
出題された場合のキーワードとして「首都直下地震(南関東直下地震)」「地域防災計画」「国土強靭化」あたりは使えるので抑えておくとよいと思います。さらに、石破内閣発足後、新たに防災庁の設置へ向けて議論されていることもあり、トレンド性がより一層高まっています。
また、一口に防災といっても様々な観点があります。単に防災について広く問われる可能性もありますが、地震、火災、水害、液状化、地域防災、避難計画、防災訓練等と幅広い観点について、ある程度絞り込んだ出題となることも予想されます。区によって特に注意すべき災害は異なりますので、その点も踏まえ、実際の区名や災害の種類を明記できると点数の高い答案に仕上がるはずです。
(たとえば、液状化のリスクが特に高いのは中央区の勝どき・月島エリアや、江東区の南部です。他の区も、それぞれが独自の課題を抱えています。)
以上のようにとにかく出題可能性が極めて高いため、時間のある方は内閣府の最新の防災白書を見ておくと万全です。
③地域コミュニティ・地域社会形成
三番目に重要なのは、地域コミュニティ形成等に係るテーマです。
地域コミュニティ関係は、おそらくこれまでの本試験で最も出題頻度の高い論点です。2022年度にも出題されていますが、それでも引き続き今年も出題される可能性は高いと考えます。
極めて重要性の高い論点なので、ここで一例として2022年の出題をそのまま紹介します。
(2022年度本試験論文課題より抜粋)
特別区では、人口の流動化、価値観やライフスタイルの多様化によって地域コミュニティのあり方に変化が生じています。また、外国人の増加も見込まれる中、様々な人が地域社会で生活する上で、地域コミュニティの役割はますます重要となっています。
こうした中、行政には、年齢や国籍を問わず、多様な人々が地域コミュニティの活動に参加できるような仕組みづくりや、既存の活動を更に推進するための取組が求められています。
このような状況を踏まえ、地域コミュニティの活性化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
特別区人事委員会採用試験情報(tokyo23city.lg.jp)より抜粋
このような形で、地域コミュニティの活性化についてダイレクトに問われるのが、本試験における典型的なこれまでのパターンです。
あるいは、地域コミュニティについて直接的に問われなかったとしても、他の出題テーマに対する回答の一部として地域コミュニティ形成を引き合いに出して回答を作成することができるため、全受験生が必ず準備しておくべきテーマです。地域コミュニティのネタは特別区Ⅰ類の論文試験において複合的に使うことができるのです。
たとえば、頻出の福祉領域に関して言えば、「地域共生社会」や、少し古いですが「地域包括ケアシステム」といった地域福祉に係る観点から回答を論述することが望ましいですし、防災領域に関する出題があった場合も、「自助・公助・共助」「地域防災計画」に絡めた形で回答することが可能です。最近の概念である「地域ビジョン」なんかも押さえておいてよいです。
そのほか、高齢者福祉、障がい者福祉分野からは、交流センターや文化継承のような居場所づくりの観点から地域コミュニティにつなぐことが可能ですし、児童福祉分野からは、子ども食堂や家庭的保育事業(保育ママ)から地域コミュニティにつなぐことも可能です。
(同様に、地域コミュニティとは外れますが、たまに出題される防犯関係についても、少しアカデミック寄りの言葉ですが、社会学のボンド理論なんかを引き合いに出すなどして地域コミュニティに繋げて答案を作ることもできます。)
地域コミュニティについては、2022年度の出題を参考に、必ずご自身で答案を作る演習をしてみてください。上述の理由から、正直、特別区の論文試験は、地域コミュニティについて押さえておくだけでかなりの論点をカバーできます。これだけで五割くらいカバーできるといっても過言でないです。
④環境
環境についても頻出のテーマです。
直近では2021年度に出題されてはいますが、それ以降に新たな概念も台頭していますので、あらためて出題される可能性があります。
2021年度の出題では、COP21等のタイミングでしたが、今年度に出題された場合には、「GX」「COP28」「地球の限界」といった観点を導入して答案を作成するのが望ましいと思います。特に「GX」については名指しで出題される可能性もあると見ています。
対策するなら、環境省の環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書に目を通すほか、各区の先進事例を調べておくとベストです。
また、一口に環境と言っても実際にはもう少し個別的に問われる可能性もあります。直近のようにごみの縮減について問われる形のほか、気候変動やプラスチック問題、地球温暖化、フードロスなんかについては個別的に問われる可能性がありそうですね。いずれの場合も、上述の最近のキーワードを交えて答案を書ければ十分に合格点に至ることができるはずです。
⑤ICT
次いで、ICT関係のテーマが出題されるのではないかと予想しています。
以前は2番手として予想していましたが、実際に出題されたこと、生成ブームが少し下火になっていることから、順位を大きく落としましたが、特別区Ⅰ類ではICT区分においても論文試験が課されていることから、今年も出題される可能性は高いです。
2021年にデジタル庁が発足するなど、ホットな分野であることに間違いなく、世界に目を向ければ生成AI等も盛んに議論されているところです。DX、デジタル田園都市国家構想、KPIなんかも最近の論点ですね。また、直接的に問われる可能性は低いと思いますが、地方自治体は「ガバメントクラウド」への移行により、「地方公共団体情報システム」のセキュリティ強化を目指しているという事情もあります。
また、単純にICT全般について問われる可能性もありますが、もう一つの切り口として、「ICTに関する教育」について問われる可能性もあります。GIGAスクール構想により、公立学校の全生徒に電子端末が支給されるなどしており、自治体、特に教育委員会におけるICT教育の機運が高まっています。
教育というと、行政職員ではなく教員の仕事というイメージが先行する方もいらっしゃるかもしれませんが、特別区を含む基礎自治体では教育委員会が置かれており、教育委員会で働く職員の多くは事務・行政職の公務員です。特別区Ⅰ類として採用された場合には、学校のICT推進に係る業務に従事する可能性もあることから、本試験において出題される可能性もあると踏むわけです。
過去の出題テーマを見ると、ICTについては2016年度試験で問われているほか、2020年度試験の一つ目のテーマも該当するでしょうか。その後2024年度に出題されてから間隔が空いているわけではありませんが、出題される可能性はなお高いと考えます。
⑥観光
六番目の予想テーマは観光関係としました。
観光については、一応23区に所掌する課が置かれているものの、それを主導する主体は民間事業者ということなのか、過去の本試験ではあまり出題されていないテーマです。
「東京の魅力発信」という形で10年以上前になりますが一応の出題はありますので、ある程度幅を持たせる形でこのように予想しました。しばらく出題されいないため、そういった意味ではこれも思い切った予想となりますが、近年は円安傾向で外国からの訪日観光者の数がコロナ禍以前の水準に戻りつつあることも踏まえ、そろそろ出題があるのではと考えています。
一言に「観光」といっても幅広ですが、実際の出題のされ方として、「オーバーツーリズム」のようないわば保守的な行政課題について問われることのほか、「東京の魅力発信」「インバウンド消費」「観光と地域の関係」等のような積極的な行政課題について問われることが想定されます。
また、外国からの訪日外国人観光客数等の統計を押さえておくとベストです。
⑦孤独・孤立対策
七番目に出題可能性が高いと考えるのは、孤独・孤立対策に係るテーマです。
高齢者の孤独死については従前から議論が交わされてきたところですが、2023年に孤独・孤立対策推進法が公布されるなどしており、議論が過熱化しています。
また、孤独・孤立というのは特別区との親和性が高い論点です。その支援の主役は基礎自治体といっても過言ではありません。過去に孤独・孤立に絞って論文試験で出題された例は観測の範囲はありませんので、思い切った予想となりますが、以上の理由から今後出題される可能性はあると考えます。
また、特別区の論文試験として頻出である地域コミュニティ・地域社会関係の論点に絡める形で出題される可能性も高いと見ています。(逆にいうと、地域コミュニティ関係の対策をしていれば、孤独・孤立対策について問われたとしてもある程度対応できることになります。)
⑧その他の福祉
以上の七つの論点が今回の予想の大本命ですが、もう少しだけ続けさせていただきます。
八番目は、「その他の福祉」関係の出題を予想します。「(その他の)」と付したのは、児童福祉については既に予想として上述しているからです。
具体的には、自治体職員の仕事としてボリュームの大きい障がい者福祉、高齢者福祉あたりの出題を想定しています。とりわけ、地域企業における障がい者の雇用について出題される可能性もあります。「障害者雇用促進法」の改正があったことなど、最近になって注目を集めていることが予想に至った理由です。2022年の障害者の雇用率は、全国的には法定雇用率(2.3%)をわずかに下回っていることなども答案作成のネタになりますね。
福祉領域の施策だと他に生活困窮者支援についても挙げられます。生活困窮者支援について問われる可能性はあり得ますが、とりわけ、生活保護制度については出題の可能性は低めだと考えています。特別区にも多数のケースワーカーが配置されているものの、国からの法定受託事務ということもあり自治体の裁量が小さく、試験問題として出題しづらいからです。
⑨地域産業(地域企業)支援
九番目の予想はこれまでに例が乏しいものですが、地域産業(地域企業)支援について出題されると予想します。地域産業については、23区の中にそれぞれ所掌課が存在しており、特別区の論文試験として出題があってもおかしくはなさそうですが、これまれにその例はあまり見られません。その理由は、中小企業支援は主に国(中小企業庁・各経済産業局)や独立行政法人(中小企業基盤整備機構)がその多くを担ってきたからだと考えられます。
それでも出題があり得ると予想するのは、全国的に産業に関するトピックが盛んであるためです。「スタートアップ」「地域ビジョン」といったキーワードのほか、「産後パパ育休」「育休取得率」等に絡めた労務的な意味合いからの出題も考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。実際に出題された場合に、答案作成のキーワードとして用いることができるものは赤字にしていますので、テーマ予想にくわえて、答案作成においても参考にしていただけますと幸いです。
論文対策の方法
特別区Ⅰ類の論文試験については、上述のとおり配点比重が極めて大きいと推察されていることから、必ず対策を行うべきです。
かといって筆記試験ほど大きな時間を要するわけではありませんので、こと特別区Ⅰ類(事務)の試験に限っていうと、最もコストパフォーマンスにすぐれる科目が論文試験です。
講座の受講・答案添削
手っ取り早い方法として推奨できるのは、「アガルートアカデミー」等のような公務員試験に強みのあるオンラインスクールの活用です。
アガルートアカデミーの論文対策講座であれば、単科的に教養論文等の講座や添削を活用できるため、特に推奨できます。講座は5時間程度で受講できる上、答案の添削も行うことが可能です。特別区Ⅰ類の論文とも相性がよいです。
論文試験対策における講座の受講は、論文の書き方の型を身につけるという目的において有効です。
時事的な知識のインプット
基本的な書き方を身に着けた上で、もう一つ、講座の受講や答案の添削と合わせて実施しておきたいのは、知識を仕入れておくということです。
完璧にしたい方は、各府省の公表する白書の類や、各区の区報等を読み込むことができればよいのでしょうが、コストパフォーマンスの観点からいうと、これはよっぽど時間が余っている限りおすすめできません。
最も推奨できるのは、「速攻の時事」の活用です。
「速攻の時事」のうち、本記事で掲げたものを始めとして、出題可能性の高い部分のみを抜粋して確認していくという作業が、特別区Ⅰ類の論文試験において有効です。
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また、そもそも教養試験においても時事の出題があるため、特別区Ⅰ類の事務区分を受験する方にとって「速攻の時事」は必携の書です。明日明後日に本試験が控えているというような状況でない限り、すぐに入手されておくことをおすすめします。