私は、地方公務員の後に国家公務員(総合職)となり、いずれも、職員として採用面接の面接官をした経験があります。特に国家公務員では、官庁訪問の原課面接を100回以上経験しました。
公務員に限ったことではありませんが、採用面接においてはいわゆる「逆質問」の機会が与えられることが多いです。すなわち、以下のようなものです。
逆に何か質問はありますか?
逆質問は、面接官の立場からすると、受験生から様々な質問を受けることがありますが、その中には悪い(評価の良くない)逆質問と、良い逆質問があると感じます。それぞれ解説していきます。
なお、国家公務員・地方公務員のいずれにも共通する内容として以下を記述しています。
悪い逆質問の例
まずは、悪い逆質問の例です。
「内定を頂けた場合、入庁するまでに何をしたらいいですか?」
最たる悪例は、
「内定を頂けた場合、入庁するまでに何をしたらいいですか?」
といったものです。まず、この質問をする受験生が多すぎます。テンプレート化しているのです。既に誰もが口を揃えてする質問になってしまっていますので、翻っていうと、面接官の立場からすれば、「またこの質問か」「あまり準備してきてくれなかったのかな」と感じてしまいます。
また、極端な自信家と捉えられかねないので、特に官庁訪問の1クール目等では完全に禁忌な質問です。
それに、そもそも公務員の仕事は基本的にはOJTですし、仕事は部署によって様々ですので、基本的には採用(入庁)後に業務を学んでいくものです。入庁するまでにすべきことといえば、めちゃくちゃしいていえば行政に関する本を読んだり、自治体であれば地域のボランティアに勤しんだりといったことになるのでしょうが、基本的には学業、趣味、旅行、交遊等の学生のうちにしか打ち込めないことに時間を費やすべきです。
とはいえ、本当に熱心な性格の方で、時間を持て余している上、内定を貰えることがほぼ確定しているようなシチューションであれば、この質問をすることもOKですが、「〇〇の事業に関心があるが、何か入庁するまでに勉強しておくとすれば、どのような本、または資料を見れば良いですか?」というような、具体性の高い聞き方にすべきです。
「趣味の時間はとれますか?」「給料はどれくらいですか?」
続いて、一目でNGだと分かるかもしれませんが、実際に面接官として受けたことがある質問として、以下のようなものがあります。
「ワークライフバランスは充実していますか?」
「給料はどれくらいですか?」
このような質問は、やる気が乏しいと思われたり、待遇面にばかり興味があるのだと思われたりするおそれがあります。
一方で、一人の人間として幸せでなければ良い仕事は出来ません。どうしても福利厚生について聞きたい場合は、「ワークライフバランスは充実していますか?」といった聞き方が望ましいです。ただし、基本的に公務員の福利厚生や給与は、国家公務員であれば一般職給与法や人事院規則に、地方公務員であれば当該自治体の条例や規則に規定されており、さらに公表されていますので、自身で調べることが可能であり、このような質問自体がナンセンスです。尖っている面接官であれば、「自分で調べる能力が高くないのかな」という印象を抱かれかねません。
採用パンフレット等に載っている情報
官公庁は思った以上に多くの情報を公開していますので、透明性の高い情報について聞いてしまうと、「あまり調べてくれていないのかな」と思われかねません。少なくとも採用パンフレットや、自治体であれば当該自治体の基本計画くらいには目を通しておくことが望ましいです。
「仕事で気を付けていることは何ですか?」
逆質問というのは、基本的には調べてきたことを披露する機会です。それを、たとえば、単に
「仕事で気を付けていることは何ですか?」
「仕事で気を付けていることは何ですか?」とだけ問うのは、機会損失です。ざっくりとしすぎな質問は、「あまり事前に調べてきてくれなかったのかな」「本気じゃないのかな」と思われかねません。
この質問をすること自体はOKですが、必ず自身が調べてきたことや、自身の考えを添えた上で質問すべきです。
たとえば厚生労働省の面接の場合であれば、以下のようにシチュエーションを限定したり、自身の考えを提示して議論の端緒としたりするような聞き方が望ましいです。
「厚労省社会・援護局の業務に興味があります。生活困窮者支援や生活保護は国民の最後のセーフティネットですが、霞が関にいるだけではなかなか現場の状況を正しく理解できないというギャップもあるのではないかと考えます。このギャップを埋めるために、どのようなことに留意されていますか?」
この質問であれば、中には「霞が関で仕事をしていると現場と乖離が生じるとは限らない」と真っ向から反論する面接官もいるかもしれません。ただ、積極的に意見を提示する姿勢は、少なくとも官庁訪問においては評価されます。そもそも受験生は多くの場合仕事をした経験が無いのですから、職員と比して社会感覚が乏しいことくらいは面接官も承知です。それよりも、限られた時間の中で、積極的な姿勢を見せられるかどうかが重要です。
良い逆質問の例
それでは、良い逆質問とはどのようなものでしょうか。
準備してきたことが分かるもの
上述しましたが、とにかく、逆質問は事前に志望先について調べたことを披露するチャンスですし、面接官もそれを期待しています。たとえば基礎自治体(A市)の採用面接の場合、以下のような質問であれば、事前に最低限のことは調べてきたり、自分なりに考えてきたりしていることが分かるような好例と言えます。
「A市は、B県の中で最も高齢化率が高く、就労人口の少なさが課題であると聞いたことがあります。今後、A市に若い人を呼び込むためには、どのようにすれば良いか、お考えを教えていただけますでしょうか?」
「A市は、観光名所の〇〇や△△を擁することが強みであると考えておりますが、それによる市内のインバウンド消費を刺激するためには、市としてどのような対策を執るべきなのでしょうか?」
また、以下のように、特定の説明会に参加していなければ知り得ない情報等を話のタネとするような逆質問もまたGOODです。面接官も安心します。
「〇月の業務説明会で、△△課の□□課長補佐が、対人能力の高い人材が欲しいとお話しされていました。対人能力にも様々な種類があると考えますが、具体的などのような能力が必要とされるのでしょうか?」
このように実際の説明会を引合いに出す場合、実際に説明を行っていた職員の課名や個人名を出すことも良いです。人事課の立場からすれば、「時間をかけて説明会をした甲斐があった」「聞いてもらえててよかったな」と安心するものです。
志望度が高いことが伝わるもの
官公庁は、内々定を辞退されることをとても懸念しています。特に採用人数枠の少ない小規模自治体等ではそれが顕著です。あるいは人気の高い中央省庁の官庁訪問においても、他官庁や民間企業に人材を取られ、内々定を辞退されるおそれを懸念していることは同じです。
そうすると、以下のような質問は、先方に本気度が伝わりますので、良い印象を与えます。(以下は〇〇省の官庁訪問と仮定します。)
「差し支えなければ教えていただきたいのですが、本日の〇〇省の官庁訪問には、何名くらいが訪問に来ているのでしょうか?どうしても〇〇省で仕事をしたいと考えているのですが、人気が高いと聞いたことがあり、少し心配しております…。」
「問題なければ教えていただきたいのですが、私は民間企業で四年間働いていましたので、他の志望者よりも年齢が高めです。〇〇省では、このように年齢が高めの者を採用したことはあるのでしょうか?」
ただし、自治体等では採用面接の採用倍率はそもそも公開されていることも多いですので、公開されている情報はなるべく事前に自身でキャッチしておき、質問するにしても採用倍率そのものを質問するのではなく、以下のように、それを材料とするような逆質問とすることが望ましいです。
「A市の二次面接の倍率は約3倍であり、これは近隣自治体と比較してもかなり高い水準にあると存じます。このように人気なA市において、採用の決め手は何なのでしょうか?どのような人材が望ましいのでしょうか?」
まとめ
以上です。また、逆質問においてはTPOも大事です。たとえば、相手の役職や部署、官庁訪問であれば「原課面接か人事面接か」等によって逆質問を使い分けられればよりベストです。