特別区Ⅰ類の職員採用試験では、申込時に志望する区を三つ選ぶ必要があります。そして、その際に選択した三つの区は、それ以降は基本的に変更することはできません。その後40年間に及ぶ公務員生活を、その一瞬で決めることになり得るため、ものすごく重要な決断となりますが、特に地方出身の受験生の場合には、23区各区にどのような特色があるかなどのイメージは浮かびにくいというのが本音だと思います。
この記事では、特別区Ⅰ類の志望区を選んだり、志望動機を立てたりする上で役に立てていただくため、行政という側面で見た場合の東京23区の特色をお伝えします。
説得力のある志望動機、志望区の選択の仕方とは
受験戦略という切り口で考えた場合に、三つの区を選ぶにあたっては、何らかの「軸」が必要となります。筆記試験に合格した後に行われる特別区人事委員会による面接試験や、各区において実施される採用面接においては、「なぜその三つの区を選んだのですか?」といった質問を受ける可能性が高いです(実際に、私も受験生時代には同じ質問をされました。)。そこで、そういった場面に対応ができるような理由に基づいて三つの区を選択したり、志望動機を作成したりする必要があるのです。
たとえば、理屈に適った志望区選択及び志望動機の例として、以下のようなパターンが考えられます。以下の緑色下線部のように、「軸(すなわち志望動機)」に基づいて、三区を選択することが望ましいです。
- 人口の集中する東京23区において、家族世帯の子育て支援に関わりたいと考えたことから、家族世帯が多く、これらの施策が充実している「世田谷区、中野区、杉並区(ほかに豊島区、文京区、足立区、江東区、葛飾区等)」を志望しました。
- 首都東京の産業政策に関わりたいと考えたことから、企業や大規模施設が集中する「港区、中央区、千代田区」を志望しました。
- 葛飾区で生まれ育ったが、今後も東京の下町に住み、そのまちづくりに携わっていきたいと考えたことから、「葛飾区、墨田区、荒川区(または江戸川区)」を志望しました。
- 首都東京の観光政策に関わりたいと考えたことから、観光資源の豊富な「台東区、新宿区、墨田区(ほかに豊島区、渋谷区等)」を志望しました。
- 学生時代に社会福祉政策を専攻していたため、自治体の生活困窮者支援施策や生活保護行政に携わりたいと考えたことから、被保護者の多い「台東区、足立区、葛飾区」を志望しました。
- 少子高齢化社会の中で、首都東京の高齢者福祉に携わりたいと考えたことから、お年寄りの多い「北区、足立区、葛飾区」を志望しました。
- 防災政策に関心があるため、東京23区の中でも特に災害リスクの高い「墨田区、江東区、荒川区(ほかに葛飾区、大田区、板橋区、江戸川区等)」を志望しました。
以下に、東京23区の行政上の特色を記していきますので、どのような軸を基に志望動機を立てるか、志望区を決めるかといったことを念頭に置いていただき、少しでもご助力になれば幸いです。
千代田区の特色
- 人口:6.9万人(23番目)
- 面積:11.66km2(19番目)
- 人口密度:0.57万人/km2(23番目)
まずは、千代田区についてです。基礎データに示したとおり、人口と人口密度が23区内で最も少ないです。面積も小さいですが、皇居や中央省庁、東京駅等が所在するのが中央区であり、日本の中枢といっても過言ではないかもしれません。23区の中でかなり目を引くところです。
東京23区は、都区財政調整制度により所要の金額を都から交付されることになるため、自治体の財政力という点では、各区の間に大きな乖離はありません。とはいえ、その中でも千代田区は財政力も強く、詳述しませんが、地方自治体の財政力を示す指数である「財政力指数」も良好です。コロナ時代には、国が全国民に対して一律に金額を支給することがありましたが、千代田区は、区独自の施策として、更に全区民に金額を支給したことが話題を呼びました。
また、財政的にも、文化的にも、都市機能的にも23区の中で高い水準であるためか、かつては「23区を抜けて独立の市とする」といった議論で出ていたこともあります。
一方で、昼間人口は高いですが人口はかなり少ないです。人口密度は断トツで23区中の最下位となっています。また、あまり意識されない点ですが、生活保護受給率(保護率)は極めて低いです。これらのことから、千代田区は基礎自治体でありながら福祉行政や地域まちづくり行政は比較的盛んではないといえるでしょう。千代田区に採用された場合、たとえば生活保護のケースワーカーを確率する可能性はかなり低いです。
また、このサイトでは、特別区職員として最も出世しやすい区がどこであるかを考察したことがありますが、その中で千代田区はトップクラスに出世しやすい区であると結論づけています。よろしければご覧ください。
中央区の特色
- 人口:18.1万人(22番目)
- 面積:10.21km2(21番目)
- 人口密度:1.8万人/km2(11番目)
続いて、中央区についてです。千代田区と同様に、絶対的な人口や面積は小さいですが、高級店が立ち並ぶ銀座や、古くから知られる築地を擁するため存在感があります。
一方で、絶対的な人口こそ少ないですが、人口密度は23区で中位となっています。中央区の中でも、勝どきや晴海エリアにはタワーマンションが多く建設されており、生活感もある区です。地価は高いため、生活感のある区の中でも港区に次いで高所得者が多い印象です。
もう一つの性格として、月島、勝どき、晴海等のエリアはもともと東京湾を埋め立てて造られた土地であり、液状化等の災害リスクが高いという顔も持っています。それゆえ防災行政が課題となっています。水害のハザードマップを見れば、中央区の大部分が真っ赤(災害リスクの高い地域)になっていることが分かります。
また、自治体としての財政力も良好です。その理由は、絶対的な人口が少なく歳出が抑えられている一方で、中小企業の集積により法人住民税が潤沢である点にあると考えられます。
港区の特色
- 人口:26.8万人(17番目)
- 面積:20.36km2(12番目)
- 人口密度:1.3万人/km2(11番目)
港区のキャラクターは明確で、首都東京の「産業の拠点」ということになろうかと思います。新橋エリアや虎ノ門エリアには、有名企業のオフィスが立ち並んでいます。それに伴って、産業政策が港区の行政上の目玉の一つとなっています。
一方で、赤坂や芝等の「高級住宅街」が多くある区としても有名です。ある統計では、東京23区の中で最も平均世帯収入が高いのが港区とされています。
かと思えば、東京タワーやお台場(の一部)があるのも港区であり、産業、生活、観光といった資源がすべて揃っているとも言えると考えます。
自治体の財政については色々な見方がありますが、港区のように大手企業の本社が多く所在しているような場合は、必然的に租税収入も高くなるため、財政状況も良好なことが多いです。
新宿区の特色
- 人口:35.5万人(12番目)
- 面積:18.22km2(13番目)
- 人口密度:1.9万人/km2(8番目)
続いて、新宿区もまた23区の中で存在感のある区です。
JR、都営線、メトロ、小田急等を利用できる新宿駅は交通の要衝となっていますし、それを中心に繁華街が形成されています。少し歩いたところにある歌舞伎町も有名ですね。集まる人が多いので、街は雑多ですが、「東京」らしいとも言えると思いますが、地方出身の方からすればその雰囲気を苦手に感じる方もいらっしゃると思います。
このように新宿駅の繁華街のイメージが強いですが、神楽坂のようなお洒落で落ち着いた街や、飯田橋や西新宿のように生活感のある街もあります。
ちなみに、行政という観点でいえば、東京都庁(以下の写真の建物で有名)があるのも新宿区ですね。
文京区の特色
- 人口:24.7万人(18番目)
- 面積:11.29km2(20番目)
- 人口密度:2.2万人/km2(4番目)
文京区は、全体的に高貴で落ち着いたイメージのある街です。地価が高く、都民からすれば憧れの場所が多くあります。
データから見ると、面積は少ないですが人口密度は高く、特に子育て世帯が多く住んでいます。必然的に家族を対象とした施策にリソースが多く割かれていることになります。
また、一つの特徴として、面積は小さいにもかかわらず大学の数がとても多いということがあります。千代田区も大学の数は多いと言われますが、文京区の本郷には東京大学のほか有力大学が多く所在しており、文京区は大学の街といった言われ方をすることもあります。行政から官学連携に取り組みたいといった志望動機であれば、文京区や千代田区が志望区として筆頭に上がります。ただし、東京23区は、地方創生の理念に基づき、学部・学科の定員が増やせないように規制がかけられていたりするなどの特徴もありますので、その点には留意しておきたいです。
台東区の特色
- 人口:22.2万人(20番目)
- 面積:10.11km2(23番目)
- 人口密度:2.2万人/km2(3番目)
台東区も特徴が明確な区です。まず基礎データが特徴的で、絶対的な人口と面積は小さいですが人口密度はかなり高いです。
台東区のイメージといえば、第一に思い浮かぶのは浅草の浅草寺や、上野の上野動物園といった観光資源ではないでしょうか。行政としても観光政策に注力していることは間違いないです。浅草と上野は、観光客でいつも賑わいを見せています。
もう一つの特徴として、これは意外に思われるかもしれませんが、23区の中で保護率(生活保護受給率)が最も高くなっています。日本には三つの「ドヤ街」があります。大阪のあいりん地区、横浜の寿町、そしてもう一つの山谷は台東区にあるのです。これが台東区の保護率を高めている理由です。南千住駅を少し南に行ったところが山谷地区ですが、観光客で賑わう上野や浅草とはまったく異なる雰囲気を持っている独特な街です。
反対に、ファミリー世帯はあまり多く住んでいないという印象を受けます。
墨田区の特色
- 人口:28.3万人(16番目)
- 面積:13.77km2(17番目)
- 人口密度:2.1万人/km2(6番目)
墨田区といえば、まず思いつくのは押上駅にあるスカイツリーではないでしょうか。スカイツリーのあるソラマチは国内外から観光客が押し寄せています。また、同じく東京屈指の観光地である浅草は台東区ですが、墨田区の本所吾妻橋駅やとうきょうスカイツリー駅からも徒歩圏です。
一方で、スカイツリーが出来るまでの墨田区は、東京の下町を成す区の一つで、落ち着いた街でした。スカイツリーは電波塔や地域防災としての役割を担っており、周囲に高い建物が無く、災害に弱い街である押上が最終的に選ばれたという話もあります。スカイツリーのある押上駅よりも北側のエリアは住民が暮らす下町といった雰囲気です。
また、上述のとおり、災害に極端に弱いという特徴も持ち合わせています。1923年の関東大震災の際に最も多く亡くなられた方を出したのは墨田区南部のエリアでした。現在も、区内には海抜ゼロの地域や木造住宅の密集地域など、防災の観点から課題を抱えた地域が多くあるため、災害対策は墨田区が注力する施策の一つです。
ちなみに、以下の写真は目にしたことがある方も多いと思いますが、向かってスカイツリーの左にある青い建物が墨田区役所庁舎です。(スカイツリーの右にある建物はアサヒビールの本社です。)
江東区の特色
- 人口:53.8万人(8番目)
- 面積:42.99km2(6番目)
- 人口密度:1.3万人/km2(21番目)
江東区は、ここ数十年でどんどん株をあげている区です。豊洲エリア等を中心に再開発が進み、タワーマンションが立ち並ぶようになり、随分とその景色も変わりました。清澄白河周辺にはアーティスティックな雰囲気がありますし、再開発に伴ってお洒落なカフェ等も増えました。ただし、タワーマンションが立ち並ぶ地域は地盤が軟弱であり、液状化のリスクが極めて高い地域でもあります。このような防災行政上の課題があるのです。
東京23区には、各区を表象するような観光地が所在している場合も多いですが、江東区の場合、少なくとも私の場合には特に思い浮かぶものはなく、あくまで「住む街」としての魅力が都民に評価されているといった印象があります。行政といった視点で見た場合、基本的には子育てを始めとした福祉政策に強みがある街と言って差し支えないと考えます。
また、上掲の「特別区職員として最も出世しやすい区はどこか」の記事において、江東区は職員に占める管理職の割合が高く、23区中3位となっています。
品川区の特色
- 人口:42.6万人(10番目)
- 面積:22.85km2(10番目)
- 人口密度:1.9万人/km2(9番目)
品川区もまた、23区の中で屈指の地価が高い街です。居住者の所得が高く、総じて治安が良いです。
都民からすれば有名な話ですが、東海道・山陽新幹線へ乗り継ぐ品川駅は、実は住所上は品川区ではなく港区高輪にありますので、注意してくださいね。同様に、都内でも有名なマクセルアクアパーク品川も、住所は港区となっています。また、余談かもしれませんが、品川区にはもう一つ水族館(しながわ水族館)がありますので、一つの区に二つの水族館があるという特徴があります。
水族館のあるエリアには観光者も多く来ますが、大井町を始め、基本的には高所得者が静かに暮らしている街によって形成されています。
目黒区の特色
- 人口:28.7万人(15番目)
- 面積:14.67km2(16番目)
- 人口密度:2.1万人/km2(6番目)
目黒区は、23区の中でも洗練された洒脱な街なイメージがあります。中目黒等は、東京に住んだことが無くても耳にしたことくらいはあるという方も多いと思います。地価が高いため、所得の高い方が多く住んでいる印象があります。その点では港区と同じですが、港区は新橋や湾岸エリアのようなオフィス街も多く形成されているのに対して、目黒区は純粋に高所得のファミリー等が多く住んでいるという違いがあります。
以上から、必然的に、区の施策についても、特に家族世帯等を対象にしたものに注力しているといえます。
また、行政上の一つの特徴として、女性が多く住んでいるというものがあります。上述のとおり区のイメージが良いことに起因しているのかもしれません。東京23区の男性・女性比率を計算した場合、そのトップになるのは港区か目黒区のいずれかです。
大田区の特色
- 人口:74.9万人(3番目)
- 面積:61.86km2(1番目)
- 人口密度:1.3万人/km2(22番目)
大田区は23区の中でもキャラクターが際立っています。
行政上の特徴として、面積が61.86km2であり、23区の中で最も大きくなっています。その分、採用された場合の勤務地となり得る範囲も他の区よりは広くなります。区職員は、常に本庁舎に勤務するだけでなく、分庁舎や図書館等の出先機関にも勤務する場合があるからです。
また、最たる特徴は、羽田空港が所在するのが大田区ということではないでしょうか。23区の中で空港があるのは、当然に大田区のみとなっています。航空行政自体は基本的に国(国土交通省航空局等)の所掌ですが、その近隣に暮らす住民の生活を支えるのは大田区役所の仕事です。他区と大田区の仕事を差別化することができる理由の一つが羽田空港の存在になります。
住民のキャラクターやイメージについては、隣にある品川区よりも大衆感のある街です。
また、23区の最南部に位置しており、神奈川県川崎市に面しています。行政としても、川崎市とは共同して行っている事業等もあります。見落とされがちですが、23区の中で政令指定都市と関わりが大きい自治体は、大田区くらいかと思われるため、差別化できるポイントの一つになり得ます。
また、上述の「特別区職員として最も出世しやすい区はどこか」の記事において、大田区は職員に占める管理職の割合が高く、江東区と並んで23区中3位となっています。
世田谷区の特色
- 人口:94.3万人(1番目)
- 面積:18.22km2(2番目)
- 人口密度:1.9万人/km2(14番目)
世田谷区は、ここ数十年で大きく印象が変わった街です。昔は辺鄙なイメージがつきまとったそうですが、今では高級住宅街が集う区という印象が先行するはずです。たとえば東京屈指の高級住宅街である成城は世田谷区に位置しています。
世田谷区の特徴も明確で、人口数が23区内でトップとなっています。特にファミリー世帯が多く居住しているため、子育てや地域づくりに係る施策に強みを持っています。現に、世田谷区は待機児童がゼロというデータもあります。
特に目立った観光地などは無く、静かで落ち着いた街が広がります。ベッドタウンとしての性格が強いため、そういった意味では「23区らしくない」とも言えるかもしれません。
また、東京23区の中でも西部に位置しています。世田谷区に限らず、東京23区では東部ほど標高が低く地盤も軟弱であるのに対して、西部では標高が高めで地盤も強固になります。総じて災害のリスクは東京東部よりも小さくなるため、基礎自治体である以上防災行政は重要ですが、その意識は東部の区ほどは高くないと言えます。
渋谷区の特色
- 人口:24.5万人(19番目)
- 面積:15.11km2(15番目)
- 人口密度:1.7万人/km2(15番目)
渋谷区は、一言でいうと若者の街です。「ハチ公」のある渋谷駅周辺が目立ちますが、あの原宿も渋谷区内です。全国から人が集まるため昼間人口は多いですが、定住人口は少なめです。人が住む街というよりは、人が集まる街という表現が似つかわしいです。その意味では全国の基礎自治体の中でも極めて珍しいですが、「東京らしい」とも言えるかもしれません。
定住人口向けの施策がやりたいのであれば他の区を志望すべきですが、東京の顔の一つでもある渋谷区でしか出来ない仕事もあることも事実です。ここが特別区における志望動機の立て方における大きな分かれ道となります。すなわち、渋谷区、新宿区のように、首都東京において華やかな賑わいを見せる区を志望するか、世田谷区や練馬区、中野区、下町区のような落ち着いた区を志望するかといった大きな選択があるということです。
また、渋谷区役所の特徴として、職員の働き方という点で23区の中でも先進的な事例を多く持つという印象があります。たとえば庁内におけるITの導入については、他の区の一歩先を行っていました。
また、青山学院大学の青山キャンパスがあるのも渋谷区です。特別区Ⅰ類は同大学の出身者も多いですが、渋谷区役所は青山学院大学の卒業生も多く入庁していることで有名です。
中野区の特色
- 人口:34.9万人(13番目)
- 面積:15.59km2(14番目)
- 人口密度:2.3万人/km2(2番目)
中野区については、中野駅のアーケードの辺りは賑わいがありますが、それを除けば基本的に落ち着いた人の住む街です。中野区の魅力は、そのアクセスではないでしょうか。多数路線が使用可能な新宿へのアクセスが良好なので、新宿を経由して都心部にも郊外にも移動し易く、ベッドタウンとしての性格が強いです。
それゆえ人口密度も高いです。また、タワーマンションが立ち並ぶというよりは、アパートや戸建ての建つエリアも多く、一人暮らしの若年層や、共働きのファミリー等から人気のある街です。
最近は、中野駅前の複合施設だった中野サンプラザが閉館し、新たに「サンプラザの森」の建設が進むなどしており、再開発が進む勢いのある街です。人口密度も23区中2番目に高くなっています。
杉並区の特色
- 人口:59.2万人(6番目)
- 面積:34.06km2(8番目)
- 人口密度:1.8万人/km2(13番目)
杉並区の印象は、世田谷区と似ています。目立つ観光名所や大型施設等はありませんが、人が住む街としてのブランドに長けた街です。永福、善福寺のような、東京でも魅力的とされる高級住宅街を数多く擁しています。
ある調査では23区内で犯罪発生率が最も低いというデータもあり、治安がよく静かな街としての魅力があります。この点においても世田谷区と通じるところがありますので、東京西部を志望する方は、杉並区と世田谷区をセットで志望されるという方も多いです。
豊島区の特色
- 人口:30.7万人(14番目)
- 面積:13.01km2(18番目)
- 人口密度:2.4万人/km2(1番目)
豊島区といえば、とにかく「池袋」ではないでしょうか。新宿や渋谷に次いで、若年層を中心に人が集う街です。人によっては、雑多でガヤガヤしているとも感じると思います。
昼間人口のみならず住基上の人口も多いため、人口密度は23区の中で最大となっています。池袋のイメージが強いですが、ファミリー層を始め多くの人が住む街という顔も持ち合わせています。また、意外に思われるかもしれませんが、人口密度が23区中最大でありながら、豊島区は子育て政策に注力しており、待機児童ゼロを達成しています。23区で待機児童ゼロを達成している区は、ファミリー層への支援が厚いことで知られる世田谷区のほか、目黒区、杉並区、千代田区、板橋区…等がありますが、メトロポリタンな豊島区でそれを達成しているというのは意外ではないでしょうか。
また、これは余談ですが、豊島区役所は庁舎の形が特徴的で面白いです。大規模施設の中に、区役所庁舎と集合住宅と垂直型庭園(!?)が併設されており、建物の形自体も以下の写真のように特徴的です。
北区の特色
- 人口:36.1万人(11番目)
- 面積:18.22km2(11番目)
- 人口密度:1.8万人/km2(12番目)
北区については、23区の中では落ち着いた街といった印象です。赤羽のあたりは栄えていますが、そのほかのエリアは静かな場所が多いです。
行政上の特徴としては、23区の中でトップクラスに高齢化率が高いということです。かつては23区の中で最も高齢化が進んでいるといわれていたこともありました。とはいえ、全国平均と比較した場合にはむしろ若年層が多いということになりますが、23区内の比較では、かなり高齢化が進んでいる部類になります。
志望動機を立てる上で、高齢者福祉を軸に据えたいといった場合には北区が有力な志望先になり得ますが、その場合、そもそも「高齢者福祉に携わりたいのになぜ特別区を志望したのか」といった質問にも答えられるようにしておく必要があります。
また、都民の中には北区は目立たない存在だと感じる人もいるのかもしれませんが、個人的には、職場としての北区についてはかなり注目しています。このサイトでは、以下の記事において、23区の職場としての評価をランキング化したことがありますが、北区は、その中でトップに輝いています。有休消化率等が23区中1位となっており、23区の中でもワークライフバランスが充実している職場であるとも考えられます。
荒川区の特色
- 人口:22.1万人(21番目)
- 面積:10.16km2(22番目)
- 人口密度:1.9万人/km2(21.8番目)
荒川区は、東京の下町を形成する区の一つです。東京都交通局が事業主体として運営している都電荒川線は、東京都に現存する唯一の路面電車ですし、どこか昔懐かしい街並みが続いています。都心に近い自治体でありながら、下町のレトロな雰囲気のある街です。近隣の墨田区や葛飾区も下町ですが、荒川区は超有名な観光名所も少ないため、より落ち着いた雰囲気があって、個人的には大好きな街です。
私は地方出身ですが、町屋の辺りはどこか地元に似た雰囲気があり、たまに遊びに行きたくなります。
荒川区の行政上の課題の一つは、防災にあります。荒川が近いことから荒川区の辺りは地盤が脆く、それに加えて、古くからの木造家屋が密集しているため、有事の際の火災のリスクも高いです。
また、東京都のドヤ街である山谷は台東区にありますが、荒川区は山谷から徒歩圏内にありますので、その影響もあってか保護率はやや高めとなっています。
板橋区の特色
- 人口:58.9万人(7番目)
- 面積:32.22km2(9番目)
- 人口密度:1.9万人/km2(10番目)
板橋区は、基本的には住宅街からなる区です。観光名所や大規模施設は乏しく、悪く言えば印象は薄いかわりに、良く言えば落ち着いて暮らすことができる街といった印象です。
板橋区もまた、待機児童がゼロの区として知られており、共働き世帯が子育てしやすい街として評価されることがあります。その他、区が独自で行っている施策も多いため、子育て支援を軸に据えて志望動機を作る方は、板橋区役所を希望するかどうかにかかわらず、その施策は調べておくと役に立つことがあるはずです。
練馬区の特色
- 人口:75.6万人(2番目)
- 面積:48.08km2(5番目)
- 人口密度:1.6万人/km2(16番目)
練馬区は、基本的には住民が穏やかに暮らす街です。人口は23区内で世田谷区に次いで2番目に多くなっています。
観光地や施設は特に目立つものはありませんでしたが、豊島園跡地にハリー・ポッターのスタジオ施設ができてからは時折話題に上がるようになった印象です。
そのほか、超有名な高級住宅街等は思いつきませんが、しいて特徴をあげるならば、そのアクセスの良さでしょうか。西武池袋線、大江戸線、有楽町線、副都心線の駅が所在しているため、都内外へのアクセスが良好です。
また、職場としての特別区といった観点では、上掲の「特別区職員として最も出世しやすい区はどこか」に記したように、23区の中で最も管理職の割合が低いことが挙げられます。
足立区の特色
- 人口:69.9万人(4番目)
- 面積:53.25km2(3番目)
- 人口密度:1.4万人/km2(20番目)
足立区も、東京らしさを感じるところは少なく、基本的には人が穏やかに住む街です。23区の中でも「バンカラ」・「大衆」といったイメージのある区です。かといって、荒川区や葛飾区、墨田区、江戸川区のような下町感のある大衆区とはまた別の雰囲気があります。
かつては、23区の中で最も犯罪発生率が高いなどといったマイナスイメージがありましたが、現在は払拭されてきているようです。定量的なデータからいえば、住民の平均所得は23区内の中で最も低い水準にあり、逆に保護率は台東区に次いで高水準にあります。したがって、区の人的リソースも福祉等の民生部門に比重が置かれていることになります。
そんな足立区ですが、上掲の「23区のうち職場として評価が高いのはどこか」では、足立区は23区中4番目に位置しています。特別区の職場としての魅力は、区のブランドイメージや住民の所得水準なんかではなく、対面で住民を支援することのやりがいにこそあるのではないでしょうか。足立区の職員からの評価が高いことが、その証左となっていると考えます。
葛飾区の特色
- 人口:45.7万人(9番目)
- 面積:34.8km2(7番目)
- 人口密度:1.4万人/km2(19番目)
葛飾区は、一言でいうと東京の下町です。隣の墨田区はスカイツリーができてから少し雰囲気が変わりましたが、葛飾区は下町感を凝縮したような街です。それを象徴する柴又帝釈天には観光客で賑わいを見せています。新宿や渋谷、池袋等とはまた違う東京の魅力がある街です。
行政上の課題は、荒川に隣接している葛飾区は地盤が弱く、さらに、下町ゆえに木造住宅が多く、地震発生時の火災のリスクも高いことです。
また、北区と同様に23区内での高齢化率がトップクラスに高いという特徴もあります。
江戸川区の特色
- 人口:69.2万人(5番目)
- 面積:49.9km2(4番目)
- 人口密度:1.4万人/km2(17番目)
江戸川区もまた、葛飾区ほどではありませんが東京の下町で、基本的には人が穏やかに住む街です。ファミリー向けの施策も充実しています。一方で、観光としての見所(詳細は下述)もあり、自治体としてのバランスのある街です。立地的には23区の最東南端に位置しているため、千葉県と隣接しています。
さて、この記事で江戸川区について必ず説明しなければならないのは、特別区Ⅰ類の採用試験において、江戸川区は独自採用方式を採っているということです。すなわち、「受験申込みの際に、江戸川区のみを希望し、合格した方を採用する」というものです。これは江戸川区を特に強く志望する受験者を採用したいという理由に基づいています。したがって、江戸川区を志望する場合は、上述の「軸に基づいて三つの志望区を決定する」という手法はあてはまりません。あくまで、「なぜ江戸川区に行きたいか」をピンポイントに考え抜く必要があります。
この記事は観光名所をおすすめする趣旨のものではありませんが、最後に、私が関東圏で最も好きな水族館である「葛西臨海水族園」の写真を掲載して、この記事を終えたいと思います。
江戸川区の葛西臨海水族園・葛西臨海公園は、23区にありながら都心の喧騒を忘れることのできる、おすすめの場所です。