公務員には様々な手当が支給されますが、そのうち最もよく知られるものの1つが「地域手当」だと思います。地域手当は、地域における業務の特殊性、困難性等を考慮して支給される手当です。よく知られている手当である一方で、正しく理解されていないことも散見されますので、この記事を書くこととしました。
前半部分は基本的なお話になるかと思いますが、お付き合いいただけると幸いです。
なお、本記事では主に国家公務員の制度をベースに解説しますが、地方公務員においても同様の制度設計を採っていることが多いため、参考になることと思います。
支給割合・支給額
一言でいえば、基本的に地域手当は、地域に応じて3~20%の支給割合を給料(俸給)に乗じて得た額が支給されます。
「支給割合」は地域ごとに定めらていて、例えば東京23区であれば最大の20%となり、京都市・福岡市等では10%と定められています。各地域における支給割合は人事院規則9-49の別表第一に規定されています。今回、同規則を基に、以下のとおり3~20%のそれぞれの支給割合に該当する地域をまとめましたので、必要であればご参照ください。ただし、以下はすべて国家公務員の地域手当の支給割合です。地方自治体における地域手当の支給割合は国に準じていることが多いですが、例えば茨城県取手市のように、国基準のものとは別の支給割合を採用している場合もあるため、地方公務員の場合は各自治体のHP等で確認するのが確実です。
地域手当支給割合が20%の地域一覧(押すと開きます。以下同じ。)
地域手当支給割合が16%の地域一覧
地域手当支給割合が15%の地域一覧
地域手当支給割合が12%の地域一覧
地域手当支給割合が10%の地域一覧
地域手当支給割合が6%の地域一覧
地域手当支給割合が3%の地域一覧
また、「給料(俸給)」と「給与」の違いを知らない方もいらっしゃるかと思いますので、それぞれの語を整理すると以下のようになります。
- 給料(俸給):1か月ごとに支給される、給与のベースとなる金額のこと。各手当の金額を含まない。金額は一般職給与法(地方公務員ならば給与条例)の俸給表等に定められている。
- 給与:給料(俸給)に対して、地域手当、住居手当、扶養手当等の各手当を加算したもの。
例えば、東京23区内に勤務しており「給料」が毎月30万円支給される職員がいる場合、23区における支給割合20%をこれに乗じた6万円が「地域手当」として支給されます。したがって、その他の手当が支給されていないと仮定すると、この職員の給与は「36万円」ということになります。
地域手当は単に給料月額に係るだけではない
先ほど、地域手当は「基本的に地域に応じて3~20%の支給割合を給料に乗じて得た額が支給される。」と説明しました。ここが誤解されがちなところなのですが、地域手当は単純に給料月額に支給割合を乗じるだけではなく、更に、一部の手当にも支給割合が乗ってきます。正確には、地域手当は以下のものに対して支給割合を乗じた金額が支給されるのです。
- 給料(俸給)
- 扶養手当
- 俸給の特別調整額
- 専門スタッフ職調整手当
地域手当の月額は、俸給、俸給の特別調整額、専門スタッフ職調整手当及び扶養手当の月額の合計額に、(中略)割合を乗じて得た額とする。
一般職の職員の給与に関する法律 第11条の3第2項
このうち、①給料月額については上述のとおりです。「②扶養手当」、「③俸給の特別調整額」については職員によって支給の有無が異なりますが、多数の職員が支給対象となっているにもかかわらず、これらに対しても地域手当が支給されていることが、意外と知られていないのです。
「②扶養手当」に関して、子ども1人につき10,000円又は15,000円が支給されることとなりますので、23区内に勤務する場合は、扶養手当に係る地域手当として、2,000円(10,000×20%)又は3,000円(15,000×20%)が支給されます。
また、「③俸給の特別調整額」とはいわゆる管理職手当のことです。例えば本府省の10級課長級職であれば、俸給の特別調整額は139,300円が支給されます。したがって、これに係る地域手当として約27,000円もの金額が支給されることとなります。
なお、「④専門スタッフ職調整手当」については俗に言う専スタという職に該当する職員に支給されるものです。支給金額は大きいですが、支給対象となる職員数は少ないです。詳細は本記事では割愛します。
まとめ
- 地域手当の割合は3~20%
- 地方公務員の場合は国に準じていることが多いが、例外もある。
- 地域手当は、給料(俸給)だけでなく、扶養手当、管理職手当等の金額を基礎として算出される。