この記事では、意外とネットではあまり見かけない、国家・地方公務員の退職の具体的な方法や手続についてお話しします。
退職というとマイナスなイメージが付きまといがちですが、次のステップに進むため、あるいは心身を休めるためには必要になる場面もあると考えています。

現に、筆者は地方公務員と国家公務員の両方の退職歴があります。
退職の手続・方法
上司に直接退職の意向を伝える
退職にあたって、「退職願」を提出する必要のある役所がほとんどですが、
大抵の場合、退職願の様式は、職員が自由に入手できるようにはなっておりません。
たとえば、職員がそれぞれの電子端末使用するポータルサイトや掲示板等で共有していない場合がほとんどです。人事課が敢えてそのようにしていることが多いです。
そこで、ドラマや漫画である「上司の机上に退職願を叩きつける」ようなことは現実にはあり得ませんので、退職を決心した場合、直属の上司にその意向を伝えることが第一ステップになります。
直属の上司に引き留められる可能性が高いですが、最終的には個人の判断で退職を決めることになります。「それでも退職したい」と意向を伝えれば、その話が更に上や人事課に到達して、上司又は人事課から退職願の様式を入手できることになるはずです。
その、退職願の様式中に記入する日付(退職願を実際に書いて渡した日ではない)が、退職日ということになります。
退職を伝えるタイミングは
それでは、退職を伝えるタイミングについて、どれくらいの余裕を持って伝えればいいのかといった問題があります。
制度上
まずは制度を見てみましょう。
国家公務員の場合、「退職の何日前までに退職の意思を伝えなければならない」といったことは、国家公務員法や人事院規則等の法令において定めはありません。ただし、それぞれの役所の内部規程で、具体的に定めが置かれている場合はあります。
地方公務員の場合も、地方公務員法に規定はないものの、各自治体の規程や訓令として定められている場合があります。たとえば、以下のように、東京都や特別区(以下は世田谷区のもの)では、退職日の10日前までに退職願を提出する必要があるとされています。
東京都職員服務規程(昭和47年4月1日訓令第122号)
(退職)
第14条 職員は、退職しようとするときは、特別の事由がある場合を除き、退職しようとする日の十日前までに、退職願を提出しなければならない。
東京都Reiki-Base インターネット版
世田谷区職員服務規程(昭和47年5月15日訓令甲第6号)
(退職)
第14条 職員は、退職しようとするときは、特別の事由がある場合を除き、退職しようとする日前10日までに、退職願を提出しなければならない。
世田谷区例規類集(条例・規則集)・要綱集 | 世田谷区公式ホームページ
このように、役所にもよりますが、東京都や特別区等では、制度上に限っていえば、かなり直前の提出でも差し支えないとされているのです。
実際の運用
一方で、上司に対して「10日後に退職したいので退職願をください」というと、上司は困り果てると思います…。
公務員の人事は流動性が低いため、期中であれば期間業務職員や会計年度任用職員を任用することも不可能ではないですが、直ちに補充することは不可能です。
そうすると、最も職場に迷惑のかからないやり方は、その年度の最終日、すなわち3月31日に退職する旨を、その半年前、遅くとも10月頃までには上司に伝えるといった方法になります。
ただ、これは飽くまで職場側の都合です。
国民に経済活動の自由が保障されているように、仕事をやめるのは職場ではなく個人の権利として決定することです。
退職は少なからず周りに迷惑はかかりますが、嫌な顔をされるのはその瞬間だけです。今後の自身の都合を優先して、退職を申し出る勇気も必要だと考えています。
年次有給休暇の消費について
また、退職に当たって、全ての年次有給休暇を使い切ることは可能ですし、公務員も広義には労働者ですから、本来はそうすべきです。
たとえば、以下のように年次有給休暇を消費して退職することが可能ですので、ぜひ上司にその方向で相談すべきです。
前提として、以下の状態を想定します。
- 退職日:3月31日
- 残っている年次有給休暇:25日分
この場合、たとえば、以下の内容で退職することが可能です。
- 最終出勤日:2月28日
- (3月の営業日は全て年次有給休暇を充てる。)
もちろん年次有給休暇ですので、以上の場合も3月分の給与は満額で支給されます。
制度上
また、法的にも、年次有給休暇の消費について、上司(職場)は拒めない建付けになっていることが多いです。一方、上司(職場)は年次有給休暇のタイミングをずらしてほしいと要請する権利を有しています。いわゆる時季変更権です。
ただし、時季変更権は、以上の例のように、退職日と連結して使い切るような場合には、そもそも変更するための時季が無いことから、認められない(時季変更権を行使できない)とする見方が通説となっています。
実際の運用
実際にも、このように年次有給休暇を使い切って退職される方は結構いらっしゃるので、職場に伝えれば基本的に承認されるはずです。
期中の退職の場合、期末勤勉手当に注意
さて、退職日は3月31日に限らず、期中に設定することもできますが、期中に退職する場合には、期末勤勉手当との関係に注意したいです。
ここで、国家公務員の期末勤勉手当について定めている人事院規則9-40を引用します。
人事院規則9-40(期末手当及び勤勉手当)
(期末手当の支給を受ける職員)
第1条 給与法第十九条の四第一項前段の規定により期末手当の支給を受ける職員は、同項に規定するそれぞれの基準日に在職する職員(給与法第十九条の五各号のいずれかに該当する者を除く。)のうち、次に掲げる職員以外の職員とする。
(支給日)
第14条 期末手当及び勤勉手当の支給日は、別表第三の基準日欄に掲げる基準日の別に応じて、それぞれ支給日欄に定める日とする。ただし、支給日欄に定める日が日曜日に当たるときは同欄に定める日の前々日とし、同欄に定める日が土曜日に当たるときは同欄に定める日の前日とする。別表第三
e-Gov 法令検索:人事院規則9-40
基準日 支給日 六月一日 六月三十日 十二月一日 十二月十日
以上です。少し読みにくいですが、まとめると以下のようになります。
- 6月30日頃に支給される期末勤勉手当は、6月1日に在籍している職員に対して支給される。
- 12月10日頃に支給される期末勤勉手当は、12月1日に在籍している職員に対して支給される。
たとえば、このことを知らずに、5月末や11月末を退職日として設定してしまうと、非常にもったいないです。
地方公務員についても、各自治体の条例や規則において期末勤勉手当の基準日が定められていますが、国家公務員と同様の作りになっていることが多いです。
職場側も親切にこのことを教えてくれるとは限らないため、必ず把握しておきたい点です。
退職は人生においてマイナスではない
以上です。
記事の冒頭でも触れましたが、退職はその瞬間に限ればマイナスな印象がつきまとう場合もありますが、人生全体でみれば、一つの通過点に過ぎません。
公務員は、官僚組織において文書作成能力や調整能力、役所によっては応接能力等が養われているはずですので、基本的には民間企業においても重宝されます。
公務員の後のステップとしては、以下の記事で触れているように様々なものがあります。


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