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地方公務員の内定者や若手の方におすすめする本(書籍)3選

地方公務員の内定を得た方や、若手公務員の方向けの記事です。学生のうち(もしくは若いうち)には、今しかできないことに時間を投じるべき、すなわち遊んでおくべきというのが私の意見ですが、敢えて内定者や若手公務員向けに紹介すると考えた際に、おすすめできる書籍を3点ほど挙げてまいります。

目次

3位:『日本の地方財政』

まずは、神野 直彦・小西 砂千夫『日本の地方財政』(有斐閣、2020)を紹介します。地方財政制度については、地方公務員として身に着けるべき教養の一つだと考えています。自治体内で財政課に配属することはなくとも、各担当課の職員として予算要求(当初予算、補正予算)や決算委員会の対応、流用・転用等の事務に関わる可能性はかなり高いです。また、地方交付税交付金、国庫支出金は自治体内部の話というよりは、国・地方間の協働関係という話に近いですが、自治体の仕事が国の行政体系においてどのような位置づけとなっているかを学ぶことは重要だと考えます。

かつを

ちなみに、読みにくさ(=専門性の高さ)は、個人的に星5段階で評価するなら「★★★☆☆」くらいです。

地方財政制度はそれを規定する大元の法律として地方財政法がありますが、本書はどちらかというと、法学的側面というよりは実学的側面からの解説が充実しているため、公務員試験を経た学生の方であれば十分に読むことができると思います。

2位:『地方自治法概説』

続いては、宇賀克也『地方自治法概説』(有斐閣、2023)です。著者の宇賀先生は東大で教鞭を取られていた方で、行政法・地方自治法の権威です。最高裁の判事(裁判官)も務められており、憲法を勉強した方ならご存知かと思いますが、裁判権と地方議会議員の出席停止処分の関係について判例変更があった事件(最大判例2.11.25)においても、裁判官として意見を述べられています。

地方公務員法、地方財政法等のように、地方公務員として関わる機会のある法律は多数ありますが、その中で最も重要なものを1つ選ぶのならば、地方自治法ということになると思います。主に学べることとして、まずは地方公共団体の種類が挙げられます。例えば、特別区、指定都市、中核市等の職員の方、もしくは志望者の方は、目を通しておくべきです。本書では、これらの自治体の種類が、法的にどのように位置づけられているかについて知ることができます。

公務員として実務に携わるようになると、最も高い頻度で関わるようになる法律は当該政策の個別法です。例えば生活保護所管部署であれば最も職務に密接に関連するのは生活保護法、介護保険課であれば介護保険法といった具合です。ただ、地方自治法は、それらの基本法として、その程度は密接でなくとも、広範に渡って関連がある法規です。地方公務員として知っておくべきです。

地方自治法自体が条文数が300近くありボリュームの大きな法律ですので、すべて読むのが難しければ、読み飛ばすだけでも十分だと思います。本書で出てくるキーワードとして、「自治事務・法定受託事務」、「常任委員会・議会運営委員会・特別委員会」、「三位一体の改革」あたりは超重要です。

かつを

読みにくさ(=専門性の高さ)は、個人的に星5段階で評価するなら「★★★★☆」くらいです。法学部出身者のほか、公務員試験で憲法及び行政法を学んだことがある方なら読むことは出来ると思います。

ちなみに、自治体によっては、主任級、係長級、課長級等への昇任試験において地方自治体の出題があるところも多いと思います。その際には試験勉強という特性に合わせて、問題集的なテキストを使用して知識を定着させるべきです。本書は、理解を深める、知識を習得するといった意味合いで、入庁を控えた学生の方や若手公務員の方におすすめできます。

1位:『はじめての社会保障』

この記事は私が個人的におすすめできる本と掲げるものいうことで、思い切りましたが、社会保障制度に関する本を1位として紹介します。椋野 美智子・田中 耕太郎『はじめての社会保障』(有斐閣アルマ、2023)です。

自治体、特に特別区や一般市においては、公務員人生において一度以上社会保障に関わる部課に配属される可能性は高いと思います。自治体の仕事の核は、人的リソースの配分から言っても社会保障、特に社会福祉にあると考えています。私が新卒で入庁したのは特別区でしたが、新規採用者の1割程度は生活保護の所管部署に配属されました。自治体において、「社会保障」に関連する事務は、高齢者福祉、介護保険、障がい者福祉、児童福祉、生活保護、国民健康保険、国民年金と多数に渡ります。これらも含めると、新規採用者の3割程度はこのいずれかに配属されていたように思います。特別区や一般市においては、一度も社会保障関係部署に配属されないまま公務員生活を終える可能性の方が低いのではないでしょうか。

本書の特長はとにかく読みやすい点です。法学的な側面は排して、以上の社会保障制度について必要十分な知識を得ることができる良書です。例えば、「社会保障」、「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」の違いについて貴方はご存知でしょうか?また、以上で述べたような個別的な制度が、この4つのいずれに該当するか説明できますか?各制度の個別的な知識に留まらず、社会保障制度全般についても学ぶことができるのが、この本の魅力だと考えます。

かつを

読みにくさ(=専門性の高さ)は、個人的に星5段階で評価するなら「★★☆☆☆」くらいで、紹介した3書の中でも最も読みやすいと思います。

番外:『健康で文化的な最低限度の生活』

「3選」と言いながら、番外編としてさらにもう1点だけ、敢えて漫画を紹介させていただきます。私は新規採用時に生活保護のケースワーカーを任命されたので、その個人的な思い入れもありますが…。柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』という漫画です。ちょっと前ですがドラマ化されていたのでそちらを御覧になった方も多いかもしれませんね。

漫画ですが侮れず、きちんど制度を知ってらっしゃる方が描かれたのだと感じます。ケースワーカーの仕事について知ることが出来ますし、物語としても楽しめるのでおすすめです。

ちなみに、ケースワーカーを経験していない人が読むと、「漫画だから脚色しているのだろう」と思われるかもしれませんが、実際の現場はもっと奇怪なことの連発です。

かつを

これ以上は漫画にも描けなかったんだろうなあ…なんて思います。事実は小説よりも奇なりというやつです。

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