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「社会保障」「社会保険」「社会福祉」の違いとは【定義】

公務員試験受験生の面接カードを見せていただく機会があるのですが、その際、「社会保障」、「社会保険」、「(社会)福祉」といった言葉が誤って用いられていることがあります。例えば、以下のようなケースです。

受験生

「私は、介護保険や生活保護といった社会福祉行政に携わりたく、◯◯市を希望しました。」

これは受け手によっては「誤っている」と感じてしまう用法です。採用面接の場等においてこのように話したからといって指摘されることは少ないでしょうが、正しく用いることができるに超したことはありません。この記事では、公務員試験とはやや迂遠のトピックとなるかもしれませんが、これらの用語の使い分けについてお話しします。

目次

「社会保障」とは

これらの用語の分類にはいくつか種類がありますが、この記事では、『はじめての社会保障(椋野美智子・田中耕太郎)』の説明に準拠することとします。ちなみに椋野先生と田中先生は両名とも厚生省出身の方です。社会保障制度について標準的なことを一通り学べるので、自治体志望又は勤務の方ならば目を通しておいて損はありませんし、厚労省や厚生局志望の方は是非読んでみてください。アカデミックに寄りすぎていないため、大変読み易い本です。

本題に移りますと、「社会保障」とは、「国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民にすこやかで安心できる生活を保障することを目的として、公的責任で生活を支える給付を行えるものである。」(1993年社会保障制度審議会社会保障将来像委員会第一次報告)とされています。

そして、社会保障は、「①社会保険」、「②社会福祉」、「③公的扶助」の3つの給付分類できるとされます。つまり、社会保障とは、この3つの給付を包含した最も広い概念として用いられる言葉なのです。

「社会保障」の3つの給付
  • 社会保険
  • 社会福祉
  • 公的扶助

①社会保険

社会保障のうち、1つ目の給付である社会保険は、疾病・老齢等の所定の事由が生じた場合に行われる給付です。

その点では民間の保険会社の保険と同一ですが、「国民皆保険」という言葉があるように、社会保険は加入が強制されているという点において異なります。

また、他の2つの制度と異なるのは、使徒の特定された保険料の賦課を前提としていることです。例えば医療保険(国民健康保険)なら国民健康保険料、年金保険なら国民年金保険料、介護保険なら介護保険料といった具合です。

②社会福祉

2つ目の給付は、社会福祉です。これは、母子、障がい、高齢など、社会生活を送る上でハンディキャップを負った人々に対して支弁される給付です。

字面だけを読むと社会保険と類似しているようにも見えますが、社会福祉は社会保険と異なり、給付を受ける人が特定の対価を負担していません。財政という観点で見ると、社会福祉の財源は租税等から成る一般財源により賄われています。(一方、社会保険は国の年金特別会計、地方自治体の介護保険特別会計や国民健康保険特別会計等のように、特別会計を設置して財政措置されています。)

例としてはいわゆる児童福祉なら児童手当や児童扶養手当、いわゆる障がい福祉なら身体障がい者手帳や医療受給者証等が例として挙げられます。

③公的扶助

3つ目の公的扶助については、日本において該当する制度は生活保護しかありませんので、生活保護のことと考えて差し支えありません。性格は社会福祉と共通するところがありますが、生活保護制度は就労指導や収入認定といった独自の運用を多く含むことから、社会福祉とは一線を画するものとして説明されることが多いのです。

厚生労働省による「社会保障」の分類

また、最近では、以上の3つに「保健医療・公衆衛生」を加えた4つの給付をもって社会保障を構成するとする分類も台頭してきています。主に厚生労働省の資料等で用いられているものです。

「社会保障」の4つの給付
  • 社会保険
  • 社会福祉
  • 公的扶助
  • 保健医療・公衆衛生

まとめ

  • 「社会保障」が最も大きな概念で、「社会保障」を3つに分解したものが「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」である。
  • 最近は、「社会保障」を「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」、「保健医療・公衆衛生」の4つに分類することもある。
かつを

以上が正しく使い分けされていれば、もし私が面接官だとしたら、「お、分かってるな。」と感じると思います!

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