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公務員が使う用語や表現を紹介します「サブ・ロジ」「係る」「政策・施策・事業」

公務員の文書はお堅いというイメージがあると思いますが、公務員として仕事をしていくと、その文書にはある程度共通している部分があります。実は公用文の書き方は、内閣官房や文化庁によってある程度の基準が示されており、それに従って公文書が作成されているからです。

また、それらとは関係なく、公務員が事実上よく用いる用語・表現があります。今回は、地方公務員と国家公務員(総合職)のいずれも経験した筆者が、有名なものを紹介していきます。

目次

「サブ」・「ロジ」

まずは、「サブ」・「ロジ」です。私は地方公務員として勤務している期間中にこの言葉を聞くことはありませんでしたが、国家公務員に転職した途端にこの言葉を頻繁に聞くようになり、いつしか当然のように自分でも使うようになっていました。主に霞が関で用いられる言葉です。

それぞれ、以下のような意味で用いられます。

  • 「サブ」…… 文書、プレゼン等の成果物自体のこと。”substance(実体)“に由来する。
  • 「ロジ」…… 会議や出張等の準備や、スケジューリングのこと。「サブ」に対置される言葉として用いられる。 のこと。” logistics(過程)“に由来する。

たとえば、「明日の会議は肝心のサブが十分に煮詰められていない。」「今度の出張のロジ回りは君に全て任せたよ。」といった具体に使われます。

「係る」・「関する」・「関連する」

こちらは話し言葉ではなくて、公務員の書き言葉です。「係る」・「関する」・「関連する」という言葉は公文書でたびたび目にしますし、いずれも同じような用法で使われることが多いですが、その使い分けをご存じでしょうか。いずれも、二つの事項の間に関連性があることを示す言葉ですが、それが強さによって使い分けられていることが多いです。

整理すると、以下のようになります。

  • 「係る」…… 二つの事項の間に特に強い関連性がある場合に用いられる。
  • 「関する」…… 二つの事項の間に強い関連性がある場合に用いられる。
  • 「関連する」…… 二つの事項の間に関連性がある場合に用いられる。

「係る」、「関する」、「関連する」の順に、結びつきが強い場合に用いられているということになります。

「政策」・「施策」・「事業」

同様に、「政策」・「施策」・「事業」についても、公務員であれば日常的に用いる言葉ですが、その使い分けは曖昧にされがちです。この三つの言葉については、少し古いですが、政府によって一応の使い分けが明示されています。

総務省の「政策評価の実態に関するガイドライン」では、次のように述べられています。

各行政機関が所掌する政策は、いわゆる「政策(狭義)」、「施策」、「事務事業」の区分に対応しており、そのレベルは区々であると考えられる。このため、政策評価の体系的かつ合理的で的確な実施を確保するためには、「政策(狭義)-施策-事務事業」などの政策体系をあらかじめ明示した上で評価を実施することが必要となる。

総務省「政策評価の実施に関するガイドライン」

それに続く形で、「政策」・「施策」・「事業」を以下のように整理しているのです。

  • 「政策(狭義)」…… 特定の行政課題に対応するための基本的な方針の実現を目的とする行政活動の大きなまとまり
  • 「施策」…… 上記の「基本的な方針」に基づく具体的な方針の実現を目的とする行政活動のまとまりであり、「政策(狭義)」を実現するための具体的な方策や対策ととらえられるもの
  • 「事業」…… 上記の「具体的な方策や対策」を具現化するための個々の行政手段としての事務及び事業であり、行政活動の基礎的な単位となるもの

すなわち、最も大きな単位が「政策」で、それを細分化した単位が「施策」、さらに細分化した個々の行政手段が「事業」と、階層構造が三段階になっているというわけです。

「~いただきます」・「~頂きます」

続いて、これは公務員用語というわけではありませんが、一般的に用いられる謙譲語で、「~いただきます」というものがあります。これを、漢字で書くべきか、平仮名で書くべきかという問題があります。これについても、公用文で用いる場合には、明確に使い分けの基準があります。

  • 「~いただきます」…… 補助動詞として、他の動詞に付属して用いられる場合(に平仮名で記載する。)
  • 「~頂きます」…… recieve・given・get等の意味で独立した動詞として用いられる場合(に漢字で記載する。)

以上のような基準で使い分けられています。そして、これは「~いたします」と「~致します」、「~ください」と「~下さい」についても同様です。たとえば、補助動詞として平仮名で表記されるべき場合の例文として、以下のものがあります。

補助動詞として平仮名で表記されるべき場合の例
  • 「本日は体調が優れないので、欠席させていただきます。」
  • 「明日の会議では、私から説明いたします。」
  • 「現在検討しておりますので、もうしばらくお待ちください。」

一方で、独立した動詞として漢字で表記されるべき場合の例文としては、以下のとおりです。

独立の動詞として漢字で表記されるべき場合の例
  • 「本日は体調が優れないので、お休みを頂きます。」
  • 「明日の会議における説明は、私が致します。」
  • 「現在検討しておりますので、もうしばらくお時間を下さい。」

公務員が書いた文章を見ていると、明確に以上の使い分けがされていることが分かります。公務員試験の受験においても、エントリーシートの志望動機欄や論文試験の論述において正しく表記できていると、「お、分かっているな」くらいには思ってもらえることでしょう。

「見え消し」・「溶け込み」

次に、主に霞が関で用いられることが多いと思いますが、「見え消し」・「溶け込み」という言葉があります。既存の文書に手を加える手段は、大きく分けて二つ存在します。どこをどのように修正したかという痕跡を残すのが「見え消し」で、痕跡を残さずに単に修正するのが「溶け込み」になります。

たとえば、同じ文章を、それぞれの手法で修正した場合、以下のようになります。

  • 溶け込みの場合
    修正前の文章:「当該施策の実施を見送らせて頂きます。」
    修正後の文章:「当該事業の実施を見送らせていただきます。」
  • 見え消しの場合
    修正前の文章:「当該施策の実施を見送らせて頂きます。」
    修正後の文章:「当該施策事業の実施を見送らせていただきます。」

「令和9年」・「令和9年」

最後に紹介するのは、先ほどに続き、表記のお話です。算用数字(1,2,3……)を、全角で書くか、半角で書くかといった問題があります。

これも、慣用的なものかもしれませんが、特に霞が関の国家公務員においては、以下の使い分けがされていることが多いです。

  • 当該算用数字が一桁の場合は全角で、当該算用数字が二桁以上の場合は半角で表記する。

これに従うと、以上の「令和9年」・「令和9年」では、「令和9年」が正解ということになります。たとえば、「2030/6/15」は、公文書では「令和12年6月15日」と表記されることになります。一般的にはすべて半角(または全角)に揃えて表記されることが多いと思いますので、これは公文書特有の表記ではないでしょうか。

ちなみに、なぜこのように、一桁の算用数字だけ全角で表記しているかというと、一説には、Word等のワープロソフトで入力した際に、一桁の算用数字を全角で入力しなければ体裁が崩れるためにそのようにしているのだと聞いたことがあります。少なくとも今の時代にはそんなことは無いと思うのですが、前例踏襲のお役所の文化の現れなのかもしれません。

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