受験生の方から「公務員試験を受験したいけど、資格を1つも持っていない。」と相談を受けることがあります。この記事では、その御質問にお答えしたいと思います。
結論:まったく気にする必要はない。
結論を先出ししてしまうと、資格の有無が合否に与える影響はほとんど無いので、気にされる必要はないということです。
そもそも、公務員として求められるべき素養を測るために教養試験と専門試験が課されています。入庁後、業務において必要な知識は、各官庁、人事院、自治体等が実施する研修において身に着けることとなりますので、人事担当者も有資格者を率先して採用したいとは考えていません。
公務員の場合、実際の業務は現場で身に着ける、いわゆるOJTのやり方をとっている職場がほとんどです。
大学生の方がスキルアップのために取得する資格といえば、TOEIC、TOEFL、MOS、ITパスポート、基本情報技術者、簿記、FP、宅建士、行政書士、中小企業診断士あたりでしょうか。この中で強いて公務員試験において有利になり得るものがあるとすれば英語系の試験のスコアですが、それ以外のものは有利にも不利にも働かないと思います。実際に私は地方自治体と国の本省(総合職)として勤務した経験がありますが、同期入庁者には目立った資格の有資格者は1人も居ませんでした。
また、有資格者を採用したい場合、各官庁・自治体は、別途、当該資格の有資格者を対象とした採用選考を行います。例えば司法試験合格者や公認会計士等は、必要に応じてそのような選考により採用されています。以上のことから、普通の受験枠において、資格の有無が合否に与える影響は極めて小さいというのが結論です。
逆に、例えば弁護士資格や公認会計士資格の難関資格を持っている人の場合、まず間違いなく面接試験において弁護士事務所や監査法人ではなくあえて公務員を選択するのかを問われます。その問いに対する説明を準備しておく必要が生じます。
限定的ではあるが有利に働く場面もある
一方、限定的な話ですが、例えば外務省や外務省専門職、航空管制官等のように外国語スキルが求められることが明らかな場合には、TOEIC等のスコアが高いに越したことはありません。それを除く大半の場合には資格の有無なんて気にすることは無いので、資格試験勉強に割く時間があるのなら早めに専門試験の対策を推し進めるべきというのが本稿の結論です。
また、国税専門官を志望する場合には日商簿記検定3級や2級を持っていると、筆記試験の会計学において有利に働くことは間違いありませんが、資格を保有している事実自体が面接試験において有利になるとは思えません。
また、国家総合職の試験の場合には、TOEIC等の外国語試験の成績に応じて、加点を得ることができますので、そういった意味では、「最終合格できるか」といった点において有利になり得ます。「官庁訪問で内定を得られるか」はまた別の話です。この外国語試験による加点については、詳細は下の記事にまとめていますので、よろしければご覧ください。
余談
筆者は新卒で特別区Ⅰ類試験に合格した後、某区に採用されました。勤続したのち、国家総合職試験を経て某中央官庁に転職しました。いずれの職場においても、特に目立った資格を持っている同期は居なかったように思います。強いて言えば、国家総合職の同期にはTOEICのスコアが800点代後半だったり、日商簿記検定2級を持っていたりする人がちらほらいるくらいでした。そのほか、ITパスポート、MOS等を持っている人は結構いる印象です。