国家公務員試験(国家総合職、国家一般職)については、第1次試験としての基礎能力試験及び専門試験等の後、その合格者に対して面接試験が課されます。この面接試験について、実質的にはどのくらいの配点比重が置かれているのかを、実際に計算して求めます。
面接試験の評価の仕組み
国家公務員試験の面接試験は、「A,B,C,D,E」の5段階評価です。そのうちEの評価を受けた場合は、他の試験種目の成績に関わらず不合格、すなわち足切りとなります。
また、人事院が公表している試験結果のうち標準点等を基に計算すれば概ね分かるのですが、ほとんどの受験生はC評価に収束します。それ以外の評価を取る受験生はかなり少数派ですが、強いて言えば、次いで多い評価はB評価です。今回は、面接試験の評価が1つ、又は2つ異なる場合の標準点の増分が、筆記試験(基礎能力試験又は専門試験)の素点何点分に相当するかを計算していきます。
計算の前提条件
次の条件に基づいて計算を行いました。(結果だけ知りたい方は、次の見出しまでスキップしてください。)
- 面接評価は、C及びB評価間と、C及びA評価間のそれぞれ標準点の乖離を基準とする。
- 以上の標準点の乖離を「すべて基礎能力試験で換算した場合の基礎能力試験の素点数」と、「すべて専門試験で換算した場合の専門試験の素点数」を算出する。
- 基礎能力試験、専門試験ともに、平均点からの増分を基準に算出する。
- 人事院HPに掲載されている2023年度試験の試験結果を基に算出する。(各試験の平均点、標準偏差、点数の傾斜は例年ほぼ同じのため、単年度における算出で十分。現在も変わりないです。)
- 以上の条件で、「国家総合職試験(院卒程度、行政)」「国家総合職試験(大卒程度、法律)」「国家一般職(大卒程度、行政、関東甲信越)」の3区分について計算を行う。(国家一般職についてはすべての地域区分において同一の結果となる。)
計算結果
計算結果は次のとおりです。
・面接評価がCとBの場合の各点数の乖離は、 基礎能力試験素点約8点分、専門試験素点約8点分の乖離に相当する。
・面接評価がCとAの場合の各点数の乖離は、 基礎能力試験素点約15点分、専門試験素点約15点分の乖離に相当する。
・面接評価がCとBの場合の各点数の乖離は、基礎能力試験素点約8点分、専門試験素点約7点分の乖離に相当する。
・面接評価がCとAの場合の各点数の乖離は、基礎能力試験素点約16点分、専門試験素点約13点分の乖離に相当する。
・面接評価がCとBの場合の各点数の乖離は、基礎能力試験素点約7点分、専門試験素点約5点分の乖離に相当する。
・面接評価がCとAの場合の各点数の乖離は、基礎能力試験素点約13点分、専門試験素点約9点分の乖離に相当する。
考察
以上にように、面接試験の評価がほぼ平均のCから一つ、あるいは二つ上がった場合の、標準点(合否判定にあたって用いられる実質的な点数)の上昇分は顕著に大きいです。仮に、第1次試験をボーダーギリギリで突破したケースにおいても、面接試験においてB評価さえ獲得できれば、まず間違いなく最終合格は可能です。
ただ、これは裏を返せば、BやA評価を獲得する受験生が著しく少ないということの証左でもあります。C以外の評価を獲得する受験生の割合はいずれ分布を推定したいと思っていますが、C評価に収束する受験生がほとんどを占めるので、B以上の評価は現実的に狙って獲得できるものではないと考えておくべきです。論文試験についても同様のことが言えますので、国家公務員試験においては、筆記試験(特に専門試験)こそが対策の要であることに違いはありません。
余談(押すと開きます。)
ちなみに、例えば国家総合職において、基礎能力試験と専門試験の比重が人事院の採用案内上ではそれぞれ「2/15」、「3/15」となっているにもかかわらず、以上の計算結果の間にほぼ差が認められないことに疑問を抱かれた方がいらっしゃれば、鋭いです。採用案内上では傾斜がかけられておりますが、それを加味したとしても、基礎能力試験より専門試験の方が裾野が広い分布に収束する(すなわち、分散及び標準偏差が大きい)ため、最終的には両試験の素点1点分の重みはほぼ等しくなるのです。これについては別途記事にする予定です。
まとめ
- 国家公務員試験においてはC評価を取る受験生がほとんどである。
- B評価を取れた場合、C評価の場合と比した時のアドバンテージは専門試験9~15点分に相当する。
- ただし、狙って取れるようなものではないので、筆記試験の対策に注力するべき。
私は国家公務員試験を何度も受験していますが、個別面接試験ではC以外の評定が付いたことはありません。(国家総合職試験の政策討議試験ではAを獲得したことがありますが、ラッキーだったとしか思えません。)