このサイトでは、公務員試験を主たるコンテンツとして据えながらも、公務員の人事制度についても多く取り扱っています。
そのうちでも、公務員の給与については好評を頂いている記事となっています。これまでに、人事院規則や自治体の条例に基づいて公務員の給与を算出し、以下のような記事を執筆してきました。
今回の記事では、これらの算出結果をもとに、国家公務員及び地方公務員のモデル給与を集計します。国家公務員のモデル給与については人事院により公表されていますが、「国家公務員総合職と国家公務員一般職が混同している」「超過勤務手当を一切含んでいない」といった問題があります。一言でいうと、人事院のモデル給与は実態よりもかなり低く見積もられています。
今回は、それを考慮してより実態に近いモデル給与を算出するために、多数のパターン別に年収ベースのモデル給与を算出しました。
国家公務員総合職のモデル年収例
国家公務員総合職(旧:Ⅰ種)のモデル給与は以下のとおりです。人事院の公表する国家公務員の平均年収は700万円に満たないくらいですが、このように国家総合職だけで見るとその平均を大きく上回ります。
以上です。
国家公務員総合職のモデル給与(年収) | ||
年齢 | 役職 | 年収 |
25歳 | 主任(本府省) | 5,694,000円 |
30歳 | 係長(本府省) | 7,165,000円 |
35歳 | 課長補佐(本府省) | 9,017,000円 |
40歳 | 室長(本府省) | 10,263,000円 |
45歳 | 課長(本府省) | 12,479,000円 |
50歳 | 課長(本府省) | 14,157,000円 |
本府省の職員の平均年齢は若めで40歳過ぎですので、国家公務員総合職の実際の平均年収は公にはされていませんが、1,000万円程度です。人事院は国家公務員の平均年収を公表していますが、その水準は700万円に満たない程度としていますが、国家総合職に絞るとそれよりもかなり高い水準となります。
ちなみに、集計基準についてはこの記事では詳述しませんが、ここで少しだけお話しします。地域手当、本府省業務調整手当、超過勤務手当及び扶養手当等については、一般的に想定される場合に基づいて計上しています。たとえば国家総合職であれば多くの場合は東京の霞が関で過ごすことになるため、簡易的に全年齢において地域手当を計上していますが、扶養手当は30代の途中から計上するなどしています。これについてはこれ以降も同じです。
また、新卒で採用された場合を想定していますので、社会人経験を経た後に国家公務員総合職試験を入庁したような場合だと、上記よりも少し(10〜100万円程度)低くなります。
国家公務員一般職(本府省採用)のモデル年収例
国家一般職については、「勤務する機関の所在地」及び「本府省と地方出先機関のいずれで採用されたか」によって大きく給与が異なります。したがって、まずは本府省勤務の国家一般職のモデル年収について算出します。
国家公務員一般職(本府省勤務)のモデル給与(年収) | ||
年齢 | 役職 | 年収 |
25歳 | 主任(本府省) | 5,350,000円 |
30歳 | 係長(本府省) | 6,439,000円 |
35歳 | 係長(本府省) | 7,650,000円 |
40歳 | 課長補佐(本府省) | 8,631,000円 |
45歳 | 課長補佐(本府省) | 9,938,000円 |
50歳 | 課長補佐(本府省) | 10,788,000円 |
以上です。世間で思われているよりは高いと思います。本府省の平均年齢が40歳過ぎなので、国家一般職(本府省勤務)の平均年収は900万円程度といえます。下述する地方出先機関の場合と比して高い水準にあることが分かります。
地方公務員と比しても高いです。この理由は、本府省勤務の国家一般職であれば、おおむね全員が横並びに課長補佐級に上がるのに対して、地方公務員では主任級や係長級で定年を迎える職員が大宗を占めているという違いにあります。
国家公務員一般職(首都圏の出先機関採用)のモデル年収例
続いて、国家公務員一般職のうち、首都圏の出先機関に採用された場合です。地域手当の支給割合が20%だと仮定してモデル年収を算出すると、以下のようになります。
国家公務員一般職(首都圏の出先機関)のモデル給与(年収) | ||
年齢 | 役職 | 年収 |
25歳 | 係員(地方本局) | 5,110,000円 |
30歳 | 係長(地方本局) | 6,139,000円 |
35歳 | 課長補佐(地方事務所) | 6,803,000円 |
40歳 | 課長補佐(地方本局) | 7,558,000円 |
45歳 | 副事務所長(地方事務所) | 8,092,000円 |
50歳 | 課長(地方本局) | 8,706,000円 |
以上です。平均年齢は本府省よりも高く40代半ばなので、平均年収は800万円程度です。本府省勤務の国家一般職と比較すると、俸給表において級に上がるスピードがやや遅くなってしまうことと、本府省業務調整手当の支給がないことから、少し給与水準は小さくなります。また、以上は地方本局の課長級に昇進した場合を想定していますが、実際は課長補佐級どまりで定年を迎えるという方も多くいらっしゃいます。
国家公務員一般職(地方の出先機関採用)のモデル年収例
続いて、国家公務員一般職のうち、地方の出先機関に採用された場合です。一口に地方といってもさまざまですが、ここでは、地域手当が支給されない場所に所在する機関に採用されたと仮定します。モデル年収を算出すると、以下のようになります。
国家公務員一般職(地方の出先機関)のモデル給与(年収) | ||
年齢 | 役職 | 年収 |
25歳 | 係員(地方本局) | 4,350,000円 |
30歳 | 係長(地方本局) | 5,153,000円 |
35歳 | 課長補佐(地方事務所) | 5,770,000円 |
40歳 | 課長補佐(地方本局) | 6,273,000円 |
45歳 | 副事務所長(地方事務所) | 6,709,000円 |
50歳 | 課長(地方本局) | 7,531,000円 |
以上です。平均年収は600万円代となり、今回紹介した国家公務員の中では最も低い水準となります。国家公務員全体の平均年収は人事院により700万円に満たないくらいと公表されていますが、地域手当の支給が一切無い場合では、それよりも少し低めの水準となっています。
東京都、上位政令市、特別区のモデル年収例
続いて、地方公務員の場合です。すべての地方公務員の中で最も給与水準が高いのが東京都(都庁)や大阪市、横浜市、特別区等です。地方公務員の場合は、国家公務員よりも職員のキャリアパスの乖離が大きいため、一口に算出することは難しいです。国家公務員は間口の段階で試験種を分けて採用しているのに対して、地方公務員は採用後に幹部候補となる者を試験で選別しているからです。
したがって、地方公務員のモデル給与は人によっても異なるため、短期間に昇格を繰り返して部長級まで昇格した場合と、主任級で定年を迎える場合に分けて算出することとしました。
まずは、早期に昇格を繰り返して部長級等にまでなった場合のモデル年収です。
① | 東京都、上位政令市、特別区で早期に昇格を繰り返した場合のモデル給与(年収)||
年齢 | 役職 | 年収 |
25歳 | 係員 | 4,825,000円 |
30歳 | 主任 | 5,553,000円 |
35歳 | 係長(又は課長補佐・代理等) | 6,481,000円 |
40歳 | 係長(又は課長補佐・代理等) | 7,625,000円 |
45歳 | 課長(又は室長等) | 9,879,000円 |
52歳 | 部長(又は局長、参事等) | 12,467,000円 |
以上です。地方公務員の場合は、とにかく管理職手当の存在が大きいので、課長級以上に上がるタイミングで給与が跳ね上がります。各自治体の給与条例にもよりますが、管理職手当は地域手当や期末勤勉手当にも影響があるので、年収ベースでの比較では相当なインパクトがあります。ただし、このように自治体内で部長級以上に昇格するのは少数派であることには留意したいです。
続いて、主任級で定年を迎える場合のモデル年収です。自治体の中ではこういったケースの方が一般的です。都庁等では係長以上のポストが多いですが、特別区等では以下のようなモデルで定年を迎える人の方が多いはずです。
② | 東京都、上位政令市、特別区で主任級で定年を迎える場合のモデル給与(年収)||
年齢 | 役職 | 年収 |
25歳 | 係員 | 4,825,000円 |
30歳 | 係員 | 5,228,000円 |
35歳 | 主任 | 6,209,000円 |
40歳 | 主任 | 6,817,000円 |
45歳 | 主任 | 7,140,000円 |
52歳 | 主任 | 7,629,000円 |
以上です。同じ自治体内であっても、昇格するかどうかで給与水準が著しく変わるということが一目瞭然かと思います。
地方県庁、地方市役所のモデル年収例
続いて、地方県庁や地方市役所の場合についても算出します。ここでは、地域手当の支給割合が0%、すなわち地域手当の支給が無い自治体の場合を想定しています。この場合も昇格のスピードにより給与水準が大きくことなるため、二つに場合分けして算出していきます。
まずは、地方県庁、地方市役所において早期に昇格を繰り返して部長級等にまでなった場合のモデル年収です。
① | 地方県庁・地方市役所で早期に昇格を繰り返した場合のモデル給与(年収)||
年齢 | 役職 | 年収 |
25歳 | 係員 | 4,151,000円 |
30歳 | 主任 | 4,714,000円 |
35歳 | 係長(又は課長補佐等) | 5,431,000円 |
40歳 | 係長(又は課長補佐等) | 6,375,000円 |
45歳 | 課長(又は室長等) | 8,478,000円 |
52歳 | 部長(又は局長、参事等) | 10,630,000円 |
以上です。若手のうちは低めで、課長に上がるタイミングで大きく給与が跳ね上がるという傾向については、どこの自治体においても同様となっています。
続いて、地方県庁、地方市役所において主任級で定年を迎える場合のモデル年収です。
② | 地方県庁・地方市役所で主任級で定年を迎える場合のモデル給与(年収)||
年齢 | 役職 | 年収 |
25歳 | 係員 | 4,151,000円 |
30歳 | 係員 | 4,538,000円 |
35歳 | 主任 | 5,352,000円 |
40歳 | 主任 | 5,776,000円 |
45歳 | 主任 | 6,232,000円 |
52歳 | 主任 | 6,437,000円 |
以上です。主任級どまりだと、年齢を重ねるほど給与の伸び幅が小さくなります。俸給表の最高号俸に達した場合は、昇格(昇級)しない限り給与がそれ以上あがらなくなるということもあります。
まとめ
最後に、これまでに紹介した八つのパターンについて、平均年収が高い順に並べると以下のようになります。
- 国家総合職:平均年収約1,000万円
- 国家一般職本府省採用:平均年収約900万円
- 首都圏自治体等で出世した場合:平均年収約800~900万円
- 国家一般職(首都圏出先採用):平均年収約800万円
- 地方県庁・市役所で出世した場合:平均年収約700~800万円
- 首都圏自治体等で出世しない場合:平均年収約700万円
- 国家公務員一般職(地方出先採用):平均根集約600~700万円
- 地方県庁・市役所で出世しない場合:平均年収約600万円