このサイトでは、以前、以下のような記事を執筆したことがあります。
国会公務員だけではなく、地方公務員においても同様の区分があり、すべての地方公務員は、「一般職」と「特別職」に峻別されます。この記事では、地方公務員の一般職と特別職について解説していきます。
一般職と特別職の違い
まず、一般職と特別職がそれぞれどのように定義されているかについて、ざっくりとお話しします。一般職と特別職と区分することについては、地方公務員法第3条に規定が置かれています。以下に、該当する条文を抜粋します。
(一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員)
第三条 地方公務員(中略)の職は、一般職と特別職とに分ける。
地方公務員法 | e-Gov法令検索
どのような者がいずれに分類されるかについては詳述しますが、たとえば市役所の場合、職員の99%は一般職に該当すると思って差し支えありません。職員のほとんどは一般職です。一方で、特別職の最たる例は、市長や市議会議長といいった者です。
それでは、一般職と特別職は、具体的にどのような点において違いがあるのでしょうか。このことについては、行政実例(行実昭35.7.28)により見解が示されています。特別職は、恒久的でない職または常時勤務することを必要しない職であり、かつ職業的公務員でない点において、一般職とは異なるとされています。
実際に、地方公務員の服務、任用、分限等については地方公務員法に基本的な規定が置かれていますが、地方公務員法は、基本的には一般職のみに適用されるものとなっています。一方、特別職に対しては、懲戒処分等の一部の規定を除き、基本的には適用されないこととされています。この点につき、公務員としての身分の取扱いが大きく異なっていると言うことができます。これらのことは、以下のとおり地方公務員法第4条において定められています。
(この法律の適用を受ける地方公務員)
第四条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。
2 この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。
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具体的に一般職に該当する地方公務員は?
それでは、具体的には、一般職に該当する地方公務員はどのような職員なのでしょうか。この答えは、地方公務員法第3条第2項に定められています。
(一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員)
第三条
2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。
以上のとおり、特別職を除くすべての地方公務員が一般職ということになっています。
余談ですが、この「Aを控除した残りがBである」という考え方は、法解釈論でよく用いられるものです。たとえば、政府の権能から立法権と司法権を除いたものが行政権だとする「行政権控除説」等があります。
話を戻しますと、実際の地方公務員の現場においては、特別職は全体に占める割合としてはごく一部ですので、県庁や市役所等で働くほとんどの職員は、〇〇部長、〇〇課長のような管理職も含め、一般職の地方公務員ということになります。
具体的に特別職に該当する地方公務員は?
それでは、具体的に特別職に該当する地方公務員にはどのようなものがあるでしょうか。これについては、地方公務員法第3条第3項に規定がありますが、引用すると、以下のようになります。
- 就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職
- 地方公営企業の管理者及び企業団の企業長の職
- 法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの
- 都道府県労働委員会の委員の職で常勤のもの
- 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職(専門的な知識経験又は識見を有する者が就く職であつて、当該知識経験又は識見に基づき、助言、調査、診断その他総務省令で定める事務を行うものに限る。)
- 投票管理者、開票管理者、選挙長、選挙分会長、審査分会長、国民投票分会長、投票立会人、開票立会人、選挙立会人、審査分会立会人、国民投票分会立会人その他総務省令で定める者の職
- 地方公共団体の長、議会の議長その他地方公共団体の機関の長の秘書の職で条例で指定するもの
- 非常勤の消防団員及び水防団員の職
- 特定地方独立行政法人の役員
これだけでは分かりにくいため、具体的な例を挙げながらいくつか見ていきましょう。
たとえば、❶の「就任について議決若しくは同意によることを必要とする職」に該当する代表的なものとして、副首長、すなわち副市長村長や副知事が挙げられます。これらのポストについては、就任にあたって議会の同意が必要であるため、特別職の地方公務員ということになります。
続く❷の「地方公営企業の管理者」については、たとえば政令指定都市の「〇〇市交通局長」「〇〇市上下水道局長」等がこれに当たります。これらの交通局、上下水道局等は、「局」と銘打たれているため、自治体の内部部局の一つに過ぎないように思われるかもしれませんが、法令上の位置づけは、地方公営企業の一つという整理となっています。したがって、その管理者にあたる「〇〇市交通局長」等は、特別職に該当します。実際には、これらの地方公営企業は、独自に採用しているということはほとんどありません。普通に事務職員として採用された職員が、出世を繰り返していく中で、人事異動で縁があった場合に配属されるイメージです。(ただし、京都市のように、共通の試験を行ったのち、採用された職員の人事は交通局、上下水道局、教育委員会等に完全に切り離しているところもあります。)
❸の「委員」「委員会の構成員の職」については、たとえば、自治体における監査委員、人事委員会の委員、教育委員会の委員、公安委員会の委員、収用委員会の委員が挙げられます。また、実は地域の民生委員もここでいう「委員」に含まれるため、特別職の地方公務員です。
特別職の地方公務員の主な例としては上掲のとおりです。続いて、特別職の地方公務員について、補論を紹介します。
補論① これ以外に、特別職の地方公務員は存在する余地があるか
地方公務員法第3条第3項の規定は、限定列挙と解釈されています(例示列挙ではないということです。)。そして、憲法第94条に「法律の範囲内で条例を制定することができる」と定められているとおり、法律の定めを超えて条例を定めることはできません。したがって、上掲のもののほかに、特別職の地方公務員は存在し得ないということになります。
補論② 特別職の地方公務員の身分に係る規定
地方公務員法は基本的に一般職にのみ適用されると上述しました。特別職の身分について、地方公務員法では、懲戒処分や人事委員会委員の身分等、ほんの少しだけ関係する記述がありますが、そのほかには何ら規定が置かれていないということになります。そして、これを除くと、法律のレベルでは、特別職の身分について包括的に定めたものは存在しません。
したがって、特別職の身分については、各自治体の定める条例・規則において定められていたり、それも無い場合には、個々の事案に応じて任命権者が判断したりしているということになります。
まとめ
- 特別職とは、恒久的でない職または常時勤務することを必要しない職であり、「職業的公務員」ではないとされるものである。
- 一般職とは、特別職以外の地方公務員である。
- 一般職には地方公務員法が全面的に適用されるが、特別職には基本的に適用されない。
- 特別職に該当するのは、市町村長、知事、副市長村長、副知事、市交通局長、監査委員、教育委員会委員等がある。