公務員試験では、多くの科目が課されますが、そこで話題になるトピックとして、「有利になる大学の学部はあるのか」といったものがあります。この点について私見をまとめましたので、よろしければご覧ください。
先に結論を述べると、世間でも言われていることですが、法学部及び経済学部は有利に働く場合があります。以下では、それぞれ詳述していきます。
法学部は公務員試験において有利に働く
法学部の在学生や出身者であることは、公務員試験において有利に働く場合があります。その理由は次のとおりです。
筆記試験においてカバーできる範囲が広いため
その理由の一つは、法学部での勉強は、公務員試験の筆記試験と重複している部分が多いためです。たとえば、法学部であれば学部1~2回生の間に憲法、民法、行政法について学ぶことが一般的ですが、これらの3科目は、国家総合職、国家一般職、地方上級、都庁・特別区、裁判所事務官、財務専門官等、基本的にすべての行政系公務員試験において出題があります。潰しが効くのです。
特に学部1~2回生が修得する法学の一般知識や、基礎的な論点は公務員試験において有用です。一方で、学部3~4回生になると判例分析等のケーススタディ等、アカデミックに寄った研究に勤しむことが多くなるため、公務員試験との関連は薄くなります。
なお、下述する「経済学部」と「法学部」のどちらが有利に働く場面が多いかというと、筆者は法学部の方が有利なことが多いと考えています。いずれも公務員試験の筆記試験においては有利になり得ますが、次の理由は法学部に固有のものだからです。
役所側が「法学部」を欲しがっている場合もあるため
また、これは場所にもよりますが、役所側が法学部の出身者を採用したいと考えている場合もあります。想定されるのは国家総合職や国家一般職(本省)の官庁訪問です。特に国家総合職では法律の改正・制定業務に携わる機会を得ることが多いため、人事運営の計画として、「〇人の採用枠のうち、〇人くらいは法学部出身者を採りたい」といったように考えていることもあるのです。
特に中央省庁では、近年はその傾向が薄れてきている者の、東大法学部の出身者がかなり目立ちます。
経済学部は公務員試験において有利に働く
もう一つの経済学部についても、世間で言われているように、公務員試験において有利に働く場面が多く見られます。その理由は次のとおりです。
筆記試験においてカバーできる範囲が広いため
まずは、法学部と同様に、公務員試験の筆記試験と重複している部分が多いためです。主に公務員試験におけるミクロ経済学とマクロ経済学は、経済学部であれば「経済原論」「経済理論」等の科目の講義によって履修済みであることが多いからです。また、国家総合職経済区分で出題のある計量経済学についても、人によっては学部時代に修得していることがあります。人気のある国税専門官の試験においても、専門記述形式で経済学の出題があるため、有利に働きます。
ただし、大学で得られる知識は学術的で「狭く深い」ことが多いのに対して、公務員試験の出題は「広く浅い」ものであるため、そのギャップには留意しなければなりません。経済学部(や法学部)の出身者であっても、公務員試験にアジャストした勉強は必ず必要になります。
経済区分は倍率が低い場合が多いため
また、試験種によっては、「法律区分」と「経済区分」のように、出題される科目を選択して受験するものがあります。たとえば国家総合職はこれに該当します。国家総合職の場合、例年、法律区分の倍率が極めて高い一方で、経済区分の倍率は低水準に留まっています。
たとえば、近年の両区分の倍率は以下にまとめていますが、これを見れば一目瞭然です。
このように「倍率」といった側面から見ても、経済学部出身者は、その受験戦略にもよって有利に立ち回ることができるのです。
「志望省庁に適した専攻の学部」
以上のとおり、法学部、経済学部で学んだ経験は基本的には公務員試験において有利に働きますが、これは一般論です。
よりミクロに見た場合、「志望省庁に適した専攻の学部」の出身であることが、特に面接試験等において、志望動機等を合理的に説明できるため、有利になり得ます。合点のいく志望動機を作りやすいということは、大きな武器になります。枚挙に暇がありませんが、たとえば、事務系(文系)公務員の場合、以下のようなパターンが考えられます。
- 国税専門官・国税庁を志望:
商学部で簿記会計論を専攻していた場合に有利に働き得る。 - 文部科学省を志望:
教育学部で教育学を専攻していた場合に有利に働き得る。 - 外務省専門職・外務省を志望:
国際教養学部や外国語学部や共生政策や外国語、リベラルアーツを専攻していた場合に有利に働き得る。 - 労働局・厚生労働省を志望:
法学部で労働法を専攻していた場合に有利に働き得る。
面接官や人事課職員を納得させられるかがとにかく大事です。
他学部出身者でもそこまで気にすることはない
一方で、付言しておきたいのは、非法学部・非経済学部出身者であっても、そこまで気にすることはないと言うことです。ごく僅かな例外を除けば、基本的に公務員試験は実力勝負ですし、上述のとおり、試験対策は大学での学びとは性質の異なるものです。公務員試験のための勉強をすれば如実に合格可能性に反映されます。実際、国家・地方問わず、様々な学部の出身者が採用されています。
そもそも、国家総合職の教養区分の流れを汲んで、自治体の中でもほぼ面接試験のみで合否を決定する制度を導入しているところも増えてきています。今後、公務員試験はますます合否が出身学部に左右されなくなってくることが予想されます。
また、国家総合職の場合であれば、各省庁の内定者が作成しているパンフレット(ググれば出てきます)において、内定者の大学時代の専攻が明らかにされている場合があります。省庁によっては公開されていない場合もありますが、どこの省庁も状況は似たり寄ったりなので、ご覧になれば参考になるはずです。