国家公務員総合職と、国家公務員一般職のうち本府省採用の場合に、どれくらいの早さで昇格していくのかについて記事します。
なお、昇格とは厳密には俸給表の級(1級~10級)が上がることを指しますが、この記事では、係員級や主任級からスタートして、係長級や課長補佐級等の上位の職位に進んでいくことを昇格と表現します。
このモデルについては、一応人事院や各省庁が公にしているものがありますが、人事院によるものはだいぶ古くなっていますし、省庁によってもバラつきがあるため、各省庁の中央値をとるようなイメージで一般的な昇格のモデル年数を示したいと思います。
国家公務員総合職の昇格のモデル年数
まずは国家公務員総合職についてです。
採用1年目:主任級(事務官、主任等)として採用
採用1年目は、国家公務員総合職の大卒や院卒区分であれば、主任級から始まります。俸給表でいうと2級に該当します。国家一般職の場合は、その下の係員級から始まるため、スタートの時点で差があるということになります。
採用4~5年目:係長級(係長、主査、専門職、専門官等)へ昇格
採用4~5年目で、係長級に昇格します。俸給表でいうと3級です。実務では、主任級と係員級の差を意識することはなく、両者は同じような仕事をこなしていることが多いですが、係長級になると明確に権限が大きくなり、部下を持って仕事をするという感じになります。主任級まではルーティンワークや事務的な作業が多かったのに対して、係長級以上では徐々に「判断」を求められることが多くなってきます。
なお、経済産業省等では、まだ俸給表で3級に至っていないにもかかわらず便宜上「係長」と名のついたポストに総合職を充てることがありますが、このような例外はこの記事では除きます。
採用7~10年目:課長補佐級(課長補佐、参事官補佐、専門官等)へ昇格
採用7~10年目で、課長補佐級に昇格します。俸給表でいうと5級です。霞が関の中で特に激務なイメージがあるのは課長補佐級の仕事です。世間のイメージのとおり霞が関の無理な働き方は議員対応に起因している部分が大きいですが、多くの役所では、議員レクや質問取りなどの議員対応は主に課長補佐が担っています。
霞が関を去る人と、霞が関に残る人はこの課長補佐時代に峻別されるような印象もあります(決して霞が関を去ることがネガティブだという意味です。)。
ちなみに、この7~10年目くらいまでに、総合職であれば地方自治体や国の出先機関への出向を経験することがほとんどです。本府省では係長級や課長補佐級であっても、たとえば出向先が県ならば課長級、市町村ならば部長級、税務署なら税務署長といった具合に重職を務めることが多いです。
採用17~23年目:室長級(室長、企画官等)へ昇格
採用18~22年目で、室長級に昇格します。俸給表でいうと7級で、ここからは管理職手当(俸給の特別調整額)の支給があります。
室長等は、課長に次ぐ大きな裁量を持っています。課長補佐級までの職と異なるのは、室長級以上の職では、プレイヤーとしての役割を担うことが極めて小さくなるということです。組織をマネジメントしたり、表舞台に立ってマスコミや他省庁等の外部機関に説明したりことが主な仕事になってきます。
また、このくらいになると、省庁によってポストの数に乖離があるため、昇格するまでの所要年数も大きく異なってきます。このサイトでは、室長級、課長級に至るまでの所要年数を省庁別に一覧化したことがありますので、よろしければ以下の記事をご覧ください。
かいつまんでいうと、昇格が早いのは経済産業省、人事院及び会計検査院で、昇格が遅めな官庁としては農林水産省や法務省等が挙げられます。
採用22~28年目:課長級(課長、参事官、管理官等)へ昇格
採用22~28年目で、課長級に昇格します。俸給表でいうと9級に該当します。課長級というと、日系大手企業でも暫く勤めれば割と誰でもなれる印象がありかもしれませんが、本府省の課長級は所掌する業界に絶大な権限を持っています。いわゆる高級官僚と呼ばれるのもこれくらいからです。
所掌する国の出先機関や自治体、企業等に対する通達等の文書は、課長の名前で発出することも多いです。その業界に対して、課長職の名前がずっと残り続けることになります。
本府省の課長級になってから出向する機会はあまりありませんが、もし出向する場合は、市町村等の副首長や、公共政策大学院の教授(准教授等ではなく「教授」です。)、出先機関の長等といった、極めて職責の大きいポストに就くことになります。
今回、採用22~28年目で昇格するとしましたが、このサイトが集計したデータを見ると、平均的には採用後25.5年を経て課長級に上がることになります。例えば2000年代くらいには、課長級には22年くらいで上がるのが一般的でした。更に時代を遡ると、15~20年目くらいで課長級に上がっていたこともあるそうです。国家総合職の昇格のスピードは、年を追うごとに緩やかになっていることが分かります。
また、多くの国家総合職は、霞が関に残り続けた場合は課長級職で定年を迎えることが多いです。
採用31年目以降:審議官級以上へ昇格
採用31~38年目あたりで、審議官級に任用されます。俸給表は多くの職員が適用を受ける行政職俸給表ではなく、指定職俸給表の適用を受けることになります。国家総合職であれば基本的に課長級には全員が上がりますが、審議官級以上の指定職として任用されるのは一部です。さらに、審議官級に昇格した人の中でも、なるべく若いうち、例えば50代前半くらいの間に審議官に上がった人が、数年後に局長級、更に数年後に事務次官へと駒を進めていくことになります。
なお、審議官級のポストの数についても、省庁によって偏りがあります。「一部の人が審議官級以上になる」という省庁が多いですが、中には、基本的に全ての国家総合職が審議官まで上がるという官庁もあります。
国家公務員一般職(本府省採用)の昇格のモデル年数
続いて、本府省に採用された国家公務員一般職の場合です。
採用1年目:係員級(係員、事務官等)として採用
国家一般職として採用された場合、基本的に係員級からスタートします。俸給表の1級に該当します。
採用4~5年目:主任級(事務官、主任等)へ昇格
その後、採用4~5年目で主任級に昇格します。俸給表の2級に該当します。上述したとおりですが、係員から主任に上がったとしても仕事の内容に大差ありません。プレイヤーとして係長や課長補佐のもとでバリバリ活躍することになります。
採用8~11年目:係長級(係長、主査、専門職、専門官等)へ昇格
採用8~11年目で係長級に昇格します。俸給表の3級に該当します。仕事内容は上述のとおりで、徐々に裁量が大きくなってきます。
国家総合職であれば4~5年目くらいで係長級に上がっていますので、ちょうど2倍くらいの早さの違いがあることが分かります。
採用16~20年目:課長補佐級(課長補佐、参事官補佐、専門官等)へ昇格
採用16~20年目で課長補佐級に昇格します。俸給表の5級に該当します。
課長補佐級になるまでの期間についても、国家総合職であれば7~10年間くらいですので、ちょうど2倍くらいの開きがあることになります。
そして、国家一般職で採用された場合には、そのまま暫くして6級に上がり、課長補佐級で定年を迎えることが多いです。
採用25年目以降:場合により室長級(室長、企画官等)へ昇格
国家一般職の場合でも、めぐりあわせが良ければ室長級以上に昇格することも可能ですが、採用後25年くらいはかかります。
国家一般職として室長級になれるかどうかは、省庁によってその可能性は大きく異なります。このサイトでは、以下のとおり、国家一般職として採用された場合に室長級以上に上がりやすい省庁がどこか検討していますので、よろしければご覧ください。
このように国家総合職と国家一般職のキャリアパスを比較すると、霞が関では国家一般職の肩身が狭いように思えてしまうかもしれませんが、組織のマネジメントや政策立案を担う国家総合職に対して、国家一般職は基本的にスペシャリスト、プレイヤーになることを期待して採用されていますので、そもそもこの点において明確に差別化ができています。したがって、採用試験種による上下関係を意識することはあまり無いのではないかと思います。
採用30年目以降:課長級(課長、参事官、管理官等)へ昇格
同様に、国家一般職でも、一部の人は課長級に昇格することが可能です。その場合でも30年くらいはかかることが多いです。
ただ、霞が関の課長級職は、全体の8~9割くらいは国家総合職が占めており、残りの1~2割を国家一般職大卒区分や、高卒者区分の出身者が占めています。数的には圧倒的に国家総合職出身者が多いです。
なお、国家一般職として室長級や課長級に上がる人は、課長補佐くらいに「幹部候補育成課程」の対象者に選ばれていることが多いです。国家一般職の中で誰を管理職(室長級以上)にするかについて、ある程度若めの頃から目星をつけて人事行政を行っていることが多いのです。
まとめ
以上です。最後に、これまでの記述を一覧化すると、以下のとおりとなります。
国家総合職・国家一般職の昇格の所要年数 | ||
職級 | 国家総合職 | 国家一般職 |
係員級(1級) | (―) | 1年目 |
主任級(2級) | 1年目 | 4~5年目 |
係長級(3~4級) | 4~5年目 | 8~10年目 |
課長補佐級(5~6級) | 7~10年目 | 16~20年目 |
室長級(7~8級) | 17~23年目 | 場合により25年目~ |
課長級(9~10級) | 22~28年目 | 場合により30年目~ |
審議官級以上(指定職) | 31年目~ | (難しい) |