私は、大学卒業後、まずは地方公務員(特別区Ⅰ類)として勤務したのち、国家総合職試験を受けなおして、某官庁に入庁した経験があります。
雑談ベースのゆるい記事になりますが、国家総合職として勤務した経験を振り返り、その仕事としてのメリット・デメリットについて私見を書き連ねていきます。皆さんのキャリア選択の参考になれば幸いです。
毎年、「キャリア官僚の合格者、東大卒が過去最低」「国家公務員総合職試験の倍率が過去最低」等と報道されるようになり、公務員の人気が没落する中で、少しでも参考にしていただければ幸いです。
メリット①独自の業務に携われる
まず一つ目は、国家公務員ならではの経験を積むことができるという点です。
国家公務員ならではの経験とは何でしょうか。翻って言えば、民間企業では積むのことのできない経験ということになります。容易に想起できるのは、「国会との関わり」だと思います。法律を作る権能は立法府としての国会(国会議員)にあります。一方で、実際にその法案を考えているのは多くの場合、官僚です。
日本は法治国家ですから、民間企業として勤める場合、会社法、民法、商法、その他の各業界の個別法に服して業務を行うことになりますが、一方、中央省庁では、その法律自体を作ったり、制度を監督したりといったことが主務にあたります。この点において、国家公務員は独自の経験を積むことができると考えます。
たとえば、採用時に内閣総理大臣から訓示を受けたり、国会議員や〇〇庁長官にレクチャーをしたり、国会で用いられる原稿を作成したりといった経験は、すべて国家公務員に固有のものです。
メリット②若くしてマネジメントの経験を得られる
続いて、特に国家公務員総合職(旧「Ⅰ種」)に着眼した場合のメリットとして、若くして公務におけるマネジメントの経験を得られるという点にあります。
民間企業と異なり、公務員の世界では、地方・中央ともに管理職に就くタイミングは遅めになります。本府省に採用された国家公務員総合職の場合、おおよそ採用後20年程度(42歳程度)で室長級になり、ここで最初の管理職を経験します。その後、採用後25年程度(47歳程度)で課長級に上がります。一方、国家公務員一般職として本府省に採用された場合は、管理職に任用されることなく定年を迎えることが多いです。また、昇進の早さは省庁によって乖離があります。このことについては、以下の記事に詳しいです。
本府省の課長級というと、政府機関や地方自治体、財界等に発出する文書の差出人となることもあり、各業界に極めて大きな影響を及ぼすポストです。それらの文書において、永きに渡って名前が残ることもあります。
また、国家公務員総合職では、多くの場合、各省庁の地方出先機関、地方自治体、民間企業、独立行政法人等に出向の機会があります。そして、出向の場合には、本府省では課長補佐級であるが、出向先では管理職ポストに就くというようなことが一般的です。たとえば、30歳くらいの国家総合職職員が地方自治体で課長級ポストに任用されるというのはよくある話です。地方自治体で課長級に任用されるのは早くても30代後半、ボリューム層は50歳くらいではないでしょうか。そう考えると、かなり貴重な経験を若い時代に積むことができると言えます。
メリット③同僚や上司に優秀な人が多い
続いて、同僚や上司には優秀な人が多いです。
学校歴がその人の優秀さを物語るとは限りませんが、国家総合職は東大生の代表的な就職先として知られてきました(徐々にその図式は綻びつつありますが…)。官庁による違いもありますが、かつては、国家総合職としての採用者の過半数を東大出身者が占めるというところもありました。このことについては、以下の記事にまとめています。
また、学校歴にかかわらず、国家総合職試験は易化傾向にあるとはいえ、絶対的には難しい試験です。それをクリアして入庁した後も、短い期間で多量のタスクをこなす必要のあるポストを幾重にも渡って経験することになるため、基本的には周りには優秀な人が多いです。そして、それを他者に強要するという雰囲気はあまり無いにもかかわらず、自発的に努力を重ねるというタイプの人が多いような気がします。
デメリット①仕事に多くの時間を割く必要がある
一方で、デメリットについて見ていきます。世間でも言われているように、本府省に勤務する国家公務員は、総合職、一般職ともに基本的には激務です。働き方改革等が謳われるようになり、人事院も手を尽くしてはいますが、焼け石に水です。現場の仕事量自体が変わらない限り、抜本的な改革には至らないと考えます。
私は地方公務員を経て国家公務員となりましたが、質的には、地方公務員時代の方こそ大変でしたが、量的には国家公務員時代の方が圧倒的に大変でした。めぐりあわせが良かったため、タクシー帰りはほぼ経験しなくて済みましたが、時計が天辺を指す頃まで仕事したことは数えきれないほどありました。
国家公務員時代、周りを見渡すと、結婚して、子どもを育てて、家庭を大切にして…といったような人生を歩んでいる人は少ないように思えました。ワークライフバランスという言葉が当然に浸透した現代社会において、その制度設計を担う役割のある中央省庁に勤める人の労働環境が整備されていないのは大きな問題です。
ひいては、長時間労働は健康を害するおそれもありますので、本府省勤めの方には、本当に無理しないでいただきたいです。身体や心を壊して退職する人を何人も見てきましたが、まずは周りに相談したり、病気休暇を検討したりするべきです。「逃げるは恥だが役に立つ」です。
デメリット②金銭的には機会損失がある
もう一つのデメリットは、金銭面です。国家公務員総合職の給与は、世間一般と比較すれば高い水準にはありますが、採用者の多くは東京大学や京都大学を始めとした日本トップレベルの大学を卒業した人材です。
外資系企業や総合商社、メガバンク、コンサル等に就職した場合と比較すると、年収ベースでも、生涯賃金ベースでも国家公務員総合職はそれらに大きく劣ります。
その点で、新卒で国家公務員総合職として働くということは、人にもよりますが、金銭的な機会損失になる場合があります。
まとめ
まとめです。私の考える、仕事としての国家公務員総合職のメリット及びデメリットは以下のとおりです。
国家公務員総合職として働くことのメリット
- 独自の業務に携われる
- 若くしてマネジメントの経験を得られる
- 同僚や上司に優秀な人が多い
国家公務員総合職として働くことのデメリット
- 仕事に多くの時間を割く必要がある
- 金銭的には機会損失がある