これから特別区を受験されたいと考えている方に、特別区人事委員会HP上の「採用試験案内」の次に読んでいただきたい記事です!
特別区Ⅰ類は、半年間程度まとまった時間がある学生の方等であれば、余裕を持って合格できる試験だと考えています。特に近年は顕著に易化が進んでいるため、人によっては3か月程度の期間で合格に至ることもできると思いますし、実際にそういった方も見てきました。ここでは、独学で特別区Ⅰ類の一次試験に合格するまでにするべきことの流れについて、私の経験に基づき時系列順にまとめました。
なお、私が受験を経験したのは暫く前のものであり、試験日程等が現在と異なっている部分がありますのでご注意ください。
前年12月:採用試験案内等確認
まず、特別区人事委員会の公式資料(採用試験案内等)を確認しましょう。この手のものは外部サイトではなく、一次情報を得るべきですので当然ですが公式サイトにあたりましょう。この記事においても、ここでそれらを抜粋して紹介することには意味がありませんので、特別区人事委員会のリンクを貼るに留めます。
前年12月:筆記試験の勉強科目の選定
専門試験
特別区I類の専門試験は11科目に渡り、問題数でいうと55題が出題されます。当日はそのうち任意の40題を回答すればよいので、8~9科目程度に絞り、勉強しておくとよいです。また、すべての公務員試験に共通して受験者の得点の標準偏差は教養試験よりも専門試験の方が大きいので、専門試験にウェイトを置いて勉強を進めていくべきです。
私の場合、憲法、行政法、民法1、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学、政治学、行政学、社会学の9科目を対策することにしました。残る民法2と経営学の2科目を捨てることにしました。
科目を選択するにあたっては、併願先で使用することになる科目や、もし内容に心得がある科目があればそれを参考に選択すると良いです。本屋に行って過去問集を立ち読みし、自分との相性を確かめることもまた良いです。これは見逃されがちなのですが、以下のように、大手予備校が予備校生の科目別の正答率を公表しているので、こういったものを参照してコストパフォーマンスも加味するべきです。特別区I類の専門試験は、選択する科目によって難易度(正答率)に乖離があります。例年正答率が高いと思われるのは憲法、行政法、行政学、社会学あたりです。一方、民法1及び民法2、政治学等は年度により正答率が低くなるイメージがあります。
教養試験(基礎能力試験)
教養試験については、専門試験ほど重点を置くべきではありませんが対策はすべきです。私はもともと数的処理のうち数的推理はある程度解くことができたのですが、判断推理と空間把握はまったく非才だったようで、勉強をしましたが大きく結果に結びつきませんでした。勉強時間1時間あたりの得点向上率は専門試験の科目の方が高いので、そこにも注意するべきです。
私の場合、時事問題(社会事情)、数的推理、判断推理、英文理解について簡単に対策を行い、ほかの科目はまったく勉強しませんでした。教養試験の社会科学については専門科目の各科目とリンクしている部分もあり、また文章理解や資料解釈はそもそも勉強しなくともある程度得点できるはずです。
12月~2月:専門試験対策
公務員試験の筆記試験の対策の基軸は過去問集です。まずは専門試験の勉強に使用する過去問集を決めて、とにかく解きまくります。基本的には1つの科目につき1つの過去問集を使用しましたが、経済学や民法のように初学者には手厳しいと感じたものは導入用のテキストも使用しました。過去問集は専門試験であれば最終的には5週くらいはしました。試験3か月前くらいまでに2週以上できれば十分ではないでしょうか。各科目の勉強方法や、私が使用した過去問集等については追って記事にしたいと思っています。
過去問集での勉強は、理解しながら進めないといけない1週目と、「こんなに忘れてしまってるんだ…」と自戒に陥ってしまう2週目が大変でした…。その先の3週目以降は過去問集を回すスピードも記憶定着率も加速度的に向上してくるはずなので、信じて頑張っていきましょう!
1月頃:合同説明会
例年この時期に23区の合同説明会が開催されています。3月の申込みの際に志望する区を第三志望まで決めておく必要があるので、選定のためにも基本的には合同説明会には参加しておくべきです。特別区人事委員会のホームページやツイッターを確認しておきましょう。
ちなみに、この申込みの際に志望した区は、それ以降に変更することはできません。
3月頃:筆記試験の目標点数を決める
特別区I類試験では、平均点、標準偏差、科目間の傾斜等が一切公表されておらず、ボーダーが算出できない仕組みとなっています。そもそも国家系の試験と異なり1次試験の合否に論文試験の結果が加味されるため、一義的な多肢選択式試験のボーダーというもの自体が存在しません。それでも、試験という特性を鑑みて、ある程度勉強が進んできたら、目標を定めた上で勉強を進めていくべきです。専門試験の学習が一段落したら、一度過去問を解いてみて、感触を確かめてみることをおすすめします。
私の場合、専門試験は28点、教養試験は24点を目標としていました。さらに、その内訳も算定していました。教養試験であれば、「文章理解5/5、英文理解3/4、数的処理7/15、資料解釈4/4、一般知識5/12」の計24/40といった具合です。
また、ボーダーについては明らかになっていないといったものの、過去の受験生の合否の報告に基づくと、専門試験及び教養試験の素点合計が45点は欲しいところです。40点を下回ると合格の可能性は薄いです。ボーダーについてはいずれ記事にしたいと思っています。
3月下旬:受験申込み
公式ホームページを確認して、忘れずに申込みを行ってください。第三志望まで志望する区を決めますが、受験後ないし採用後は定年を迎えるまで基本的に変更できませんので、よく考えて決定するべきです。(志望する区の決め方についても追って記事を書く予定です。)
3月~4月:専門試験対策&教養試験対策
専門試験の勉強が一区切りついてきたら、教養試験の勉強も並行して進めていきます。教養試験のうち数的処理は過去問集が基軸になりますが、個人的には、英文理解等は対策するとしても大学入試の時に使用した英単語帳を見直すくらいで十分だと思っています。時事問題(社会事情)について使用する教材は一択です。過去問集ではなく、例年2月頃に最新刊が発刊される『速攻の時事(実務教育出版)』を使用してください。試験当日は受験生たちが速攻の時事を持ち歩いているという奇妙な風景が見られます。
4月下旬~当日:専門試験復習&教養試験復習&論文試験対策
専門試験であれば過去問集を5週目くらいまで回して知識を定着させます。教養試験もある程度の水準で構いませんので、過去問集、速攻の時事、英単語帳等を1~3週くらいして対策を終了させます。
論文試験
特別区の1次試験において論文試験の採点形式や比重はブラックボックス化されていますが、教養試験及び専門試験の素点合計が30点代でも合格したという報告が散見されており、これらは論文試験の評価が高かったことによるものと推察できます。論文試験は特別区I類試験において非常に重要です。
論文試験の対策については追って記事にするつもりですが、簡潔にいえば出題されそうなテーマを予想して、それらに係る最近の政策をいくつか調べ(もしくは速攻の時事で引けばよいです。)、回答案の骨子を記憶しておくことです。
スケジュール表化
以上のスケジュールを表にまとめると、次のようになります。
とにかく、半年前くらいから専門試験の勉強を開始して、教養試験は数か月前から軽く触るくらいで大丈夫です。直前期には論文試験対策にも着手する必要があります。
まとめ
- 初学者でも、すべての対策を含めて半年間あれば時間的には十分
- まずは専門試験から重点的に対策するべき
- 勉強を始める前にコストパフォーマンスなどを意識して科目を選択する
- 特別区I類では国家系試験と異なり論文試験も重要。試験数週間前から他の勉強と併行して進める。
私の場合、新卒の際、上述の流れで専門試験32点、教養試験23点で、ある程度の余裕を持って合格することができました。
他にも追って個別的に記事にしたいことが沢山ありますが、全体の対策の流れとしては上述のとおりとなると思います。皆さんの合格の一助となれば嬉しいです。