この記事では、公務員を退職する際に必要になる手続や留意点についてお伝えします。なお、国家公務員と地方公務員の両方に対応しうる記事とします。
山島なお、筆者は地方公務員と国家公務員のいずれも退職した経験があります。
なお、勤務時間がフルタイムの(又は社会保険の加入要件を満たす)公務員を想定した記事です。
前提:辞職願の提出
辞職願とは
まず大前提として、辞職願(役所によっては「退職願」等)を職場へ提出することが必要です。
公務員の人事制度として、職員を退職させるという行為は任命権者(役所の中でかなり偉いポジションの人)でなければ行えないという建付けになっていることが多いです。職員本人が「辞めたいです。」と言って直ちにやめられるわけではないということです。
だから、「辞めさせてください」と書面をもって任命権者へお願いするためのものが「辞職願」ということです。
辞職願の様式は職員の目の触れるところには置いていないことが多いです。
実務上は、直属の上司や所属長(課長等)に対して辞職の意思を伝えることで、人事課を通じて辞職願の様式を貰えるというような形になります。
何日前までに辞職願を提出すべきか
国家公務員の場合は明確な定めはありませんが、地方公務員の場合、自治体の内規により、「辞職日の何日前までに辞職願(退職願)を提出する」という規定が置かれていることがあります。
たとえば、東京の千代田区役所の場合、千代田区職員服務規程によって、以下のような規定が置かれています。
千代田区職員服務規程
(退職)
第14条 職員は、退職しようとするときは、特別の事由がある場合を除き、退職しようとする日前10日までに、退職願を提出しなければならない。
千代田区例規集(東京都)
この場合、退職日の10日前までに退職願を提出するよう定められていますが、現実には、遅くとも数か月前、可能なら半年ほど前には伝えておくとトラブルになりにくいです。
建付けは以上のような規定が置かれている役所もありますが、業務の引継ぎなどに時間をかけることを考えれば、10日というのは少し非現実的です。
公務員の退職に係る役所内の手続については、以下の記事で更に詳しく述べていますので、よろしければご覧ください。


退職後の社会保険
ここからが本記事の本題です。
公務員を退職してからも、社会の一員として生きていくことに変わりありません。そうすると、国民として、あるいは市民として必要な諸手続があります。
まず必要になるのが、社会保険関係の手続です。
公務員は通常、共済組合に加入しています。例えば東京都の職員であれば「東京都職員共済組合」、国土交通省の職員であれば「国土交通省共済組合」といったものです。
- 公務員を退職すると、同時に共済組合の資格を喪失します。
そこで、以下の手続が必要となります。
年金保険
公務員として在職している期間は、その共済組合によって「共済年金」に加入していることになりますが、退職と同時にその資格を喪失します。
「国民皆年金」という言葉があるように、公務員を退職すると、切れ目なく、他の年金保険に移行しなければなりません。
この際の選択肢としては以下のものがあります。
- 切れ目なく転職する場合は、そのまま新しい勤め先の厚生年金へ加入する。
- 以上に当たらず、配偶者がいて、かつ条件を満たし、希望する場合は、配偶者が加入している社会保険の扶養に入る。
- 以上のどちらにも当てはまらない場合(一旦無職やアルバイト)は、国民年金に加入する。
厚生年金へ加入する場合はそれぞれの会社(の健康保険組合)とやり取りすることになりますが、国民年金へ加入する場合は、所在する市町村で手続を行う必要があります。退職したら速やかに役所で手続しましょう。
なお、国民年金の保険料の金額は定額で、毎月1.7万円程度です。公務員の共済年金よりは掛金は安いですが、その分年金として将来貰える金額も抑えられています。
健康保険
次に、健康保険についてです。
年金と同様に、「国民皆保険」という言葉があるように、切れ目なく、何らかの健康保険(医療保険)に加入する必要があります。
選択肢は、年金保険と似ていますが、少し異なる点もあります。
- 切れ目なく転職する場合は、そのまま新しい勤め先の健康保険へ加入する。
- 以上に当たらず、配偶者がいて、かつ条件を満たし、希望する場合は、配偶者が加入している社会保険の扶養に入る。
- 以上のどちらにも当てはまらない場合(一旦無職やアルバイト)は、国民健康保険に加入するか、元の共済組合の資格を任意継続する。
忘れがちなのが、共済組合にある任意継続という制度です。現役時と比べて保険料は少し割高になりますが、保険料さえ払えば、最大で約二年の間は、公務員を辞めてからも、元の共済組合に加入し続けることができるのです。
任意継続を希望する場合は、手続に期限が定められていることがあり、期限を過ぎると希望しても継続できないことがあるため、早めに共済組合に連絡を入れて、手続を行うべきです。
国民健康保険と任意継続のどちらを選ぶかは、保険料の多寡等によって決するとよいです。もし気になる場合は、国民健康保険の保険料は市町村の国民健康保険担当部署で、任意継続の保険料は当該共済組合に問い合わせれば教えてもらえます。
退職手当・失業給付
退職手当
続いて、退職手当についてです。いわゆる退職金です。
フルタイムの公務員であれば、勤続年数がおおむね1年以上の場合、退職手当の支給を受けることができます。懲戒免職でもない限り、勤続年数等の諸条件さえ満たせば、誰でも支給を受けることができます。
定年退職の場合と比して、自己都合退職の場合は金額が小さくなります。
具体的な金額は本当に様々なので一概には言えませんが、1年で辞めた場合なら数十万円しかもらえない一方、定年退職であれば何千万円の支給を受けることができます。
手続については特筆することはありませんが、退職願を提出すれば、あとは役所の給与担当部署から連絡が来るはずですので、それに従えば問題ありません。
失業手当
ここがポイントですが、公務員を退職して無職になった場合、失業手当の支給を受けることはできません。
- フルタイム勤務等のほとんどの公務員は雇用保険に加入していないため、失業手当の支給を受けることはできないのです。
普段の給与からも、公務員の場合、雇用保険料というものは差し引かれていないはずです。
ここは民間企業との大きな違いです。
「失業手当に代わる制度として公務員には退職手当がある」という考え方に基づくそうです。(しかし、大企業であれば退職金制度も当然ありますし、雇用保険の対象にもなるので、見方によっては公務員が不利なようにも思えます。)
若くして公務員を退職した場合は、民間企業退職者であれば恩恵を受けられるはずの失業手当はもらえない一方、退職手当も大した金額はもらえないという状況に陥ることがあるため、特に注意したいです。
税金関係
税金関係で留意したいのは、住民税(地方税)と所得税(国税)とです。
住民税
まずは、住民税についてです。
住民税は、所得税と異なり、前年(1月1日から12月31日)の所得を基に、翌6月から支払う必要があるものです。このようにタイムラグがあるため、退職して無職になったとしても、その後1年ほどの間は、前年の所得に応じた高い金額を支払う必要が生じるため留意したいです。
具体的な支払の方法ですが、多くの場合は、退職することによって、特別徴収(給与からの天引き)から普通徴収(自分で納付書を使って支払う)に変わります。
特に手続を行わずとも、自動的に職場から居住市町村へ連絡が行く仕組みになっているため、本人の対応は不要です。住民税の支払いが必要になった勝手に納付書が自宅に送られておきます。
あるいは、事例は少な目ですが、最後の給与や期末勤勉手当から先の分をまとめて特別徴収するという手続を行ってくれる役所もあるようですが、このあたりは給与担当者によってもまちまちなので、あまり期待しない方が良いです。多くの場合は上述のとおり普通徴収になります。
所得税
続いて、所得税についてです。
所得税は、住民税とは異なり、現年課税されているため、退職して無職になった場合、それ以降は、基本的に支払いが生じることはありません。天引きしようにもその給与が無いからです。
また、無職になった場合は年末徴収が行われなくなるため、各種控除を申告する場合は、自らe-Tax等で確定申告の手続を行う必要があります。









