国家公務員は、退職した場合に退職手当(いわゆる退職金)が支給されることになりますが、その金額についてまとめます。金額の算出方法については、人事院のホームページや、退職手当法、人事院規則を参照するべきですが、そのすべてを理解するのは難解です。そこで、この記事では、おおむねの値として、国家公務員の退職手当の金額を勤続年数別に試算して、それを一覧化しました。あくまで目安程度ですが、ご参考になれば幸いです。
なお、この記事は国家公務員総合職(旧「Ⅰ種」)の場合を想定しています。国家公務員一般職(旧「Ⅱ種」等)については、以下の記事をご覧ください。
【国家総合職】勤続年数別の退職手当額の例の一覧
国家総合職の退職手当の例について、勤続年数別に示すと以下のとおりです。なお、国家一般職より国家総合職の方が、同じ採用区分内での昇進スピードに差はつきにくいため、より参考になるはずです。
勤続年数 | 退職事由 | 退職手当額例(調整額含) |
1年未満 | 自己都合 | 0円(支給なし) |
1年 | 自己都合 | 110,000円 |
2年 | 自己都合 | 230,000円 |
3年 | 自己都合 | 350,000円 |
4年 | 自己都合 | 470,000円 |
5年 | 自己都合 | 640,000円 |
6年 | 自己都合 | 780,000円 |
7年 | 自己都合 | 930,000円 |
8年 | 自己都合 | 1,090,000円 |
9年 | 自己都合 | 1,300,000円 |
10年 | 自己都合 | 1,930,000円 |
11年 | 自己都合 | 2,650,000円 |
12年 | 自己都合 | 3,210,000円 |
13年 | 自己都合 | 3,770,000円 |
14年 | 自己都合 | 4,220,000円 |
15年 | 自己都合 | 4,600,000円 |
16年 | 自己都合 | 5,620,000円 |
17年 | 自己都合 | 6,560,000円 |
18年 | 自己都合 | 7,250,000円 |
19年 | 自己都合 | 7,960,000円 |
20年 | 自己都合 | 9,770,000円 |
21年 | 自己都合 | 10,680,000円 |
22年 | 自己都合 | 11,630,000円 |
23年 | 自己都合 | 13,210,000円 |
24年 | 自己都合 | 14,290,000円 |
25年 | 自己都合 | 17,220,000円 |
26年 | 自己都合 | 19,230,000円 |
27年 | 自己都合 | 20,270,000円 |
28年 | 自己都合 | 21,370,000円 |
29年 | 自己都合 | 22,360,000円 |
30年 | 自己都合 | 23,340,000円 |
30年 | 早期退職 | 31,450,000円 |
31年 | 自己都合 | 24,090,000円 |
32年 | 自己都合 | 24,820,000円 |
33年 | 自己都合 | 25,410,000円 |
34年 | 自己都合 | 25,980,000円 |
35年以上 | 自己都合 | 26,540,000円 |
35年以上 | 定年退職 | 31,010,000円 |
どのような条件をモデルとしたかについては、以下のとおりです。
- 新卒で入庁した場合を仮定
- 勤務期間中に、病気休業等は取得しなかったものと仮定
- 採用後18年程度で7級室長に、23年程度で9級課長に昇格したものと仮定
- 10級課長職で定年を迎え、指定職には任用されなかったものと仮定
特に、退職時の役職については迷いましたが、この記事では10級課長級職としました。中には、さらにその先の審議官級や局長級以上の指定職に任用される場合もありますが、その場合には退職手当額は跳ね上がります。これら指定職の退職手当については、後述します。
まずは、この一覧表に基づき、主に以下のようなことが言えると考えます。
退職手当額は指数関数的に増加する。
以上のとおり、退職手当額は勤続年数に応じて増加しますが、その増加幅は「Y=aX」の一次関数的なものではなく、二次関数(指数関数)的なものです。たとえば、採用後8年後までは退職手当額は1年あたりで10万円程度しか増加していきませんが、採用後20年後頃では、1年あたりで200万円前後増加するようになります。
その理由の一つとして、退職手当には勤続年数に応じて算出される「基本額」と、退職直近5年間における職務の級に応じて算出される「調整額」があります。「調整額」は3級以上に勤めた場合に計上されますが、国家総合職の場合、遅くとも5年で3級に昇格し、その後も昇格のスピードが著しく早いため、国家一般職と比して退職手当額は大きくなります。
瞬間的に大きく増加するタイミングがある。
また、上掲の一覧表をよく読みこんでいくと分かりますが、瞬間的に退職手当額の伸び幅が顕著に大きくなっているタイミングがあります。国家総合職の場合では、特に採用後20~25年後頃の退職手当額の伸びが顕著です。これは、この辺りの退職手当額の支給割合の伸び率が高いことに加えて、国家総合職の場合にはこのタイミングで室長級や課長級に昇格する場合が多いことに起因しています。退職手当の支給割合は段階的に設定されている場合がありますので、きわどいタイミングで退職を検討している場合は、その段階を超えたところを見計らって退職するとよい場合があります。
退職手当はあくまで俸給(給料)によって算定される。
また、国家公務員の退職手当に関するルールとして、退職手当の算定額は、あくまで給料月額をベースとしています。すなわち、各種手当の影響を受けません。たとえば、住宅手当や扶養手当はもちろん、地域手当についても全く干渉しませんので、東京都で35年勤めた場合と、地方で35年勤めた場合であっても、号・級が同じであれば退職手当額も同じになるということです。
個人的には、扶養手当や住宅手当、管理職手当はともかく、地域手当まで一切影響しないというのは、少し違和感を覚えるところですね。
早期退職の場合の退職手当額は、そのまま働き続けて定年退職した場合とほぼ同じ
また、国家公務員には早期退職制度があります。省庁によって適用される年齢(及び勤続年数が異なりますが、早くて45歳以上で募集があるところがあります。多くの省庁では、「50歳以上かつ勤続年数20年以上」といった条件になっている場合が多いです。
早期退職者の募集に応じて退職した場合は、「自己都合退職」とみなされないことになり、退職手当の額は自己都合の場合と比して大きく増加します。
上の例では、勤続30年(新卒入庁を想定しているので53歳程度)で早期退職した場合の金額を31,450,000円と試算しています。これは、35年以上勤務して最終的に定年退職した場合の金額とほぼ異なりません。このように、かなり粗く捉えるのであれば、早期退職した場合の退職手当額は、そのまま働き続けて定年対象した場合の額と大きく異ならないと思って差し支えないでしょう。
指定職(審議官級、局長級、事務次官級等)の退職手当額
国家総合職の場合、10級課長職を経て、審議官級、局長級等の指定職に任用される場合があります。退職手当の基本額は俸給月額が算定の基礎となっていますが、これらの指定職では俸給月額が跳ね上がるため、それに釣られて退職手当額も飛躍的に高くなります。ただし、国家総合職の中でもここまで上り詰めるのは少数です。
最後に、指定職の場合の退職手当額も以下のとおり試算しました。すべて、55歳で指定職に任用され、その後定年退職した場合を想定しています。
勤続年数 | 退職事由 | 退職時役職(指定職の級) | 退職手当額例(調整額含) |
35年以上 | 定年退職 | 審議官等(指定職2級) | 41,140,000円 |
35年以上 | 定年退職 | 局長等(指定職4級) | 47,580,000円 |
35年以上 | 定年退職 | 外局長官等(指定職6級) | 54,660,000円 |
35年以上 | 定年退職 | 事務次官等(指定職8級) | 61,530,000円 |
いかがでしょうか。35年以上勤務して10級課長級で定年退職を迎えた場合が約3,400万円であるのに対して、審議官級を一か月でも経験した場合は、このように退職手当額は跳ね上がることになります。