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転勤の多い(又は少ない)公務員は何か?【国家公務員、地方公務員】

公務員は、職種、試験種によって転勤の多さや、転勤の範囲に偏りがあります。この記事では、特に転居を伴う転勤(以下、単に「転勤」という。)に焦点を当てます。転勤は人によってメリットにもデメリットにもなり得ます。実際に、転勤が多いという理由で折角勉強して入った官庁を退職したという方もいらっしゃるので、転勤を良しとするかは入庁前に真剣に考えておくべきです。

この記事では、国家公務員、地方公務員問わず、主な公務員の転勤の多さを5段階評価でランキング化していきます。なお、筆者は地方公務員と国家公務員のいずれも経験はしていますが、私見に基づく記事であることにご留意ください。あくまで参考程度に留めていただき、詳細は各官庁や自治体等の説明会において確認するべきです。また、本記事は事務行政系及び技術系の公務員を対象とします。消防や教員、公安系等については筆者が明るくないため、この記事においては除くこととします。

目次

転居を伴う転勤の多さ ★☆☆☆☆

  • 特別区
  • 村・町役場

特別区

最も転勤の少ない公務員の1つに、特別区職員(東京都における23区職員)が挙げられます。特別区は基礎自治体でありながら面積が小さいことが特徴です。僅か10km2くらいしか面積が無い自治体もあります。(地方の方からすればイメージがつきにくいかもしれませんが、例えば福岡市や名古屋市の面積は300km2です。同じ独立した基礎自治体でありながらこのように大きな違いがあるのです。)そのため、特別区では転勤という概念自体がほぼ存在しません。区域内に図書館等の出先機関はありますが、仮にこれらに配属になったとしても、最寄駅が1~2個ずれる程度なので通勤への影響はありません。稀に東京都等への出向もありますが希望しない限りは無縁です。これらを加味して、最も転勤が少ない公務員の1つになり得ると判断しました。

町・村役場

特別区と同様の理由で、自治体の中でも町・村役場となると出先機関もほぼ無いといっても差し支えなく、仮にこれらに配属となっても、通勤にも影響しない程度です。転居を伴う転勤が生じることはまずあり得ません。物理的に小さな自治体ほど転勤の可能性も小さいです。

転居を伴う転勤の多さ ★★☆☆☆

  • 一般市、中核市、政令市
  • 特許庁、会計検査院、内閣情報調査室(主に国家一般職本省)
  • 税関、労働局、経済産業局(国家一般職出先機関)

一般市、中核市、政令市

これらの基礎自治体では、総じて、勤務地が変更されることはあれど、転居を伴う転勤が生じることはまず無いです。市の面積が大きいほど転居を伴う転勤の可能性が高くなります。また、一般市よりも中核市、中核市よりも政令市の方が権能が大きく、それに伴って市内に多くの出先機関を擁するため、転居を伴う転勤の可能性も高くなります。したがって一概には言えませんが、いずれも可能性は低いです。

特許庁、会計検査院、内閣情報調査室(主に国家一般職本省を想定)

本省採用の国家一般職のうち、これらの役所は転勤の頻度が小さいです。たとえば特許庁はそもそも経済産業省の外局であり、会計検査院は支局を持たない機関です。普通にしていればいずれも勤務地が変更されること自体があまりありません。ものによっては地方の出先機関や自治体等への出向もあり得ますが、希望しない限り可能性は極めて低いと思われます。なお、これらのうち会計検査院については、転勤がほぼ無い代わりに、業務の性格上出張がかなり多くなるようです(年間50日間は出張しているとも言われる。)。

ちなみに、特許庁は国家総合職(技術系)、会計検査院は全区分の国家総合職の採用もしていますが、いずれも総合職で採用された場合は、全国転勤が前提とされるため、転勤の頻度は高くなります。

税関、労働局、経済産業局等(国家一般職出先機関)

出先機関採用の国家一般職のうち、転勤の頻度が小さいものとして、税関、労働局、経済産業局等が挙げられます。
税関については、管区内において転勤がありますが、税関の数自体がそこまで多くないため転勤先が限定的であり、それを踏まえて居住地を考えれば転居を抑えることができるため、この評価としました。
労働局については、採用の時点で各都道府県の労働局別に採用を行うため、転勤がまず生じませんさらに、2022年に人事運用の仕方が変わり、原則として採用された労働局以外に異動することはなくなりました。これが今後も維持される限り転勤が生じることはまず無いです。
経済産業局については、各管区に1つの経済産業局が置かれているため、明確な転勤先が存在しない状態となっています。

とはいえ、いずれも希望次第では各本省や他の機関への出向となる可能性がゼロではないため、★2つとして整理することとしました。

裁判所事務官(一般職)

裁判所事務官については、一応は管区内の裁判所内で転勤が生じるという建付けになっているものの、実態としては特定の都道府県から出るということは少ない運用となっていることが多いため、この評価としました。とはいえ、管区によって運用に差異があることが想定されるため、必ず説明会等で確認しておくべきです。

転居を伴う転勤の多さ ★★★☆☆

★3つの評価としたのは以下の公官庁です。ある程度の広範囲に渡る転勤が想定されており、場合によっては転居が必要となることもあり得ます。とはいえ、職場に事情を伝えていれば、配慮してもらえる可能性は高いです。この辺りでも、公務員生活において転居が伴う転勤を経験するのは0回か、数回程度の印象です。

  • 都府県庁
  • 運輸局、法務局等(国家一般職出先機関)
  • 本府省(国家一般職本省)
  • 国立国会図書館

都道府県庁

都府県庁はこの位置です。正直★2と★3の間くらいですが、基礎自治体(市町村)よりも区域が広範で転勤の可能性が高いため、差別化のためここに整理しました。新規採用後は県庁所在地にある本庁と、出先機関を交互に経験することが多いようです。区域の面積にもよりますが、そこそこ広い範囲での転勤が前提となるため、転居が必要となる場合も生じ得ます。

ちなみに、東京都においては島しょ部も管轄しているものの、島しょへは人事異動の際に希望した人が充てられるようになっているので、この点は気にすることはないです。むしろ、東京都よりも地方の県庁等の方が広範な転勤が生じる可能性が高いと考えています。

運輸局、法務局等(国家一般職出先機関)

多くの出先機関勤務の国家一般職はこの辺りに位置します。基本的には管区(東北圏、関東甲信越圏、近畿圏…)レベルでの転勤があり得るので、都道府県を超えた転勤が生じる可能性はあります。とはいえ、管区内の機関の数が少ない場合には転勤自体がそこまで頻繁にあるわけではないため、この評価としました。

もちろん、本人が希望すれば本省等への出向はあり得ます。

本府省(国家一般職本府省)

国家一般職のうち本府省勤務の場合、多くはこの辺りに位置します。ただし、上述したもの(特許庁等)は除きます。上述したものとの差別化を図るために一応★3としましたが、実際には★2と★3の間くらいだと思っています。可能性は低いですが、地方自体体等への出向を経験可能性もあります。

国立国会図書館

少しニッチですが、国会国会図書館はこの辺りになるかと思います。勤務地は東京都か京都府の2か所程度なので、それだけ聞くと東京と京都を往ったり来たりしなければならないとの印象を抱きます。しかし、これは国会図書館に勤める知人の話に過ぎませんが、実際はある程度の配慮もされるようです。したがって、実態を鑑みて、★3つの評価としました。

転居を伴う転勤の多さ ★★★★☆

ここに位置する公務員は、定年までに数回かそれ以上の転居を伴う転勤を経験する可能性が高いです。

  • 北海道庁
  • 地方整備局
  • 財務専門官
  • 国税専門官

北海道庁

北海道庁については、都府県庁との差別化のために★4個の評価としました。当然、家庭の事情などあれば当然配慮はされることと思いますが、それは他の都府県庁も同じですので、転勤の可能性のある範囲の広さを鑑みてこの評価としました。

このことが影響しているのか、北海道庁の採用倍率は他の都府県庁と比較してかなり低めです。

地方整備局(国家一般職出先機関)

地方整備局については、転居を伴う転勤が生じる可能性という点において、出先機関の国家一般職の中で頭一つ抜けている印象があります。それぞれの整備局が管轄する事務所(河川事務所、港湾事務所等)が管区内に多数存在しているため、転勤の頻度自体が高いです。そして、これらの事務所は管区内に散りばめられているため、場合によっては転勤に伴って転居が必要となります。

財務専門官、国税専門官

地方整備局と同様の理由で、財務専門官と国税専門官については★4個の評価としました。財務専門官については、採用された財務局の管区内に多数の出張所がありますし、国税専門官の場合には、採用された国税局管区内に多数の税務署があり、配属される可能性のある範囲がいずれも広いです。

ただ、管区によっても様相が異なります。例えば国税専門官なら、東京国税局管内よりも、札幌国税局管内の方が管轄する面積が物理的に広大であるので、転居を伴う転勤が生じる可能性も遥かに高いです。

転居を伴う転勤の多さ ★★★★★

最も転勤が多い公務員は、次のとおりです。ここに該当する公務員は、転居を伴う転勤を経験しないことはまずあり得ません。多数の転勤にくわえて、官署によっては海外出向等もあり得ます。

  • 本府省(国家総合職)
  • 航空管制官

本府省(国家総合職)

国家総合職として中央省庁に入庁した場合は、全国転勤を前提としているため、省庁にもよりますが幾度に渡り転居に伴う転勤を経験します。例えば厚生労働省であれば、3回程度の地方自治体等への出向を経て課長級や審議官級になっていくことが平均的なキャリアパスになっています。

頻度もそこそこ高いですが、特筆すべきは転勤範囲の広さです。いわずもがな外務本省採用者や外務省専門職員は世界中を飛び回ることとなりますが、それ以外の本府省でも、本人の希望も考慮されますが、官在外公館(海外の大使館等)への転勤や海外留学を経験する可能性もあります。その転勤範囲の広範さも踏まえて、★5個の評価としました。

また、本府省のうち最も転勤が多いと思われる省庁は総務省(自治)です。地方自治制度を所掌しているだけあって、幾度にも渡って地方自治体へ出張を繰り返します。総務自治に入庁した総合職は30歳頃には自治体の課長級職員として出向を経験するほか、年次を重ねてくると政令市、県庁等の部長級職員として、更には基礎自治体等の副首長として出向することになります。このように他の中央省庁とは一風変わったキャリアパスとなるので、転居を伴う転勤を厭わない方にはとってはもの凄く面白い役所だと思います。

航空管制官

最後に紹介するのは、行政系公務員ではないですが、航空管制官です。航空管制官は公務員にしては珍しく、完全に全国転勤を前提としています。勤務地は主には全国の空港ですので、北海道(最北は稚内空港)から沖縄(那覇空港)まで、全国を飛び回ることになります。

ただし、航空管制官に限らず人事の考え方が変わってきているようで、家庭の事情にまで踏み込むような転勤は少なくなってきている印象があります。結婚して家庭を持っている場合は、考慮されることも多くなってきています。

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