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地方公務員のメンタル不調による病気休暇・休職の方法等について【手続・給与・診断書等】

このサイトでは、これまでも地方公務員の人事・給与制度について取り扱ってきましたが、今回取り扱うのは、休業・休職の制度です。

地方公務員の休業・休職の事由のうち、多くを占めるのが精神的な理由によるものです。

したがって、この記事でも、主に精神的な不調による病気休暇・休職について取り扱います。

公務員は年々業務が逼迫する傾向にあり、部署によっては激務です。精神に不調をきたす方も多いですが、そういった方の一助になればと思い、この記事を作成しております。

山島

なお、筆者は元地方公務員であり、人事関係の業務に従事していた経験があります。

目次

「病気休暇」と「休職」の概要

まず前提として、長期間のお休みを取る制度について、「病気休暇(病気休業)」と「休職」の二つがありますが、これらは異なるものですので、それぞれお話しします。

病気休暇(病気休業)とは

まず、病気休暇は、以下のものです。

なお、内容は東京都のものです。自治体によって多少の違いがある場合もあります。

病気休暇(病気休業)とは
  • 基本的に医師の診断書が必要
  • 最大で90日間取得できる。
  • 給与は満額支給される。
  • 勤勉手当の金額は減額される。
  • 「休暇」の一種である。

実際には、精神的な不調等により暫くのお休みを取得する場合、まずは病気休暇を取得します。そして、その期間を満了してもなお復業できない場合に、休職へ移行するというような運用となっています。

病気休暇の規定は、各自治体において、「職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」という名称の条例や、その施行規則で定められていることが多いです。参考までに、東京都の条例施行規則を引用します。

職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例施行規則(平成7年3月16日規則第55号)

(病気休暇)

第14条 病気休暇は、原則として、日を単位として承認する。

2 病気休暇の期間は、療養のため勤務しないことがやむを得ないと認められる必要最小限度の期間とする。

3 病気休暇を請求するときは、別に定める場合を除き、医師の証明書を示さなければならない。

東京都 Reiki-Base インターネット版

休職とは

続いて、休職について概要をお話しします。

休職は、各自治体の条例、規則のほか、更に上位の法令である、地方公務員法に定めが置かれています。詳細をまとめると以下のようになります。

(病気)休職とは
  • 医師の診断書を踏まえて、任命権者(首長等)が発令する。
  • 期間は最大で3年間
  • 最初の1年間は、給与の8割が支給される。
  • その後の2年間は、給与の支給はないが、共済から、給与の3分の2に近い金額の手当金が支給される。
  • 期末勤勉手当の金額は減額されるか、支給されない
  • 「休暇」ではなく、地方公務員法上の分限処分の一つ

以上です。

とにかく、「休暇」ではなく、それよりも重い、「分限処分」の一種であるのが休職です。職員の権利として保障されたものではなく、公務の円滑な遂行のため、自治体側の判断として行うものです。

分限処分については、以下の記事で詳述しておりますので、よろしければご覧ください。

実務上は、90日間の病気休暇を満了してもなお復帰できない場合に休職に移行することになります。

さらに、休職して3年経っても復帰できなければ、事実上、退職を勧告されることが多いです。あるいは、法的には、分限処分によって免職することも可能です。

以下に休職制度の根拠規定である地方公務員法を引用します。

地方公務員法(昭和25年法律第261号)

(降任、免職、休職等)
第28条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
 一~四 (略)
2 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。
 一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
 二 刑事事件に関し起訴された場合
3・4 (略)

e-Gov 法令検索:地方公務員法

以上のとおり、地方公務員法第28条第2項第1号が、病気による休職の根拠となっています。

対比表

病気休暇と休職を表で対比すると、以下のようになります。

病気休暇と病気休職の対比
病気休暇(病気による)休職
期間90日間まで3年間まで
満了後復帰できない場合休職へ移行退職勧告又分限免職
診断書必要必要
給与満額支給8割支給又は傷病手当金
期末勤勉手当減額減額又は不支給
性格休暇の一種分限処分の一種

実際の流れ

病気休暇を取得する場合

病気休暇の取得は、医師の診断書に基づいて、職員が各自治体のシステムを使って申請するものです。

病気休暇は必要最小限の期間のみが承認されるものですが、基本的には、医師の診断書に記された期間のとおりに承認されることが多いです。

精神の不調による病気休暇を取得する場合、一般的な基本的な流れとしては、まずは精神科・心療内科を受診してください。そこで、医師に対して、状況と病気休暇を取得したい旨を伝えましょう。

医師は慣れているため、案外すんなりと診断書を書いてくれることが多いです。

診断書がもらえたら、それを持って直属の上司に病気休暇を取得したい旨と伝えましょう。

あるいは、実際に働けない状況になって有給を取得し、有給取得中に医師に相談して病気休暇に切り替えるような流れも考えられます。

また、基本的に、病院としても、最低限の期間に限って診断書を発行します。初回の場合は、2週間から1か間くらいの休養が必要である旨の診断書を書いてもらえる場合が多いです。

病気休暇は実務上は医師の診断書に記載された期間に沿って承認されることが多いので、病気休暇も、一気に90日間分を承認するのではなく、小刻みに申請・承認されていくことが多いです。

小刻みに状況を見ながら、復帰ができないと判断された場合は、その続きの診断書が発行され、その度に職場に報告して、病気休暇を申請するようなイメージです。

病気による休職への移行

そして、90日間経っても病気休暇から復帰できない場合は、休職に移行することになります。

上述のとおり、病気休暇と病気休職は性格が大きく異なります。したがって、自治体の内部の(人事課等での)手続は大きく異なるものの、職員側としては、やることは病気休暇の際とあまり変わりません。

基本的には、職場側からの指示に従って、診断書等の必要な書類を提出していくことになります。

病気休暇の更新と同じように、定期的に病院へ通院しながら、医師に状況を伝えて、お休みを継続するか、仕事に復帰するかを判断していくことになります。

また、病気休職についても、必要最小限に限って行われる処分ですので、定期的に、何らかの方法で職員と職場の間で病状について情報共有を行っていくことになります。

ぜひ早めの検討を

以上です。

公務員の仕事は、年々増え続けています。

法令の数、手続の数、前例の数が増え続けることはあれど、減ることはないからです。

苦しい時は無理せずに、早めに病気休暇等を検討してみてくださいね。

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