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日本の主要な公共政策大学院の特徴・院試・雰囲気等の比較【東大・京大・一橋大・東北大・北海道大】

このサイトは、基本的に公務員を目指す人にとって公共政策大学院で修学することは有益であるという立場を取っています。院試は難関ではありますが、特に国家公務員総合職を志す人にとっては内定率を高めるための絶好の機会です。有名大学の大学院を修了したという肩書きが得られるからではなく、実際に力がつくからです。反対に言えば、大学の学部と同じ感覚で大学院に入るとついていけなくなるという方もいらっしゃるので留意が必要です。

さて、この記事では、日本における上位の公共政策大学院について、そのカラーを比較していきます。筆者は公共政策大学院を修了後に国家公務員総合職として働いた経験があるほか、今回紹介するすべての公共政策大学院の出身の知人がいます(公共政策大学院には横の繋がりがあるためです。)が、主観の混じった記事となることをご容赦ください。

なお、この記事では、狭義の公共政策大学院、すなわち純粋な専門職大学院としての公共政策大学院のみを対象としています。紹介するのは次の五つの公共政策大学院です。

  • 東京大学公共政策大学院
  • 京都大学公共政策大学院
  • 一橋大学国際・公共政策大学院
  • 東北大学公共政策大学院
  • 北海道大公共政策大学院

一方、たとえば大阪大学大学院国際公共政策研究科や慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科は、「政策」の名を冠する大学院ではありますが、これらは専門職学位課程の大学院ではないため、今回の記事の対象外としています。

目次

東京大学公共政策大学院

最初に紹介するのは、東京大学公共政策大学院です。GraSPPの名でも知られています。

特徴

東大公共の特徴として思い浮かぶものは、第一に「グローバル」です。国内公共政策大学院の最高峰でありながら、意外にもその特色は国際性にあるのです。人によっては、国内にいながら留学しているような気分を味わえると言います。それだけ外国人留学生の占める比率が高いのです。ちなみに、これら外国人留学生は、修了後に日本で就職する場合もありますが、海外の政府機関に就職することが多いです。国内の主要な公共政策大学院としては珍しい様相となっています。このような状況のもと、必修の授業の一部が英語で行われていたりもします。

院試

また、この特徴は院試にも表れています。東大公共の院試では、TOEFLの高いスコアを求められるのです。合格者のTOEFL平均スコアが公開されていますが、例年80点代後半と極めて高い水準となっています。ただし、60点代でも合格報告はあるので、臆さずに挑戦する気持ちが大事だと思います。一方で、京大公共のように法学や経済学、行政学等の専門的知識はそこまで要求されないため、相対的にも合否を分ける要素として外国語力のウェイトが大きくなっています

その他

また、国家公務員総合職の職員の中にも、東大公共の出身者は多いです。これは東大公共修了したことによって公務員試験や官庁訪問において定量的に有利になるということはないのですが、東大公共で教鞭をとる教員は官僚出身であったり、霞が関から派遣されていたりすることが多いため、そのような環境に身を置くことで、国家公務員総合職を志す機会が多くなるのだと筆者は考えています。

京都大学公共政策大学院

続いて、京都大学公共政策大学院について紹介します。

特徴

京大公共は、上記の東大公共とは反対の性格を有しています。東大公共がグローバルであるのに対して、京大公共はドメスティックな傾向にあります。京大公共は東大公共と異なり、学生や教員は日本人が多いですし、基本的に全ての講義が日本語で行われます。この点で東大公共と京大公共は差別化が図られていると感じます。京大公共では、公共政策に係る諸学について、ドメスティックな視座・環境のもと、堅実に学ぶことができます。また、実学寄りというよりはアカデミック寄りなイメージもあります。

院試

そして、この特徴はやはり院試にも表れています。京大公共の試験でも英語は課されますが、TOEFLのスコアを活用するものではなく、独自のリーディング試験が課されます。また、京大公共の試験の特徴は、専門科目の知識を試されるということです。憲法、民法、行政法、経済理論、政治学等の中から任意の専門科目を選択して出願する形式となっています。時間をかけて受験対策することが必須となっています。

カリキュラム

また、もう一つの特徴として、京大自体の校風と共通していますが、京大公共は自由度が高いということが挙げられます。まず、多くの公共政策大学院では提出が必須となっているリサーチペーパー(研究型大学院の修士論文に相当するもの)については、京大公共では必ずしも作成する必要はありません。その代わりに、学生が自主的に組織しているゼミ等が多彩であるため、能動的な学びを志望する人には向いているのが京大公共です。

一橋大学国際・公共政策大学院

続いて、一橋大学国際・公共政策大学院について紹介します。

特徴

一橋大公共は、「国際」と銘打っているとおり、どちらかというとグローバルな公共政策大学院です。東大公共もグローバルであるとお話ししましたが、少し違う雰囲気があります。東大公共は院全体がグローバルであるのに対して、一橋大公共は特定のコースにおいてのみ国際色が強いという違いがあるのです。一橋大公共の「公共法政」「グローバル・ガバナンス」「公共経済」の三つのプログラムのうち「グローバル・ガバナンス」は国際組織等で活躍する人材の養成を目的としてるのに対して、残る二つについてはドメスティックかつアカデミックなプログラムとなっています。特に「公共経済」は理論経済や計量経済のレベルが高いです。なお、もう一つ、海外からの留学生を受け入れている「アジア公共政策(APPP)」というプログラムも存在しています。

一橋大公共には、もう一つ、他と異なる特徴があります。公共政策大学院は、官公庁等で活躍する高度職業人を養成することを目的としていますので、現職の公務員が派遣や休職によって学びに来ています。また、公共政策大学院の修業年限は基本的に二年となっています。一橋大公共も基本的にはその例に漏れませんが、社会人の場合には一年でも修了できるとする課程を設けており、この点で他の公共政策大学院と一線を画しています。経済的な理由等で修学を躊躇している社会人の方等にとって有力な選択肢になり得ます。なお、北海道大公共や東北大公共においても、優秀な成績を修めた社会人経験者であれば一年でも修了できるといった規定はありますが、大々的に一年生のコースを置いているのは一橋大公共の特徴に違いありません。

院試

また、意図されているものなのかは分かりませんが、例年、一般枠の入試日程は東大公共と一致しています。事実上、東大公共と一橋公共の併願は困難といえます。

東北大学公共政策大学院

続いて、東北大学公共政策大学院についてです。

特徴

東北大公共のキャラクターは明確で、「現場志向」であるということです。京大公共や一橋公共がアカデミックなカリキュラムとなっていますが、東北大公共はどちらかというと実学的・現場的な修学の場を提供しています。

その特徴が色濃く表れているのが、課程一年目に行われる「公共政策ワークショップⅠ」です。このプログラムでは、院生全員を複数のグループに分け、それぞれのグループが地方自治体や中央省庁の現場の赴いてヒアリングを行い、それらに対して政策提言を行うというものです。一橋大公共の公共経済プログラム等でも同様の経験を積むことができますが、東北大公共はとにかく現場重視で、カリキュラムの中でこのワークショップに注力しています。このことから、東北地方に限らず、日本中、あるいは世界中に足を運ぶ機会があるので、人を選ぶかもしれませんが、現場を見に行くのが好きな人や、純粋に旅行が好きな人にとっては最適の環境だと考えます。

あと、あまり知られていませんが、公共政策大学院に限らず、東北大は全国から人が集まることでも知られています。

また、一橋大公共は独りでの学習・研究に重きを置いたカリキュラムであるのに対して、東北大公共ではカリキュラムの中枢である公共政策ワークショップⅠにおいて特定のグループ単位で動くことが多くなります。この点においても特徴があると言うことが出来ます。

院試

院試もこの特徴を反映していて、法学や経済学の理論について出題はありませんが、現場に即した思考力等を問われるような内容となっています。

北海道大学公共政策大学院

最後に紹介するのは、北海道大学公共政策大学院です。

特徴

北海道大公共は、東北大公共と雰囲気が似ています。基本的にはドメスティックな公共政策大学院で、また、「フィールド・スタディ」に注力していることから現場へ赴く機会も多いです。北海道大公共の学生は、主に道内が多いですが、自治体や社会福祉法人、電力会社(北電)等を訪問する機会に恵まれます。

物理的には東京と離れていますが、毎年コンスタントに中央省庁に人材を輩出していますので、国会公務員総合職を志す人にもおすすめできます。ただ、本州育ちの方にとって札幌の冬は過酷かもしれません…。

院試

一方でアカデミックな性格も有しており、今回紹介した五つの公共政策大学院のうち、院試において法学等の専門科目が課されるのは、現在では京大公共と北海道大公共のみとなっています。

まとめ

各公共政策大学院の特徴の整理

以上です。「グローバルかドメスティックか」、「アカデミックか現場主義か」といった観点において、国内の主要公共政策大学院には違いがあることが分かります。今回紹介した大学院についてそれぞれ特色を端的に整理すると以下のようになります。

  • 東大公共:国内最高峰。とにかくグローバル。
  • 京大公共:ドメスティックかつアカデミック。自由度が高い。
  • 一橋大公共:プログラムによって雰囲気な大きく異なる。基本的にはアカデミック。
  • 東北大公共:ドメスティックかつ実学(現場)重視。
  • 北海道大公共:ドメスティック。学ぶ内容についてはアカデミックと実学のバランスが良い。

さらに、以上をポジショニングマップにまとめると以下のようになります。

また、語弊の無いように付言しておくと、公共政策大学院である限り、いずれも研究型大学院と比較すると現場志向であることに間違いありません。いずれの公共政策大学院も、現職の官僚や元官僚が教授として在籍していますし、行政の現場との連携は盛んです。

院試対策

ところで、これらの公共政策大学院はいずれも難関です。倍率だけ見ればそうでもないかもしれませんが、公務員試験の勉強や官庁訪問を既に経験している受験生が多いため、実質的なレベルは高いです。対策にあたってはそれぞれ十分な時間をかけるべきです。対策は公務員試験の経験があれば独学でも足りますが、院試向けの予備校もありますので、活用を視野に入れてよいと思います。

公共政策大学院の意義

公共政策大学院は、同じ専門職大学院である法科大学院や会計大学院と異なり修了することにより制度的なアドバンテージを得られるわけではありませんし、公務員予備校(TACやLEC)のように一義的に公務員試験対策をするわけではありません。その点を差し引いても、行政官としての素養等の総合的な実力を身につけられるため、どうしても国家公務員総合職を目指したい方等にとっては最適な進学先となり得ます。ぜひ積極的に検討してみてください。

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