このサイトで好評いただいている記事の一つに、以下のものがあります。

この記事は、これに関連して、地方公務員のうち基礎自治体(一般市役所、政令市、特別区等)のうち、出世を期待されている職員が配属される可能性の高い部署、いわばエリート部署をランキング化しようという企画です。公務員の部署には繁閑がありますが、同様に、出世コースを歩む方が配属される傾向の高い部署があります。自治体によっても異なりますが、ある程度共通する傾向はありますので、以下のとおりランキング化しました。
なお、あくまで本記事の対象は基礎自治体なので、広域自治体(都道府県)とは全く別物です。
なお、定性的な比較をするという性質上、主観的にならざるを得ない記事となりますので、ご承知おきの上、一参考に留めていただければと思います。
エリート部署と近しいがイコールではない
ランキングに入る前に、次の注意点があります。
- エリート部署は定量的に忙しい傾向がある。
- ただし、完全にイコールではない。
以上です。基礎自治体の激務部署については上掲の記事で触れておりますが、定量的に忙しい部署は、いわゆるエリート部署と同一であることが多いです。
ただし、完全にイコールではありません。たとえば選挙管理委員会事務局や、(設置している基礎自治体の場合)児童相談所は随時的に激務になりがちですが、エリート部署かと問われると、疑問が残ります。
また、質的に大変なイメージがある部署、たとえば生活福祉課等についても、役所の基幹的な事務を担う部署でありますが、出世頭の部署であるかと問われると答えに窮する印象です。
ランキング
それでは、ランキングをご覧ください。今回は、エリート部署として6つを選定しました。基礎自治体の中で課長、部長、局長等に登り詰めていく方は、このいずれかの部署を一度以上経験していることが多いです。
1位:財政課
まずは、財政課です。圧倒的に花形であるとともに、激務部署であることで有名です。上掲の記事でも、基礎自治体で最も定量的に忙しいのは財政課だと結論づけています。
地方議会の予算委員会に合わせて業務量の波はありますが、総じて激務の印象です。また、首長・議会と各課の板挟みになることも多く、質的にもハードな仕事です。ただ、そこを乗り越えた人は、基礎自治体の幹部として抜擢されることが多いです。
また、極めて大きな裁量を持っている部署でもあります。国の組織においても、本府省のうち、各省への予算配賦する財務省の権限が最も大きいという見方をされることがあります。法的には財務省も他府省も横並びの建付けになっているので、この是非はありますが、そういった印象は拭えません。
そして、このことは地方政府にも当てはまります。
役所内の各課に予算を配賦する財政課は、極めて大きな裁量を持っているといえます。
いわゆる「ヒト・モノ・カネ」のうち、「カネ」を扱うのが財政課です。
2位:政策企画課
続いて、政策企画課です。「政策課」「企画課」「企画経営課」「行政経営課」といった名称で設置されていることも多いです。たとえば横浜市では、「政策経営局 経営戦略課」の名称が使われているように、名称は自治体によって様々です。
名称は様々ですが、ここでイメージしているのは、当該自治体の総合計画の策定のほか、短期集中的に注力している重要な施策の推進を担う部署です。
激務傾向にはありますが、1位の財政課と、次で紹介する3位の人事課に比べると、仕事量的には少しだけマイルドな印象があります。その代わりに頭脳を求められる印象のある部署です。
特に総合計画に携わる場合は、各課の行う業務を集約することとなるため、役所内の業務を一望するという貴重な経験を得られます。また、必然的に首長との距離も近くなるため、そういった意味でもキャリアを期待されがちになります。
3位:人事課
続いて、人事課です。自治体によっては「職員課」等と呼ばれたりもします。
いわゆる「ヒト・モノ・カネ」のうち、「ヒト」を扱う部署です。職員の人事を決定するという強大な権限を持っています。政策に携わるわけではないといった意味で、役所の中でも毛色の違う部署です。
一口に人事課といっても、その担当(係)は多岐に渡っています。人事異動、採用、服務、給与、人事評価のほか、自治体によっては研修等も人事課が所掌する仕組みにしているところもあります。
このうち、特に期待されている職員が配属されがちなのは、人事異動と採用の担当です。
ただし、仕事が激務になりやすいのも人事異動と採用の担当です。特に、人事課の仕事の量は季節性が強いです。基礎自治体の人事異動や採用は4月1日に集中しています。そうすると、その直前の2~3月頃は激務の極みであり、瞬間的な忙しさは財政課等を上回って役所の中で随一ではないかと考えます。

筆者は地方公務員のほか、国家公務員(総合職)も経験していますが、すべての業務の中で最も大変だったのは、地方公務員として人事異動と採用の仕事を兼任していた頃の3月頃でした。
ちなみに、国家公務員でも4月1日の人事異動や採用は多めですが、夏や秋にも行われることもそこそこあります。そういった意味では、地方自治体の2~3月の方が過酷ともいえます。
一方、研修や給与については比較的ルーティンワークが多いため、激務というほどではない役所も多いはずですが、同時にエリートという印象も薄れます。ただし、「人事課給与係」や「人事課研修担当」であったとしても「人事課」には変わりないので、激務部署を回避して人事課OBを名乗れるという意味ではコスパが高いという考え方もあります。
4位:総務課
続いて、総務課です。
総務課がエリート部署として扱われるかどうかは、自治体の規模にもよると考えます。たとえば政令市のような大規模自治体ではエリート部署として見られることが多いです。
総務課についても、業務が多岐に渡っていますが、ここでイメージしているのは、政令市のような大規模自治体において、各局や各部に横断的な案件の進捗管理や調整を担う総務課のことです。たとえば大阪市の「総務局行政部総務課」や、名古屋市の「総務局総務課」はこれに当たります。
また、自治体によっては、予算や人事についても「総務課」と名の付く課が行っていることもありますので、こういった場合も出世頭の部署という印象があります。
5位:秘書課
続いて、秘書課です。
秘書課についても、役所によって扱う業務に幅がありますが、主に以下の2点に峻別できるはずです。
- 人事、文書、予算決算、企画等の総合調整
- 首長の日程調整や褒章等の、いわゆる「秘書」的な業務
秘書課についても、総じてエリートの印象がありますが、特にその印象が強いのは、以上の①、すなわち人事、文書、予算決算、企画等の総合調整を担う係(担当)です。総合調整した内容を首長に諮るような業務を担うイメージです。たとえば、名古屋市でいえば「市長室秘書課庶務係」が該当します。
政令市等では、以上の①のように横断的な事項の総合調整を担う担当が置かれていることが多いですが、小規模な自治体では、秘書課がこのような役割を担う組織体系にしていないところもあります。
余談かつ偏見ですが、以上の②については、ルックスの良い若い女性が配属されることが多いとも言われます。
6位:教育総務課(教育委員会事務局)
続いて、教育総務課です。行政委員会としての教育委員会の運営等を担う部署です。単に(教育委員会事務局の)「総務課」といった名称が使われていることもありますが、その場合は市長部局の総務課と区別しづらいため、「教育総務課」や「教育庶務課」等の名称にされていることの方が多いです。
上掲の5つと比べれば、少しだけエリート感は落ちます。
一方、教育総務課を経験した場合には、将来的に部長・局長ポストを登り詰めた後、「教育長」に抜擢される可能性が生じます。
教育総務課がエリート視されることは少ないかもしれませんが、上述の理由から、教育総務課に配属された経験は自治体職員のキャリア形成という点では意義があると考えます。
自治体の首長は選挙によって選出されるため、それを除くと、実質的には、基礎自治体の最終的なポストは副首長(副市長。特別区にあっては副区長)ということになります。教育長というと、副首長に次ぐくらいのポストですので、そこに就くことができるチャンスを高めるというのは、大きな意義があると考えます。
たとえば、京都市で4期に渡って市長を務められた門川大作氏は、職員として京都市教育委員会事務局に勤めたのち、教育長に任命されています。(その後、教育長を辞職したタイミングで市長選に出馬、当選して超長期政権に至っています。)
補足
ランキングは以上ですが、さらに2点ほど補足させていただきます。
補足:官公庁・企業等への出向について
まず、出向についてです。自治体によっては、官公庁や企業等への出向の機会を得られる場合がありますが、いずれも期待の裏返しであることが多いです。特に、以下のようなケースはエリートコースの典型です。
- 国の機関への出向
- 都道府県への出向
- 他の基礎自治体への出向(人事交流)
- 民間企業への出向(人事交流)
国の機関には様々なものがありますが、全国からの寄せ集め組織である内閣官房等は代表的です。
補足:福祉・民生系部署
また、エリート部署という印象は少ないものの、基礎自治体の事務行政職員の場合は、福祉・民生系部署について一度以上経験しておくことも重要です。
自治体の基幹的な業務の一つは福祉です。この現場の業務を知らずして出世していくことは困難です。といっても、自治体の福祉系部署、すなわち生活福祉課、介護保険課、高齢者福祉課、児童福祉課に配置される職員の数は上掲のエリート部署よりも遥かに大きいため、普通に過ごしていれば一度は配属されることが多いです。
そのほか、国民年金保険や後期高齢者医療保険のような民生系の部署についても同様です。
補足:一義的には早期昇格の方が重要
また、上掲のエリート部署に配属されなかったからといって、出世できないといったことではありません。以上は飽くまで経験則のようなものに過ぎませんので、結局は各職員自身の意向や能力が重視されます。
国家公務員の場合は採用試験の種類によってある程度キャリアが規定されてしまいますが、地方公務員の場合、結局は自身の意向や昇任試験の出来が重要になります。
出世を望むのであれば、主任試験、係長試験、管理職試験についてなるべく早くクリアしていくことがとにかく重要です。課長職を長く経験した人が部長に、部長職を長く経験した人が局長になるようなイメージで、玉突きのように順番に昇格していくことが多いので、とにかく短期間で昇格することが大事なのです。これらの試験の対策については以下で詳述していますので、よろしければご覧ください。


受験生の方へのおすすめ記事等
自治体の受験生の方へは、以下の記事等もおすすめできますので、よろしければご覧ください。









