地方公務員の給与体系は、条例または規則によって定められており、これらは公開されているため、時間さえかければ誰でも1円単位で特定することができます。ここでは、地方公務員のうち、特別区(23区)職員の給与について解説します。
特別区職員の給与体系
上述のとおり、特別区職員の給与については、各区の定める「職員の給与に関する条例」及びその施行規則によって定められています。これらの法令は特別区人事厚生・事務組合の準則によって各区が足並みを揃えて制定するため、基本的には23区とも同じような給与体系となっています。(しかし、区による違いも存在します。これについては後述します。)
法令に規定されているということは、時間さえかけてそれを読み解けば、誰でも1円単位で特定条件の下での与を特定できるということです。今回、多数のパターンにおいてシミュレーションを行い、特別区職員の給与(年ベース)を算定しましたので、その結果をお伝えします。
シミュレーションの前提条件
今回は、次の条件下で、年ベースの給与を算定しました。
算定基準を明らかにする趣旨のものに過ぎないので、気にしない方は読み飛ばしていただいて大丈夫です!
・新卒22歳で入庁。(若く入庁した方が、同年齢で比較した際に給与は高くなります。)
・千代田区の現在の「職員の給与に関する条例」及びその施行規則により算定。(条文は全区共通。)
・30歳で子1人目出生、32歳で子2人目出生とする。(30歳以降年齢要件満たす限り扶養手当あり。)
・35歳までは賃貸に居住。36歳からは持ち家と仮定。(35歳まで住居手当あり。)
・基本的には1年度につき4号俸ずつ昇給。
・4年に1度6号俸昇給。(各区の人事評価の実施状況に基づきこのように設定。)
・昇給抑制を加味。
・地域手当は常に20%計上。特殊勤務手当は計上しない。期末勤勉手当は役職加算分も加味。
・超過勤務手当は1~4級までは月あたり15時間で計上。
・期末勤勉手当はすべて標準的な評価であったものとする。
・給料表の行(一)に基づく。行政職を対象とし、技能労務職(もう少ないですが学校主事職等)は対象外。
・以上に前提に、年齢及び職務の級に応じて7つのパターンを想定し、それぞれの場合について算定を行う。
・1,000円以下は切り捨て。
算出結果
算出結果は次のとおりです。特別区職員の場合、出世するかどうかによって給与が大きく異なってくるため、分散(または標準偏差)が大きくなります。そのため、次の14の場合に分けて試算を行いました。
いかがでしょうか。平均的には、職員の平均年齢40歳として、40歳時点で700万くらいになるのではないかと思います。特別区では、制度上は最速で40歳手前で課長級になることができますが、課長級であれば1,000万円程度、さらに50歳くらいで部長級に上がると1,200万円程度になるようです。
また、以上のとおり、同一年齢、同一年次においても、特別区においては役職によって給与に大きな開きがあります。公務員は一律に昇給していくという世間のイメージとは乖離があるのです。(この点において、同じ職場であれば横並びとなりやすい国家一般職とは異なります。)特別区では、特に管理職手当が支給される課長級以上と、超過勤務手当が支給される統括係長以下では差が顕著です。したがって、特別区においては、課長級に上がることができる確率が高い区ほど、給与も高くなり易い傾向にあると言うことができそうです。
各区の管理職ポストの数については、別途記事にしていますので、こちらをご参照ください。(ここで結論をお伝えしてしまうと、23区の中で最も管理職になり易いのは、千代田区だと考えています。)
ちなみに、特別区職員人生のうち、課長級以上を経験するのは同期のうち2~3割程度です。管理職ポストの多い政令市等と比較すると、少しだけ割合は小さくなります。
まとめ
今回は、特別区の給与について、年ベースで具体的に試算した結果をお伝えしました。
- 特別区職員の平均的な給与はおよそ700万円
- 課長級(5級)に上がると、およそ1,000万円
- 部長級(6級)に上がると、およそ1,200万円
この結果を、皆さんは高いと思いますか?それとも低いと思いますか?