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地方公務員の「服務の宣誓」について解説します【地方公務員法第31条】

地方公務員には、「服務の宣誓」というものがあります。

この記事では、これについて解説してきます。

目次

「服務の宣誓」とは

「服務の宣誓」とは、職員の倫理的自覚を促すことを目的とした制度です。その根拠規定は、以下のとおり、地方公務員法第31条に置かれています。

(服務の宣誓)

第三十一条 職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。

地方公務員法 | e-Gov法令検索

地方公務員法は日本全国の自治体において適用されますので、どこの自治体(都道府県及び区市町村)でも行われているということになります。

具体的に何をするのかというと、職員が採用されたのち、最初の登庁日において、各自治体が定める宣誓書に記名することとなります。宣誓書は、一例として、以下のような書式となっていることが多いです。

内容を見ると、憲法第99条に定められた公務員の憲法尊重義務や、憲法92条に定められた地方自治の本旨(住民自治・団体自治)についての記載があることが分かります。

公用文に慣れていない方からすれば仰々しい文章のように感じられますが、要は「公務員としての自覚を持ちましょう」というニュアンスのものです。誤解を恐れずに言うと形式的なものですね。

補論

以上が「服務の宣誓」についての概要となりますが、以下では、補論として、法律関係の少し細かい話をいたします。

補論①服務の宣誓は「服務上の義務」の発生要件ではない

地方公務員は、多数の「服務上の義務」を課されています。たとえば以下のようなものです。

地方公務員の服務上の義務
  • 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(地方公務員法第32条)
  • 信用失墜行為の禁止(地方公務員法第33条)
  • 秘密を守る義務(地方公務員法第34条)
  • 職務に専念する義務(地方公務員法第35条)
  • 政治的行為の制限(地方公務員法第36条)
  • 争議行為等の禁止(地方公務員法第37条)
  • 営利企業への従事等の制限(地方公務員法第38条)

ここで、入庁初日に服務の宣誓を行わなければ、これらの服務上の義務も課されないのかといったことが問題になります。これについては、服務上の義務は、服務の宣誓を前提としておらず、採用によって当然に発生するものであると解されています。したがって、仮に何らかの理由で服務の宣誓を行わなかったとしても、「俺は服務の宣誓を行っていないから政治的行為を行っても服務上問題にならないんだぜ」といったことは罷り通らないということになるのです。

補論②服務の宣誓は任命要件ではない

それでは、服務の宣誓を行わなかった場合、公務員になることはできないということになるのでしょうか。この点については、服務の宣誓は公務員としての任命要件ではないと解されています。つまり、服務の宣誓を行わなくとも、あくまで法律上は、公務員になることが可能ということです。

(とはいえ、入庁初日に促されるとおりに、服務の宣誓は行ってくださいね。)

補論③服務の宣誓を行わないとどうなるか

服務の宣誓を行わなくとも採用(任命)されることは可能であるとお伝えしました。

それでは、服務の宣誓を行わなかった場合に、何のペナルティも課されないということになるのでしょうか。その答えは次のとおりです。

  • 服務の宣誓は、それ自体が職員の義務の一つであり、これを職員の責に帰すべき事由により行わなかった場合は、服務義務違反となる。

まとめ

以上です。まとめると以下のとおりとなります。

  • 服務の宣誓とは、職員の倫理的自覚を促すことを目的とした制度
  • 具体的には、入庁直後に、所定の宣誓書に氏名等を記入するもの
  • 服務の宣誓は「服務上の義務」の発生要件ではない
  • 服務の宣誓は任命要件ではない
  • ただし、服務の宣誓自体が職員の義務の一つである

ところで、服務の宣誓の具体的な方法等については、各自治体の条例で定めることとされています。そして、条例については、ご存知のとおり住民に公開されることとなっています。

もし、事前に各自治体の宣誓書の様式を見てみたい場合は、「〇〇市 服務の宣誓に関する条例」等と検索すると、当該自治体の条例の中に、様式が掲載されていることが多いですので、興味のある方はチェックしてみてくださいね。

上掲の宣誓書は筆者が作成した一例ですが、自治体によりマイナーチェンジがあるので、見比べてみると小さな違いがあるのが分かり、面白いです。

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