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地方公務員の「職務専念義務」について解説します【具体例アリ】

このサイトでは、以下のようにいくつか地方公務員法の記事を執筆していますが、いずれも好評を頂いているようです。

引き続き、この記事では、地方公務員法上の職務に専念する義務、いわゆる職務専念義務について解説します。

目次

原則規定

まず、地方公務員の職務専念義務は、地方公務員法第35条に規定されています。

(職務に専念する義務)
第三十五条 

職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

地方公務員法 | e-Gov 法令検索

このように規定されています。

条文のとおり、原則として、

原則規定
  • 職員は、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

ということになります。具体的的には、以下のような行為は、職務専念義務に違反すると見なされる場合があります。

  • 職員が勤務時間中に頻繁にSNSを閲覧している場合
  • 職員が勤務時間中にポイントサイトを利用している場合
  • 職員が勤務時間中に頻繁に喫煙のための休憩をとっている場合
  • 職員が勤務時間中に居眠りしている場合

これらはいずれも懲戒処分や訓告に発展した実例を伴うものです。職務専念義務に違反すると見なすためには、とにかく「勤務時間中」であることが必要になります。懲戒処分等に該当するような非違行為であっても、それが勤務時間外に行われたものであれば、職務専念義務違反ではなく、信用失墜行為(地方公務員法第33条)や守秘義務(地方公務員法第34条)等に該当するかどうかが争われます。

一方で、条文を見ると、次のように言い換えることができます(例外規定)。

例外規定
  • 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合には、職務専念義務を免除される。

職務専念義務を免除される場合

以上のとおり、「法律」又は「条令」に定めがある場合は、職務専念義務は免除されることになりますが、具体的には、それぞれ以下のものが当てはまります。

法律によって職務専念義務が免除される場合

まずは法律によって職務専念義務が免除される場合です。ここでいう「法律」とは、地方公務員法、労働基準法、育児休業法等のことを指しています。

法律によって職務専念義務が免除される場合
  • 職員が分限処分としての休職処分を受けている場合
  • 職員が懲戒処分としての停職処分を受けている場合
  • 職員が職員団体と勤務時間内に交渉する場合
  • 職員が労働基準法に基づく休暇を取得している場合
  • 職員が自身の公民権(選挙権等)を行使する場合
  • 職員が産前産後休暇(産休)を取得している場合
  • 職員が育児休業を取得している場合

いずれも当然のものですね。条例とは異なり、法律はすべての自治体に適用されるものですので、全国のすべての地方公務員が、以上の場合に職務専念義務を免除されることになります。

条例によって職務専念義務が免除される場合

続いて、条例によって職務専念義務を免除される場合です。法律とは異なり、条例は各自治体が独自に議会の議決を経て成立させるものですので、その内容も自治体によって異なります。ただし、実際には自治体の人事や法務の担当者は他の自治体の条例を参考にしたり、準則に基づいていたりするので、結局は似たような内容になっていることが多いです。

条例によって職務専念義務が免除される一般的な事由としては、以下のものが挙げられます。

条例によって職務専念義務が免除される場合
  • 条例に基づく休暇
  • 条例に基づく休憩時間
  • 職員が研修を受ける場合
  • 職員が昇任試験等を受験する場合
  • 職員がその身分に関連する儀礼又は儀式に参加する場合
  • 職員が妊娠に起因する障がいにより正規の勤務時間の一部について勤務することが困難である場合
  • 災害等により自治体の事務の全部又は一部を停止した場合
  • 職員が裁判員として裁判に出席する場合

休暇に職務専念義務が免除されるのは当然という感じがすると思いますが、休憩時間も職務専念義務が免除するとしている自治体がほとんどです。

なお、特定の自治体について調べたい場合は、自治体名にくわえて「職員の職務に専念する義務の特例に関する条例」等の名前で検索すると、すぐに見つかるはずです。

補論

ここまでをまとめると、原則として、職員は勤務時間中に職務専念義務を負うことになりますが、例外として、法律又は条令に定めのある場合には、それを免除されるということになります。続いて、職務専念義務に関する個別的な論点を紹介します。

「勤務時間」には超過勤務の時間を含む

職員は原則として「勤務時間」中に職務専念義務を負いますが、ここでいう「勤務時間」の範囲が論点となります。たとえば、超過勤務の時間については、上司から超過勤務命令が発せられている限り、法的にはこの「勤務時間」に含まれると解釈されます。

同様に、本来は休日の日に出勤した場合、すなわち休日出勤の場合についても勤務時間に該当するため、職員は職務専念義務を負うことになります。

職務専念義務の免除と給与の関係

また、職務専念義務を免除されるかどうかと、その間に給与が支給されるかどうかは、個別に判断されます。すなわち、職務専念義務を免除された場合に、給与が支給される場合もあれば、給与が減額される場合もあるということです。

たとえば、職務専念義務が免除されるが給与は支給されるとされている場合には、以下のものが挙げられます。

職務専念義務を免除され、かつ給与が支給される場合
  • 休日
  • 年次有給休暇
  • 職員が研修を受ける場合

休日や年休の間には職務専念義務は免除されるが、給与の支給対象になるので、これは当然ですね。

逆に、職務専念義務は免除されるが原則として給与は支給されない場合には、以下のものがあります。

職務専念義務を免除されるが給与は支給されない場合
  • 職員が懲戒処分としての停職処分を受けている場合
  • 職員が在籍専従(職員団体(労働組合に準ずるもの)の業務に専従すること)を受けている場合
  • 職員が育児休業を取得している場合

以上の場合は原則として給与は支給されません。ただし、育休中の場合は共済組合から毎月育児休業手当金が支給されますし、給与以外の形で支給される場合があります。

また、以上のどちらにも記さなかった場合(公民権行使や裁判員の場合等)は、個別に給与減額を承認するかどうかを判別することになりますが、実務上は大抵の場合は給与減額が承認されます。

職員が勤務条件に関する措置要求をする場合

また、一つの論点として、職員が勤務条件に関する措置要求をする場合に、職務専念義務が免除されるかどうかといったものがあります。

勤務条件に関する措置要求とは、職員が人事委員会等に対して、勤務条件について争うための手段です。地方公務員は争議行為が禁止されているため、その代替として与えられているものです。

(勤務条件に関する措置の要求)
第四十六条

職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会又は公平委員会に対して、地方公共団体の当局により適当な措置が執られるべきことを要求することができる。

地方公務員法 | e-Gov 法令検索

この点については、行政実例(行実昭27.2.29)により結論が出ています。勤務条件に関する措置要求は、「当然には職務専念義務は免除されない」と解されています。すなわち、何の断りもなく職員が措置要求を行った場合は、職務専念義務に反するということになってしまいます。一方で、「当然には免除されない」のであって、あらかじめ決定権者から職務専念義務の免除の承認を得られている場合には、勤務時間中に措置要求を行うことが可能になるということです。

まとめ

以上です。簡単にまとめると以下のようになります。

  • 職務専念義務とは、勤務時間中は職員の注意力をもって職務に専念しなければならないという義務のこと
  • 職務専念義務は、あくまで勤務時間中にのみ課せられる。
  • 職務専念義務は、勤務時間中であっても、法律又は条令に定めがある場合は免除される。
  • 職務専念義務が免除されることと、その場合に給与が減額されるかは個別に判断される。

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