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生活保護のケースワーカーは普段どのような仕事をしているか【一週間の例】

基礎自治体(市町村、特別区)において採用された場合に、そこそこ高い確率で配属される可能性がある部署として、生活保護課があります。近年は生活福祉課といった名称になっているところが多いかと思います。

私も、新卒で地方公務員となった際には生活保護のケースワーカーとして配属され、そこで三年を過ごすことになりました。この記事では、ケースワーカーが普段どのような仕事をしているかについて、一般的な例として、一週間分の仕事を紹介します。

ちなみに、このサイトではケースワーカーについて度々記事にしていますが、次のような記事を書いたこともあります。ケースワーカーはネットでは敬遠されていることが多いですが、個人的にはとても魅力的な仕事だと考えています。

目次

とあるケースワーカーの月曜日

  • 08:20 登庁
  • 08:30 保護費算定事務 
  • 09:30 電話対応、所内面接対応等
  • 12:00 休憩
  • 13:00 電話対応、所内面接対応等
  • 16:00 保護費算定事務
  • 17:30 退庁

一週間の始まりである月曜日は、職員にもよりますが、基本的に役所の中で仕事をすることが多いです。ケースワーカーは多い所では一人で100世帯を担当することもありますが、土、日を挟んで月曜日を迎えると、これらの被保護世帯から、さまざまな相談や要望、問合せがあります。公務員は土、日曜日が休みですが、被保護者は当然毎日暮らしているわけですから、一週間の中で最も電話や来所が多いのが土日明けの月曜日です。

具体的には、「新しい病院にかかりたい」といったよくある相談のほか、「競馬で負けたからお金を貸してほしい」や「家が汚くなってきたから引っ越したい」といったような難題を頂くことも多いです。要望に応えられないと(できることは法令で決まっているため、応えられないことの方が多いのですが)、理不尽に罵倒されることも日常茶飯事です。

被保護者の対応の合間に、定常的な事務を行っていきます。事務仕事では、保護費の算定事務が主なものです。保護費は、毎月同じ額が支給されている世帯も多いですが、毎月収入がある世帯等の場合には、それに応じて保護費も毎月変動させる必要が生じるのです。

とあるケースワーカーの火曜日

  • 07:45 登庁
  • 08:30 保護費支給対応 
  • 12:00 休憩
  • 13:00 保護費算定事務
  • 16:30 ケース会議
  • 17:30 退庁

この日は、月に一度の保護費の支給日を想定しています。自治体にもよりますが、保護費は、毎月初に支給していることが多いと思います。保護費は、被保護者への預金口座に送金される場合が多いですが、被保護者の中には、未だに預金口座を持っていないという人や、事情により預金口座を開設できないという人もいます。そのような場合には、保護費を現金で手渡しするという手法が、未だに全国の自治体で採られているのです。

保護費の支給が8時30分から始まる場合、その対応に従事するため、少しだけ早く登庁します。早めに働いた分は超過勤務として残業代が支給されることになります。生活保護受給率(保護率)の高い自治体では、毎月支給日になると生活福祉課の前に長蛇の列ができることになりますが、午前中いっぱいかけて、順番に支給を行っていきます。

夕方に近づくと保護費の支給もひと段落ついてくるため、関係者(地域包括支援センターやケアマネ、被保護者の家族等)を交えてケース会議を行うこともあります。被保護者の今後の支援の進め方等について話し合いを行う場です。

とあるケースワーカーの水曜日

  • 08:30 登庁
  • 09:00 家庭訪問 
  • 12:30 帰宅(年次有給休暇を使用して直帰)

この日は家庭訪問を行います。被保護世帯に対しては、一年間のうちに最低限訪問を行わなければならない回数が決められています。最も少ない場合でも、年に一回は家庭訪問を行う必要があるため、一年のうちに、基本的にすべての担当している被保護者に一度以上は会うことになります。

家庭訪問先では、個々のケースに応じて、被保護者の話を聞いたり、逆にこちらから話をしなければならなかったりする場合があります。たとえば稼働能力があるのに就労に至ってないケースでは毎月の求職活動状況について報告を求める必要があります。重い傷病があり稼働できない場合には、毎月の通院の状況や、疾病の経過を尋ねる必要があります。認知症を抱える独り身の高齢者の場合には、居宅生活に限界がないかどうかを確認していきます。

この日は、午前中いっぱいかけて数件の家庭訪問を実施したのち、年次有給休暇を取得して、自宅に直帰することとしました。このように、ケースワーカーは仕事の内容こそハードですが、時間的拘束という点ではある程度融通が利くため、このようなことも可能になります。

とあるケースワーカーの木曜日

  • 08:30 登庁
  • 09:30 保護申請に係る家庭訪問(資力調査) 
  • 11:55 帰庁
  • 12:00 休憩
  • 13:00 保護開始の起案
  • 17:00 昨日の家庭訪問の記録作成 
  • 18:00 退庁

この日は、新規の保護申請を受けて、対象者の自宅を訪問し、生活保護を受給できるかどうかの調査を行います。最低限必要なものは所持しているすべての通帳や、住民票(なくても可)、現在の収入を証明する書類等です。さらに、もし保護開始となった場合には、各人に応じた援助方針を計画する必要があるため、申請者の疾病の状況や、職歴、家族との付き合いの状況、年金の掛金の状況、現在加入している医療保険の種類、ギャンブル歴等、ありとあらゆることについて質問します。

午後は、役所に戻り、午前中の調査で把握した情報に基づいて、聴取したことを報告書にまとめます。さらに、最終的に保護の要否の決め手となるのは資産や収入の金額であるため、電算システムにこれらの金額を入力して、生活保護が必要な状態にあることが確認できたら、保護開始のための起案を行います。

とあるケースワーカーの金曜日

  • 08:30 登庁
  • 09:30 保護開始に係る手続
  • 10:00 被保護者が入所する遠方の施設へ向けて出発
  • 12:00 出先で昼食
  • 13:30 施設訪問
  • 14:30 施設出発
  • 18:00 自宅へ直帰

いよいよ一週間最後の日です。登庁すると、昨日起案した新規案件について、決裁権者までの合意が取れていたことが確認できたため、保護開始の手続を開始します。まずは本人あてに保護開始決定通知書を送付します。そのほか、本当に生活保護が必要な状態にあるかどうかを確認するため、金融機関に対して預金残高がないか調査を行ったり、扶養義務者に対して扶養可否の照会を行ったりします。(もし、後から大きな預金残高があることが判明したような場合には、その分の生活保護費は不要だったということになりますので、支給した保護費の返還を求めることになります。)

この日は、被保護者は入所する遠方の施設を訪問します。生活保護は住民票主義をとっていないため、たとえばA市で生活保護を受給開始したXさんが要介護状態となり、電車で2時間かかるB市の介護施設に入所したような場合にも、保護の実施機関は継続してA市が担うということが多いです。このような場合でも、年に一度の訪問は行う必要がありますので、A市のケースワーカーが遠方のB市の介護施設まで赴く必要が生じることもあるのです。

訪問先の施設で、被保護者の健康状態やADL(日常生活動作)、施設内での行動等について本人や施設職員から聴き取りを行うことができたら、施設を後にします。このように遠方への出張等で時間が遅くなった場合にも、役所に戻る必要はありませんので、そのまま直帰して大丈夫です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。生活保護は国からの法定受託事務ということもあり、その事務はある程度固定的ですので、どこの自治体においても似たり寄ったりという感じかと思います。

公務員試験の受験生や現役の地方公民からも敬遠されがちなケースワーカーの仕事ですが、個人的には面白いと思っており、少しでも興味を持っていただければと思いこの記事を執筆しました。

また、ケースワーカーの仕事についてはこのサイトでも以下の記事で触れていますので、よろしければご覧ください。

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